GACKTさんといろいろお話させてもらって楽しい日々だった

――作中に、人間は誰かの死にコミットせずには生きられない、それがこの世界だ、という趣旨の印象的なセリフがあります。

伊藤 自分の幸せが、誰かの不幸の上で成り立っている部分があるというのは、最近の世界情勢を鑑みても、まさしくそうで。黒川とのシーンで、ご飯を自由に頼めたり、音楽を普通に聴けたりという何でもないようなことが、地球の裏側のどこかの誰かの死とつながっているみたいな話も、すごく考えさせられました。

――黒川を演じるのはGACKTさんです。

伊藤 伊崎を中心に物語は進んでいきますが、黒川も主人公と同じくらいドラマを象徴しているので、この作品を左右するキャラクターだなと思っていたんですが、GACKTさんはぴったりだなと思いました。どこか黒川って人間離れしたキャラクターじゃないですか。GACKTさん自身がミステリアスな方なので、より黒川という男の得体の知れなさが膨らんで見えるなと思いました。

――GACKTさんにどんな印象を持ちましたか。

伊藤 僕の勝手なイメージですが、寡黙で、壁を作るような方なのかなと思っていたんです。だから、僕から積極的に壁を越えていこうと思いながら現場に臨んだんですが、とてもフランクで、初対面でも相手を緊張させるようなところが一切なくて。撮影の合間には、他愛もない話だったり、趣味の話だったり、いろいろお話させてもらって、非常に楽しい日々でした。

――どんな会話が多かったんですか。

伊藤 僕が一方的にGACKTさんの日常について聞くことが多かったです。海外の大豪邸に住んでいるのは知っていたので、どういう生活をされているのか興味があったんですよね。あとお互いに体を鍛えることが好きなので、トレーニング方法や食事なども聞きました。かなりGACKTさんに詳しくなりましたね(笑)。

――伊崎を演じる上で、体づくりはされましたか。

伊藤 スーツを着るので、あまりムキムキになりすぎないようにしていました。わりと体型を変えるのは得意なほうで、数ヶ月もあれば、大きくすることも、落とすことも自在にできるタイプだと思います。

――筋トレを本格的に始めたのはいつ頃からですか。

伊藤 もともと体を動かすことが好きなので前からやってはいたんですが、がっつりやり始めたのは今回と同じくWOWOW制作の連続ドラマ「北方謙三 水滸伝」(26)という作品に向けてでした。ジムでトレーニングしている時間が大好きで、筋トレはライフワークになりそうです。

――中田監督とのお仕事は今回が初めてですか。

伊藤 「伊藤健太郎のZIP!シネマ」(日本テレビ)という映画番組のMCをやっていたときに、中田監督がゲストで来てくださったことはあったんですが、作品でご一緒するのは初めてでした。番組でお話したときも感じたのですが、とてもクレバーな方で、こちらの考えていることも柔軟に理解してくださるんです。一方で、チャーミングで面白い方だなと思いました。

――チャーミングというと?

伊藤 ものすごく集中しているときに周りが見えなくなるんですよ。どんどん思考が先に行っちゃうから、「置いてかないでください!」みたいな瞬間があるんです。たとえばGACKTさんが歩くシーンで台本を持ちながら、「こうやって歩いて、ここで曲がって」と動きを説明されていたんですが、一人で中田監督がどんどん歩き出して。角まで曲がったところで、ようやくGACKTさんがいないことに気づくみたいなことがありました(笑)。分かりやすく伝えるために、いろいろ考えてくれているので、そういうことがたまに起きてしまうんですが、話し合いながら物語が作られていく感覚がすごくありました。

――中田作品を観ると、理論的な監督というのが伝わってきます。

伊藤 それは現場でも感じます。どちらかというと僕は感覚派なので、「このシーンはこういう気持ちでこうしたい」と言葉にして説明はするんですけど、どうしても感覚の部分が強くなるんです。中田監督は理論的に説明してくださるので、とても分かりやすいんですよね。中田監督は東大出身ですが、後にノーベル賞の候補になるクラスメートもいたという次元の違う話もしてくれて(笑)。ドラマ以外のお話もさせてもらって楽しかったですし、中田監督の頭の中をのぞいているような感覚もありました。