映画館に来てもらうにはどうしたらいいのかを日々悶々と考えている

――本格的に脚本を学ぶようになって、脚本の読み方も変化したのではないでしょうか。

小原 かなり変わりました。『渇愛の果て、』のときは映画美学校に通う前だったんですが、たとえば自分だったら絶対に言わないようなセリフ、こういう言い回しはしないなというセリフも、脚本を書いた人にとっては絶対に意味があるんですよね。それが理解できるようになったので、そのセリフの前後にヒントがあるはずだと、深く読み込むようになりました。

――脚本家としては、ドラマ・映画・舞台だと、どれを一番書いてみたいですか。

小原 映画が一番好きなので、映画の脚本を書きたいですが、やらせていただけるならどんなものでも書いていきたいと思っています。

――プロデュースや監督業にも興味はありますか?

小原 今のところないです。「この監督だったらどう撮るか?」とわくわくしながら一緒に仕事ができたらいいなと思っています。もしかしたら、いつかやりたい日が来るかもしれないですけど、監督となると、カット割りだったり、光だったり、小道具だったり、色合いだったりと、また目線が変わるじゃないですか。そこは、まだまだ学びが足りないですから。

――オフはどう過ごすことが多いですか。

小原 去年から(出演作が)公開ラッシュなのもあって、自分のやりたいことが定まった一年なんです。それで改めて映画館が好きだなと痛感して、映画館がなくなって欲しくないなと。なので映画館に、たくさんの人に来てもらうにはどうしたらいいのかを日々悶々と考えています(笑)。脚本の勉強もそうなんですが、自分の出演した映画を紹介する動画を作ってTikTokにあげたり、配信をしてみたり。佐藤監督に言われて心に残っているのが、「詐欺師の目を持て」という言葉で。「ただの水をどうぞと言っても人は受け取らない。では、この水を自分なりにどう魅力的に見せるか。それが脚本だ」と言われて、なるほどと思ったんです。それって私自身の見せ方もそうだし、出演作や脚本を書いた作品もそうだし。そういうことを考えて、動画を撮影・編集して、それを観てもらうにはどうすればいいのかを考える時間も楽しいです。全然オフじゃないですね(笑)。

――プライベートでも、よく映画館には足を運ぶんですか。

小原 行きます。映画館で関係者と会う機会も多いので、ロビーで話すのも楽しいです。

――自分で脚本を書くようになって、最近すごいなと思った作品を一つ挙げていただけますか。

小原 ヨルゴス・ランティモス監督の『哀れなるものたち』(2023)です。脚本はトニー・マクナマラなんですが、登場人物全員が魅力的で、次はどうなるんだろうというテンポがしっかり計算されていて一切だれない。そして期待値以上の展開が、次にちゃんと用意されているので、最初から最後まで興奮しました。

――改めて『渇愛の果て、』の見どころをお聞かせください。

小原 出生前診断という言葉だけを聞くと、すごく考えさせられるテーマなんじゃないかと思う方が多いと思います。もちろん、しっかりと考えてほしいテーマではあるんですが、今の時代は結婚・出産をしない選択をする方も多いと思います。そういう方でも、大事な人との関わり方を知ることのできる映画です。妊娠した女性たちは、こんなことを考えているんだとか、自分はこういう風に親や子どもに接してみようとか、身近なことを考えるきっかけになる時間になったらうれしいです。堅苦しい作品ではなく、有田監督のクスッと笑える演出が散りばめられているので、そういう部分も楽しみにして、ぜひ観ていただきたいです。

Information

『渇愛の果て、』
新宿K’s cinema、大阪 シアターセブンほか全国順次公開

新宿K’s cinema: 5/18(土)〜5/24(金)
連日12:15〜

大阪 シアターセブン: 6/1(土)〜6/7(金)
6/1(土)・2(日) 13:30
6/3(月)・4(火) 12:20
6/5(水)~7(金) 18:50

有田あん 山岡竜弘
輝有子 小原徳子 瑞生桜子 小林春世 大山大 伊藤亜美瑠 二條正士 辻凪子
烏森まど 廣川千紘 伊島青 内田健介 藤原咲恵
大木亜希子 松本亮 関幸治 みょんふぁ オクイシュージ

監督・脚本・プロデュース:有田あん
監修医:洞下由記 取材協力:高杉絵理(助産師サロン)
撮影:鈴木雅也 編集:日暮謙
音楽:多田羅幸宏(ブリキオーケストラ)
配給協力:神原健太朗
配給:野生児童
2023/日本/97分/カラー/アメリカン・ビスタ/ステレオ
©野生児童

山元眞希(有田あん)は、里美(小原徳子)・桜(瑞生桜子)・美紀(小林春世)の4人からなる高校以来の親友グループに、「将来は絶対に子どもが欲しい!」と言い続け、“普通の幸せ”を夢見ていた。妊娠が発覚し、夫・良樹(山岡竜弘)と共に順風満帆な妊婦生活を過ごしていた眞希だが、出産予定日が近づいていたある日、体調不良によって緊急入院をする。子どもの安否を確認するために出生前診断を受けるが、結果は陰性。胸をなでおろした眞希であったが、いざ出産を迎えると、赤ちゃんは難病を患っていた。我が子を受け入れる間もなく、次々と医師から選択を求められ、疲弊していく眞希。唯一、妹の渚(辻凪子)にだけ本音を語っていたが、親友には打ち明けられず、良樹と子どものことで悩む日々。そんな中、親友たちは眞希の出産パーティーを計画するが、それぞれの子供や出産に対する考えがぶつかり……。

公式サイト
Instagram
X

小原徳子

1988年3月22日生まれ。長野県出身。 2003年にグラビアアイドル・木嶋のりことして活動開始。2014年の主演作『ちょっとかわいいアイアンメイデン』で話題を集める。俳優として映画・舞台を中心に多方面で活躍する他、近年は脚本家としても活動しており、2023年には初脚本作『いずれあなたが知る話』が公開された。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI