友達の誕生日に歌を作ったのが始まり
――キャリアについてお伺いします。ゆいにしおさんの音楽のルーツはお父様の聴かれていた山下達郎やピチカート・ファイヴだそうですね。ご自身で音楽を始めたきっかけは何だったのでしょう？
ゆいにしお 中学生のときに誕生日を迎える友達がいて、その子の曲を作ろうと思ったのが始まりです。ギターで曲を作ってみて、歌も録音してCD に焼いてその友達にあげたらすごく喜んでくれたのがうれしくて。友達は教室のCDプレーヤーでずっと再生していて。うれしいけど恥ずかしかったですね（笑）。そこから曲を作っていきたいと思うようになりました。
――その頃から音楽の道に進もうと決めていたんですか？
ゆいにしお 進みたいとは思っていたんですが、他にも興味のあることがたくさんあって、全然進路が定まっていなかったです。美術も好きだったので、美術館の学芸員や映像関係の仕事もやってみたいなと思っていて。特に音楽という訳ではなく、表現活動全般という感じでした。
――大学では軽音サークルに入られていたそうですね。
ゆいにしお 軽音サークルに入って「ゆいにしお」として活動し始めました。はじめはバンドをやりたいと思っていたんですが、当時はあんまりコミュニケーションを取るのが得意じゃなくて、とりあえず一人で弾き語りをやっていました。
――弾き語りとバンドはやはり違いますか。
ゆいにしお 真逆ですね。弾き語りは「どうにでもなれ」という感じもあります。間違えても自分以外に影響はないし、自由にワーッとやっちゃえ！って(笑)。バンドだとコードがひとつ違っただけで音が濁ってしまったりするので、そこが気を使うポイントでもあるし、逆に助けられる瞬間もたくさんあって。今ではどちらも好きですね。
――音楽活動をする中でオーディションを受けたのはどんなきっかけだったのでしょう？
ゆいにしお 弾き語りをやっていたら、声をかけてもらって、ライブに出させてもらえる機会も増えていきました。そんな中で、渋谷系ポップスに影響を受けて曲を作る女性シンガーソングライターはちょっと珍しいのかもしれないと思ったんです。この領域は産業的にいいところまで行けるんじゃないかと考え始めて、オーディションを受けてみようと。
――受けるオーディションはどんなふうに選ばれたんですか？
ゆいにしお ネットで「ミュージシャン オーディション」と調べて出て来たものは全部行こう！ぐらいの気持ちでした（笑）。
――オーディションで印象に残っていることはありますか？
ゆいにしお いきなり最終審査まで進んで、ライブ経験も全然なかったので両親には「見に来ないで」って言ったんです。でもファイナルにしれっと見に来ていて、より緊張感が高まったことを覚えています。
――現在、お父様はゆいにしおさんの曲を聴いてどんな感想を仰っていますか？
ゆいにしお ちゃんと感想を聞いたことはないです(笑)。時々、「あれ聴いたよ」という連絡が来ます。『weekday』の10曲目「BFF」はBest Frends Foreverの頭文字なんですが、「これはきっと○○〇の略だと思う」と父なりの解釈をしているみたいです。
――ライブにもいらっしゃるんですか？
ゆいにしお 父も母も兄も、家族みんなで来てくれます。
――家族仲が良いんですね。2022年にメジャーデビューされましたが、曲作りや意識に変化はありましたか？
ゆいにしお 当たり前のことではありますが、やっぱりプロなんだという自覚が出てきました。メジャーデビューしたてのときに、ボイトレの先生に「これからはゆいちゃんが事務所を食べさせていくんだよ」と言われたのは背筋が伸びた瞬間でした（笑）。
