人が変わっていく様を演じるときに芝居の醍醐味を感じる
――「連続ドラマWコンサルタント―死を執筆する男―」は、伊藤さん演じるミステリー作家志望の伊崎耀が、謎の組織“カンパニー”に引きずり込まれて、“完璧な暗殺シナリオ”を執筆する「暗殺」専門のコンサルタントへと転身するというダーク・サスペンスです。
伊藤健太郎(以下、伊藤) いろんな作品を経験してきましたが、こういった設定は初めてだったので新鮮でしたし、脚本も面白くて、ひとひねりがあるなと思いながら読みました。考えさせられるセリフもたくさんあって、視聴者の方々にも何かしらの影響を与えられる作品になりそうだなと感じました。

――伊崎をどのように捉えましたか。
伊藤 伊崎は途中でガラッと変わるキャラクターで、もともと僕はギャップのある役を演じることが多いので、そういう面を求められているのかなと感じました。伊崎は人間の隠したい部分、恥ずかしい部分みたいなものが詰まっているような気がしていて。そういう人物として肉付けしたうえで、伊崎をカンパニーにスカウトする黒川と出会うことで、どう変わっていくのかを中田秀夫監督と話し合いながら考えました。
――小説家志望だった男が「暗殺」専門のコンサルタントになっていく過程を演じる難しさはありましたか。
伊藤 難しさよりも面白さの方が勝っていました。今回のドラマに限らず、人が変わっていく様を演じるときに芝居の醍醐味を感じるんです。一人の人間が、出会った相手によって変化して、成長していくというのは人生そのものじゃないですか。日にちが経つにつれて少なからず成長するし、変わる部分もあれば変わらない部分もある。そういう細かいところは、考えているときも、演じているときも楽しいですし、特に伊崎はそういう変化が強く出ていたかなと思います。かといって、明確にコンサルタントになろうという決断のポイントは作らなかったです。
――なぜでしょうか。
伊藤 人生において、うだつが上がらない生活を送っていく中で、気づいたらこうなっていたということって、よくあると思うんです。僕もこの仕事を始めたときは、流れでそうなっていた部分も少なからずあって。始めたきっかけって何だろうと振り返ったときに、明確な答えがなかったりする。伊崎もそれでいいかなと思ったんですよね。黒川から言われた言葉だったり、“カンパニー”から派遣されたマネージャー・水畑早紀(木村文乃)との出会いだったり、交際相手の斎藤良美(桜井日奈子)の存在だったり。いろんなことの積み重ねで、コンサルタントになっちゃったというのが、僕の中でしっくりきました。
――コンサルタントの道を選んだとき、伊崎は見た目や立ち居振る舞いも大きく変化します。
伊藤 コンサルタントになる前の伊崎は、人生がうまくいってなくて、猫背でキョロキョロしてみたいな雰囲気だったけど、カンパニーに入ってからはスーツを着こなして、背筋を伸ばして、自信があるようなしゃべり方をするという変化は意識して演じました。伊崎自身、美容院で髪型を変えてもらって。洋服屋でスーツを仕立ててと、違う自分を演じている部分があると思うんですよね。本来の自分じゃないと思いながらも、“カンパニー”に入ってシナリオを執筆するうちに、それが自分になっていく。演じているはずだったのに、気づいたら違う自分が染みついちゃっているんです。外見が本人にもたらす影響というのは大きくて。このお仕事でも衣装やヘアメイク、美術など、スタッフさんたちが作り上げてくださる環境が、お芝居にも大きな影響を与えてくれるんです。
――変化していく伊崎を演じる上で、ぶれない軸として、これだけは大事にしようと思っていたことはありますか。
伊藤 そもそも伊崎は小説家を目指していて、「暗殺」専門のコンサルタントになっても、「ものを書く」ということに変わりはない。だから書くことが大好きという感覚は、常に持っておこうと意識しました。好きだという感覚があるからこそ、間接的に誰かを死に追いやっていることへの罪悪感も乗っかってくるんですよね。

――好きなものを利用されてしまうことに対する怒りのようなものもある?
伊藤 そうですね。だからこそ反発する部分もあるし、好きなことなのに好きじゃなくなりそうだというフラストレーションもある。好きで始めたことのはずなのに、何か違う方向に向かっているという感覚は、誰しも一度は経験したことがあると思うんです。そういう感覚は大事にしたいと思いました。僕自身、好きでやっている仕事のはずなのに、作業っぽくなりそうだな、なんでこんな感情になっているんだろう、みたいに悩んだ時期もありましたから。
