実際に義足の方にお会いして、お話を伺えたのが役作りをする上で大切なことだった

――映画『シンデレラガール』の出演はオーディションで決まったそうですが、その時点でストーリーは聞かされていたんですか?

伊礼姫奈(以下、伊礼) オーディションのときに緒方貴臣監督から、義足を扱った映画で、どういう作品にしたいのか、私が演じた音羽がどういう女の子なのかという説明はいただいていました。それまで義足を扱った作品は聞いたことがなかったですし、私自身、義足について詳しくなかったのですが、監督が説明された世界観にすごく惹かれましたし、メッセージ性の強い作品になるのかなと思いました。

――初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

伊礼 日常を切り取ったような脚本で、その中に監督らしさだったり、ドキュメンタリー的なところを感じて、とても面白かったですし、すんなりと世界観に入ることができました。

――完成した作品からもドキュメンタリー的な要素を感じたのですが、アドリブもあったんですか?

伊礼 お母さん(輝有子)との会話で自然とアドリブが出るくらいで、大半は台本に書かれていた通りです。ただ脚本で感じ取った雰囲気と、出来上がった作品では、ちょっと違ったテイストに仕上がっていて、そこも面白いなと思いました。

――音羽というキャラクターには、どんな印象を持ちましたか。

伊礼 ネガティブな部分をあまり見せない強い女の子。周りを勇気づけるタイプで、演じていてもかっこいいし憧れるなと思いました。

――義足の音羽を演じるにあたって事前に下準備などはされたんですか?

伊礼 実際に義足の方にお会いして、どういう風に日常生活を過ごしているのかを拝見させていただきました。自分で調べられることは調べて勉強したのですが、当事者の方にお話を伺えたのが役作りをする上で大切でしたし、お芝居にも活きました。

――具体的にどんなお話を伺ったのでしょうか。

伊礼 事故に遭って足を失った方だったんですが、当時はネガティブな感情が大きかったそうなんです。でも義足になったのを機に新しいことを始めるなど、徐々に前向きになって、今は他の人と変わらない生活を過ごしているという話を聞いて、義足をポジティブに捉えている音羽の心情も理解できました。

――松葉杖や車椅子を使用するのはいかがでしたか。

伊礼 最初は全く想像がつかなかったんですけど、実際に使用しているのを見させていただいたことで実感も伴いました。普通に階段もスムーズに上り下りできていらっしゃっていて、義足と言われないと気づかないぐらいでした。だから細かな動きは意識しつつも、義足だからと構え過ぎずに演じることができました。

――音羽に共感する部分や共通するところはありましたか。

伊礼 何かを武器にするというのは、この職業に似ているのかなと思いました。もちろん私は事故で義足になった経験もないので、音羽の気持ちが100%分かるわけではありません。ただ、音羽はいろんな経験をきっかけに、義足を武器にしてモデルという目標に近づきますが、女優さんというお仕事も失敗したことなども活かせる職業なので、そこは共通するかもしれません。