「ホロー荘の殺人」はアンカテル令夫人のセリフに注目してほしい

――「ホロー荘の殺人」の台本を、初めて読んだ時の印象を教えてください。

高柳 話が二転三転した挙句、最後にずしんと心に響くような展開の面白さがあり、ミステリだけど人間ドラマとしての要素も強くて、読んでいてワクワクしました。

――共演者は、宝塚出身の方が多いですね。

高柳 キャストが全員揃った時に、私以外の女性の方が全員宝塚出身だと知りました。ここ数年、宝塚出身の方とご一緒させていただくことが多いんです。みなさん、とにかく身長が高い!(笑)。ヘンリエッタ・アンカテル役の凰稀かなめさん、ガーダ・クリストゥ役の紅ゆずるさん、ヴェロニカ・クレイ役の綾凰華さんは、特に背が高くて、顔が小さくて細くて。でも休憩時間はみなさん結構お菓子を食べたりしているんですよね(笑)。どうやって体型を保っているんだろうと不思議でした。「宝塚の男役だからビシっとしているんだろうな」と想像していましたが、お会いしてみるとみなさんほんわかしていて、そのギャップにも驚かされます。気さくで、優しい方ばかりです。

――現場の雰囲気はいかがですか?

高柳 すごく穏やかです。年齢層の幅が広めで、演出家の野坂実さんも同世代の方がいらっしゃるからか、健康の話題で盛り上がっていました。最近は、現場で年上のチームに入ることが多かったですが、今回の舞台では「まだ若いから大丈夫だよ」と若者扱いしていただきました(笑)。

――高柳さんが演じるミッジ・ハーヴェイは、どんな役柄ですか?

高柳 「ホロー荘の殺人」はロンドン郊外のホロー荘に住むアンカテル一家という貴族の話なのですが、私が演じるミッジは、アンカテル卿の妻の従姉妹の娘で、父親が庶民なので貴族の血が半分しか流れていません。ですのでアンカテル一家とは立場が異なり、裕福ではなく、自分が働かないと食べていけないという状況にいます。そんなコンプレックスを抱えながらも、アンカテル一家のエドワードという男の子にずっと片思いをしていて、どちらかというと恋愛を軸に描かれている女の子です。

――役作りで意識していることはありますか?

高柳 ミッジは若いから勢いでズバッとものごとを言う、怖いもの知らずな部分があり、野坂さんから「自分が思っている以上に激しくセリフを言って、ミッジの喜怒哀楽を表現してほしい」と指示をいただきました。私もこの世界に入った17歳の頃はミッジみたいだったけど、30歳になってすっかり角が取れてしまったようで(笑)、思い切りのいい演技をするように心がけています。

――野坂さんの演出は初めてですか?

高柳 2年ほど前に一度お世話になったことがありますが、コロナ禍だったので稽古が全くできず、その時は本番を迎えられないまま終わってしまいました。なので、初めてに近いですね。野坂さんは、頭ごなしに指導をするのではなく、きちんと説明をしてくださる方です。稽古中のお芝居を開始する時に「はい、どうぞ」と優しく言ってくださって、野坂さんがいらっしゃると、現場があたたかな雰囲気になります。

――凰稀かなめさんと紅ゆずるさんの印象はいかがでしたか。

高柳 とにかく、カッコいい!お二人が女役で一緒に芝居をするのはこの舞台が初めてみたいです。宝塚時代から仲良しらしいので、ファンの方にとっては胸アツの共演みたいです。そんな話を聞いてからお二人のシーンを観るとドキドキしちゃいます(笑)。

――本作の見どころを教えてください。

高柳 アンカテル令夫人のマイペースっぷりですね。ぶっ飛んだセリフが多いけど、実はひとつひとつに伏線があるので、観た後に「ああそうだったのか!」と気づき、もう一度観たら全ての伏線が回収できるはず。深く楽しめる内容になっています。

――7月からは舞台「幾度の群青に溺れ」にも出演を予定されています。オファーを受けた時はどんな気持ちでしたか?

高柳 「幾度の群青に溺れ」を上演する紀伊國屋ホールは、私にとって思い入れのある場所なのでうれしかったです。人を眠らせる唾液を持つ川辺タイラの秘密がきっかけで事件が始まるというストーリーで、私は話のカギを握るタイラ役を演じます。

ーー紀伊國屋ホールにはどんな思い入れがあるのですか?

高柳 初めてミステリを演じた舞台「ONLY SILVER FISH」を上演したのが紀伊國屋ホールだったんです。「ONLY SILVER FISH」は3シリーズ続いて、いずれも紀伊國屋ホールで演じたので、思い入れのある場所です。