憧れの存在Mummy-Dとのコラボが実現

――アルバムの楽曲について、コラボ曲を中心に何曲かお聞かせください。1曲目の「火をつけろ」は、三拍子になるパートが印象的でした。あの部分だけリズムを変えた理由を教えてください。

Nakamura この部分は別の登場人物の気持ちを書いているんです。SNSやLINEで上手く会話ができなかった相手側の人は、どんな人なんだろうと想像しながら書きました。アレンジはプロデューサー・カワムラさんのアイデアだったんですが、こういう伝え方があるんだと私もびっくりしました。

――1曲の中で登場人物が変わるんですね。曲の中でリズム変える手法は良く使うのでしょうか。

Nakamura 結構多いほうかもしれないです。日記や物語のような歌詞の中で場面転換みたいな形で使うことが多いですね。私はジャズを聴くのも好きなんですが、リズムや楽器の入れ替わりなどにジャズから大きな影響を受けています。インストバージョンで聴くと、ジャズのドラムのテイストなども入っていて、飽きずに聴いてもらえる仕掛けを随所に入れています。

――2曲目の「梅田の夜」は情景が浮かびます。梅田シャングリラで行ったライブの思い出が綴られていますが、それだけこのライブが印象深かったのですか?

Nakamura そうですね。ライブが終わって出演者のみんなとコンビニで乾杯して、ホテルまで送ってくれて「じゃあね」って帰ってきたとき、これは曲にしなくちゃいけないと思いました。それぐらい楽しくて素晴らしい日でしたね。

――曲中で梅田サイファーやチプルソさんの名前が挙がっていますが、大阪のヒップホップ界隈との繋がりや関わり合いはあるのでしょうか。

Nakamura 憧れはあったんですが、それまで関わりはなかったです。だからこの日のライブのお誘いがきたときはびっくりして、とてもうれしかったです。皆さん強面なんですけど超いい人たちで(笑)。

――Nakamuraさんはヒップホップの方々と一緒にライブする機会は多いのでしょうか。

Nakamura ちょこちょこイベントでご一緒させてもらうのはあったんですけど、場数を踏んでいるヒップホップの方々とご一緒したのは梅田シャングリラが初めてで、シンガーソングライターがジャングルに入るみたいなイメージでした(笑)。「梅田の夜」をいろんな音が混じったアレンジにしてもらったのはそんなイメージからです。

――3曲目の「祭(feat.Mummy-D)」はコラボ楽曲となっていますが、どういった経緯でコラボに至ったのでしょうか。

Nakamura Mummy-Dさんは憧れの存在で、一番影響を受けた方です。出会いはMummy-Dさんが三重県桑名市の地域資源の魅力をテーマごとに発信する役割を担う「魅力みつけびと」に私を推薦してくださったことがきっかけでした。音楽だけじゃなくて桑名の話などもしていく中で、Mummy-Dさんの様々な側面を見ることが出来て、改めてすごい人なんだと感じました。お酒を飲みながら喋れたことで距離感も近くなって、憧れのMummy-Dさんと、「桑名とお祭り」というテーマで曲を書きたい、この繋がりをくれたMummy-Dさんに絶対入ってもらいたいという気持ちから声をかけさせていただいてコラボが実現しました。

――ヒップホップと出会ったのはどういう経緯だったのですか。

Nakamura それこそ30歳手前で初めてRHYMESTERを聴いて、とてもかっこいいと思って。そこから、いろいろなヒップホップを聴くようになって、自分の音楽も変化していきました。

――等身大の感情を描く歌詞の書き方がヒップホップのリリックに通じるものがあるなと思いました。

Nakamura 本当にRHYMESTERを聴いたおかげで変わりました。それまではバラードで、ゆったりと当たり障りのないことを書いたりしていました。でもMummy-Dさんたちの曲に出会ってから、言いたいことがある人が音楽をやるものだと思って、一時期は音楽を趣味にして、別の仕事を頑張るようになったんです。音楽からちょっと離れるというか。そしたら今のような歌詞が書けるようになってきて、出会う人も変わっていきました。

――元々は日記を書いていたところから歌詞を書くようになったと過去のインタビューで拝見したのですが、自分の感情に素直に歌詞を書けるようになったということでしょうか。

Nakamura そうです。でも日記なんて立派なものではなくて(笑)。職場で嫌なことを言われてむかつくとか悪口みたいなものから始まって、「こう言えば伝わったのかな」とかノートにバーッと書くようになったんです。それが歌詞になっていきました。

――ストレス発散の一種だったんですね。

Nakamura 自分の精神安定剤が歌詞を書くことでした。

――書くことで感情が整理できることってありますよね。

Nakamura 気持ちがストンとしますよね。

――精神安定剤がいろんな方に聴いていただける形になっていったのは面白いですね。

Nakamura 自分のことばかり書いていたので、アーティストとして、世の中に広める歌詞ではないんじゃないかなと思っていたんですが、マネージャーとカワムラさんが、私の曲を広めたいと思ってくれて、いろんなことやってくださったんです。二人に出会ったことが今の活動に繋がるきっかけとなっていったので大きな出来事でした。