週末音楽家としての感覚は「釣りを楽しむお父さん」に近い
――当初は趣味だった作曲が副業となり、辛さを感じたことは?
CHEEBOW クラシックやジャズのように専門的なジャンルを経験していたら「アイドルの曲作り」は抵抗があったのかったかもしれませんが、もともとJ-POPや歌謡曲は好きでしたし、ストレスもなかったです。むしろ、仕事になってからはより「向いてるな」と思えるようになりました。ただ、依頼されるときに「この曲のように…」と、過去に自分が手がけた楽曲をサンプルとして渡される場合があって、それと異なるものを生み出す大変さもありますね。僕を信頼してくださってこその相談なのでありがたいですが、グループが違えば雰囲気も異なりますし、新しい色をいかに出すかはこれからもきっと続く課題なんだろうと思っています。
――現代は副業、パラレルワークが注目される時代に。その心得を伺いたいです。
CHEEBOW 難しい。僕の本業であるエンジニア界隈に限った話で言えば、平日は会社員のプログラマとして働き、土日祝日はスキルを生かしてフリーで同分野の別案件を請け負うケースはあるんですよね。ただ、僕はまったく違う音楽に関わっていて、感覚としては、休日に釣りへ行くお父さんと同じ気持ちなんです。釣りが好きな人は、釣った魚を家族や近所の人に配るじゃないですか。僕も似ていて、土日祝日には趣味も兼ねた作曲へ打ち込み、いい曲を作って「これはどう?」と振る舞っている感覚です。
――兼業について、アドバイスを求められることもありますか?
CHEEBOW アドバイスというより、若い子からは「うらやましい」と言われるときがありますね。兼業するコツはなく、僕はたまたま運がよかっただけなんです。土日祝日で音楽を作っている僕を、妻が理解してくれたのもそうですし。プログラマと週末音楽家の兼業を、理解されない苦労は多少ありますね。趣味で音楽をやっていると思われて、楽曲のMVを見せると「ガチだったんだ」と驚かれて(笑)。音楽方面では「音楽で食えないからプログラマやってるんでしょ?」と誤解されるときもありますが、両方に理解があり「そんな生活もいいよね」と納得してくれる方もいます。
――お話を伺い、仕事とは別軸で、誰かのためになり稼げるものを探すのが兼業の理想かとも思いました。
CHEEBOW 現代は、自分が持つスキルで稼ぐのも楽になりましたし。クラウドソーシングでの副業や、スキマ時間を使って別の仕事をするなど、選択肢も様々ですよね。僕のように、趣味が仕事になるチャンスもありますから。本業でも副業でも、自分がいいと思ったものが、誰かにも喜んでもらえる、そういうものを作れているというのが不思議で、たまに「なぜこんなことができているのか」と考えるときもあります。好きで続けていただけなんですけどね。
PHOTOGRAPHER,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO