念願だったストレートプレイ初挑戦となる舞台『少女都市からの呼び声』

――7月9日から始まる舞台『少女都市からの呼び声』は、咲妃さんにとって初のストレートプレイになりますが、お話があったときの心境はいかがでしたか。

咲妃みゆ(以下、咲妃) 念願が叶ってうれしかったです。難しい役をいただいたので、意気込みは十分なんですけれども、お稽古を重ねて、本番を迎えるまで、自分自身がどうなっていくのか分からないことがたくさんありドキドキしています。

――ストレートプレイの魅力をどのように考えていらっしゃいますか。

咲妃 人間の生々しさや共感できる部分をより感じられて、リアリティを感じやすいのがストレートプレイだと思います。様々な舞台を拝見する機会がありますけれども、ただただお芝居に没入できるストレートプレイがたまらなく好きで。胸が痛くなる作品もあるし、心が温かくなる作品もありますが、自分の中に隠れた感情を引っ張り出してくれるのがストレートプレイの魅力だなと感じます。

――いつ頃からストレートプレイをやってみたいと思うようになったのでしょうか。

咲妃 2017年に宝塚歌劇団を退団していろいろな作品に触れるチャンスをいただくようになってから、ずっとずっと思っていたので、かれこれ6年になります。

――初めてのストレートプレイにプレッシャーはありますか?

咲妃 そうですね。宝塚歌劇団で培ってきたものが私の大部分を占めている中で、退団後に宝塚歌劇団独特のお芝居や表現方法が、どの舞台にも通用するとは限らないということを感じました。ですので、この6年間は自分の癖や特徴を良い意味で緩和させていく作業にエネルギーを割いてきました。その甲斐あって、ここ数年は舞台上で、ちゃんと自分の体重を感じ、セリフを真実味を持って発することができるようになったんです。おそらく退団して間もない頃にストレートプレイに挑戦していたら、そこで躓いていたと思います。こうしていろいろな経験を積ませていただいて、念願叶って出演が決まったというのは、私の中では感謝の思いが強いです。宝塚歌劇団での経験、退団後に出演させていただいた舞台で学んできたことは、きっと活かすことができると思いますが、そこばかりに頼ってしまうと、自分で自分をがんじがらめにしてしまう気もするので、分からないことは分かりませんと素直に認めて、新人の気持ちで向き合っていきたいなと思ってます。

――『少女都市からの呼び声』は唐十郎さんの戯曲で、難解な作品としても知られています。初めて脚本を読まれたときの印象はいかがでしたか。

咲妃 正直言って、理解が追いつきませんでした。ただ個人的には、訳が分からない、先が読めない、そういった戸惑いがつきまとう作品に惹かれます。どうしよう……という感覚を大切にしながら、やっていきたいなと思っています。あとセリフが美しいなと感じました。現代の方々にも通じる言葉ですけれども、どこかしら古風な表現が各所に散りばめられていて、あえてこういう表現を選ばれていることが興味深いです。

――咲妃さん演じる雪子は、右手の指を3本失い、フィアンセであるフランケ醜態博士によって体をガラスに変える手術を施された少女という非現実的な存在です。

咲妃 雪子はこの世に存在できなかった人物です。そんな中で愛とは何か、生きるとは何かなどを知りたい、現実世界はどんなところなのか行ってみたい欲望を持った女性だと感じます。強い生命力を雪子から感じました。そういった生命力の強さは、きっと私の中にもあるなと感じるので、きっとかけ離れた役ではないと思っています。感情をそのまま伝える少女という印象を持ったので、あれこれ自分の中でこねくり回さないで、雪子から感じるものを大事にして、向き合っていきたいなと思っています。