思春期ならではの悩みが描かれた台本で、各キャラクターのセリフが当時の自分に刺さった

――『水深ゼロメートルから』は2021年に上演された舞台の映画化ですが、仲吉さんは同じ役柄で舞台にも出演しています。どんなオーディションでしたか。

仲吉玲亜(以下、仲吉) 当時は高校1年生で、舞台の経験は一度しかなかったので、オーディションにも慣れていなかったのですが、一次審査は台本を渡されて、「みんな好きなように、思うままに動いてやってみて」という形でした。割とラフな雰囲気だったので、とにかく楽しもうという気持ちで臨みました。二次審査もあって、その時点で私はミク役を振り分けられていたんですが、そのときもみんなで輪になってお話をしたり、ゲームをしたりという内容で、役としてではなく一人ひとりを見てくださっているんだなと感じました。

――ミク役に決まったときはどう思いましたか。

仲吉 びっくりしました。メインキャラクター3人の中で、自分と一番性格が離れているのがミクなんですよね。

――ミクは大人しい性格で、周りの顔色を窺って、本音を胸に秘めるタイプですよね。確かに仲吉さんは、映画のミクとは全く違って快闊な印象です。

仲吉 実際にお会いして話してみると、ミクとは違うなと感じる方が多いです。

――自分に近いと感じるキャラクターはいますか?

仲吉 チヅルですかね。私も小さい頃から、男の子に負けないぐらいの勢いで水泳をやっていたので。

――初めて舞台の脚本を読んだときはどんな印象でしたか。

仲吉 高校に入学して、夏休み前ぐらいにオーディションがあったんです。新しい環境になって、いろいろモヤモヤしていることもあって、思春期ならではの悩みが描かれた台本で、各キャラクターのセリフが当時の自分に刺さりました。みんな頑張って戦っているなと感じて、背中を押されました。

――稽古はいかがでしたか。

仲吉 その前に出た舞台はメインどころではなかったので、これだけのセリフが頭に入るのかなという不安があったのですが、最初はセリフを入れずに、みんなで何回か本読みをして、だんだん入れていくという流れでした。演出の小沢道成さん自身が現役の役者でもあるので、俳優側の気持ちを考えながら演出してくださって、みんなで作り上げていく感覚があって楽しかったです。

――役者さん同士でディスカッションする時間もあったとお聞きしました。

仲吉 常に話し合っていました。脚本を担当したのは原作者の中田夢花さんで、小沢道成さんが書いた訳ではないので、中田さんがどう考えて、この言葉を選んだのか、どうすれば違和感なく演じられるかなどを、一緒になって考えました。私と同じく映画版も続投になったココロ役の濵尾咲綺ちゃん、ユイ役の花岡すみれちゃんも高校生だったので、私たちのリアルな意見を聞いてくれて、話し合いながら進めていきました。

――自分の意見は言えましたか。

仲吉 最初は舞台経験に乏しかったのもあって、何から聞けばいいのかも分からないし、ミクの性格を理解することを優先していたので、あまり言えませんでした。稽古を重ねていくうちに、それぞれの視点から考える余裕もできて、自分の意見を言えるようになりました。稽古の最初と最後では解釈も変わって、このセリフは、こんな大切な意味があったんだとか、たくさんの発見がありました。

――本番はいかがでしたか。

仲吉 世界観がユニークで、上がプールサイドで下がプールと、学校に置いてある勉強机を並べてプールを表現したんです。キャストが一人ずつ登場して位置について始まるという演出も素敵で、もちろん緊張はしたのですが、初めてのことばかりで楽しかったです。舞台ならではの熱気があって、お客さんの反応も直で感じることができました。

――『水深ゼロメートルから』は2019年に始まった「高校演劇リブート企画」の第二弾で、第一弾の『アルプススタンドのはしの方』(2020)も映画化されていますが、映画化のお話を聞いたときの気持ちは?

仲吉 『アルプススタンドのはしの方』を観ていたので、もしかしたら今回も映画化があるかもしれないと期待していたのですが、舞台が終わって1年半ぐらい経って。もう難しいのかなぁと思っていた矢先にお話があったので、すごくうれしかったです。濵尾咲綺ちゃんと花岡すみれちゃんは、舞台の後も何度かプライベートで遊んでいたので、余計にうれしかったです。