その場で話し合って生まれたものを大切にする現場

――撮影現場の雰囲気はいかがでしたか。

伊礼 みんなで一緒に作品を作っているなと感じられる現場でした。スタッフさんの人数も多いわけではなかったので、一緒に話し合いながら、時間をかけてお互いの共通認識をすり合わせていって、すごく撮影もしやすかったです。

――役者さん同士のコミュニケーションも円滑でしたか?

伊礼 そんなに長い撮影日数ではなかったので、そこまで深くお話はできなかったんですけど、同世代の方とはコミュニケーションを取りましたし、デザイナー役の筒井真理子さんや音羽のマネージャー役の辻千恵さんとも、ちょこちょこお話はして、いろんな方と関われた作品でした。

――同級生たちとTikTokの撮影をするシーンはどのように進めたんですか。

伊礼 その場で、三原羽衣さんと佐月絵美さんの二人が振り付けを作ってくれて、それを教えてもらいました。ほんの数分で作るぐらい二人ともTikTokに慣れているので、教えるのも上手でした。

――緒方監督の演出はどのようなものだったのでしょうか。

伊礼 「こういうときに音羽だったらどうすると思う?」と聞かれることが多くて、「私だったらこうするかもしれない」という意見を採用されることが多かったんです。細かく演出するというよりは、その場で話し合って生まれたものを大切にする方でした。

――心情を聞かれたときに答えを用意していないといけないのも大変ですよね。

伊礼 いろいろと頭を使うことが多かったんですが、自然に自分の中から生まれたものなので、嘘なく演じることができました。

――随所にワンシーンワンカットがありますが、どのような気持ちで臨みましたか。

伊礼 カメラマンさんが事前に入念な準備をしてくださいましたし、何度もリハーサルをやって、監督といろいろお話できたおかげで、気を張り過ぎずに、自然体で新鮮なものを出すことができました。

――ワンシーンワンカットは演技にも影響を及ぼしますか?

伊礼 演じているときは、そこまで意識していなかったです。ですが、作品を観たときに思ったのが、すごく皆さん生き生きとしているし、ドキュメンタリーに近いような臨場感があって、すごく長回しが影響しているなと思いました。

――ラストシーンの余韻はインパクトがありました。

伊礼 出来上がった作品を観て、すごくメッセージ性のある、考えさせられるラストになっていたので驚きました。

――作品の注目ポイントを教えてください。

伊礼 音羽が成長する姿を大切に描いた作品です。周りの人の協力があって成長したというのも大きいんですが、それまで引け目に感じていた義足を武器にして、新たな挑戦をする姿や、日々を過ごしていく中で変わっていく姿が丁寧に描かれているので、そういったところに注目して観ていただけたらうれしいです。