ファンの方があってこその職業だと実感

――キャリアについてお伺いします。伊礼さんは4歳のときに子役デビューしますが、いつ頃から俳優というお芝居に意識的になりましたか。

伊礼 小学校3・4年生のときに、大河ドラマの「花燃ゆ」と朝ドラの「とと姉ちゃん」に出させていただいたんです。それまでは「いろんな人がいて楽しい」とか、「褒められてうれしい」とか、単純にお芝居することが楽しかったんです。でも、そのタイミングで徐々にお芝居について深く考えなきゃいけないと思うようになって、みんなで作品を作っていく感覚が芽生えたんです。そこからお芝居もお仕事だという認識を得ました。

――大河ドラマと朝ドラという大きいお仕事が続いてプレッシャーはなかったんですか。

伊礼 今だったら気負うだろうし、いろんな責任も感じると思うんですが、その当時はただただ楽しくて。おばあちゃんも、すごく喜んでくれましたしね(笑)。大河ドラマに関しては、所作指導や方言指導、カツラなどがあったので、他の作品とは違う緊張感がありましたけど、楽しいが勝っていました。

――小さい頃からお芝居をやってきて、技術的な面以外で良かったなと思うことはありますか。

伊礼 昔があってこその今だなと思っています。最近、過去にご一緒したスタッフの方がまた呼んでくださることも増えていて。いろんな経験をしたり失敗したりしたからこそ、ここまでお芝居を好きになれたし、お芝居に責任を持つこともできたなと、いろんな場面で感じます。

――子どもの頃にお仕事で会った方との再会ってどんな感覚なんですか。

伊礼 親戚に近いですね。「すごく成長したね」と言ってもらえたりして、特殊な職業だなと思います。

――学業と仕事の両立はいかがですか。

伊礼 難しいです。お仕事で学校に行けない日が増えると、勉強についていくのも大変ですし、友達との関わり方が難しいなと感じる時期もありました。

――学業に専念しようという選択肢はなかったんですか。

伊礼 なかったですね。習い事に近い感覚だったので、どちらかに専念するというよりは、どちらもできてこそだと思っていました。ただ振り返ってみると、中学生のときは両立できていなかったなって思う時期もあって。学校生活が楽しかったので、お芝居に対して前向きになれなくて、学校を優先しがちでした。

――そういう精神状態って演技にも影響しますか。

伊礼 だいぶ影響しました。オーディションにも全然受からなくなって、やっぱり分かる人には見透かされているのかなって。あの頃は演技レッスンも生半可な気持ちでやっていましたし、お芝居に向き合う時間が少なかったので、それが作品の数にも比例していました。

――再びお芝居に前向きになれたきっかけは何だったんですか。

伊礼 中学3年生のときに、「向こうの果て」というドラマで内田英治監督とご一緒したときに、今のままじゃ駄目だと思ったんです。ちょうど高校受験をするタイミングだったので、そのときに監督からもらった言葉だったり、いろいろ気付かされたことだったりがあって、またお芝居に向き合うようになりました。

――内田監督はどんな方だったんですか。

伊礼 シリアスな作品で難しい役というのもあって、中学3年生の私にとっては、監督がくれる言葉が厳しかったんです。優しさからの厳しさだったんですけど、その厳しさがなかったら、そこまで作品に馴染むことができてなかったんだろうなと。監督の言葉があったからこそ、もっと頑張らなきゃと思いました。

――内田監督も、伊礼さんの気持ちの揺らぎに気づいていたんですかね。

伊礼 おそらくお芝居に対して真剣じゃない瞬間があるなと気づいていたと思います。

――今回の映画は主演ですが、大きい役を務める責任感も大きかったでしょうね。

伊礼 今までは声をかけていただいた作品に参加するみたいな感覚だったのが、一緒に作品を作っていくという感覚が強くなって。自分の意見も言っていいんだとか、こういう風にいろんな人の力が合わさって作品ができているんだとか、改めて気付くことも多かったです。

――現在、伊礼さんは高校3年生ですが、卒業後の進路は決まっているんですか?

伊礼 このお仕事一本に絞って、今まで以上にお芝居を頑張ろうと思っています。先が保証されていないお仕事なので、不安やプレッシャーも大きくて……。学校って一つの逃げ場みたいに思うときがあって、お仕事で上手くいかなかったときに、学校という違った場所が待ってくれている感覚があったんです。その場所がなくなるのは、ちょっと怖いですね。

――最後に俳優としてやりがいを感じる瞬間を教えてください。

伊礼 出演した作品を観てくださった方からもらう温かい言葉に一番やりがいを感じますし、またそう言っていただけるように頑張ろうって思えるので、ファンの方があってこその職業だなと実感します。

Information

『シンデレラガール』
新宿K’s cinemaほか全国順次公開中!

伊礼姫奈
辻千恵 泉マリン 太田将熙 輝有子 佐月絵美 三原羽衣 田口音羽
筒井真理子

監督:緒方貴臣
脚本:脇坂豊、緒方貴臣
撮影監督:根岸憲一
音楽:田中マコト、菱野洋平(WALL)
義足監修:臼井二美男
プロデューサー:榎本桜、緒方貴臣、塩月隆史、 杉山晴香、夏原健、森山風歩
製作:paranoidkitchen、リアルメーカーズ、ラフター
配給:ミカタ・エンタテインメント
2023年/日本/ カラー/16:9/5.1ch/61分
©2023映画『シンデレラガール』製作委員会

12歳の時に病気で⽚脚を切断した音羽(伊礼姫奈)。その後も⼊退院を繰り返し、中学校の卒業式にも参加できなかった。そんな⾳⽻のために、クラスメイトたちがサプライズの卒業式を病院の屋上でして、その動画がSNSで話題になり、音羽にモデルのオファーが舞い込む。義⾜の⼥⼦⾼校⽣モデルという特異性もあり、一時的に注⽬されるも、その後のモデルとしての仕事は義⾜を隠したものばかりだった。⼀⽅、マネージャー・唯(辻千恵)は、⾳⽻と一緒に義足のファッションブランドで「義足を障がいの象徴でなく、個性として捉えてほしい」という理念を聞き、⼼を動かされる。義⾜をもっと押し出していこうと決める二人。やがてファッションショーに出演できるチャンスがやってくるが……。

公式サイト

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伊礼姫奈

2006年2月7日生まれ。群馬県出身。4歳から女優活動をスタート。主な出演作にNHK「とと姉ちゃん」(16)、WOWOW「向こうの果て」(21)、TBS「TOKYO MER~走る緊急救命室~」(21)、 映画『マイブロークン・マリコ』(22)、『ちひろさん』(23)、朝日放送「推しが武道館にいってくれたら死ぬ」(22)及び劇場版(23)など。配信中のDMM TVのドラマ「EVOL」でトリプル主演。CM「JTB いよいよ、海外旅行はじまる。」にも出演中。

INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:KAZUKI SHIOTA,STYLIST:KEI SERA
衣装協力
ジャガードトップス:¥28,600(税込)ジャガードスカート:¥38,300(税込)
Fumiku(お問い合わせ先:info@fumiku.tokyo)
その他、シアートップス、シャツ、イヤリング、シューズはスタイリスト私物