ホタルを見に行くのが夏の恒例行事

――中禅寺秋彦を演じるにあたって、稽古場以外でやっていることはありますか。

小西 家で原作と比較しながら台本の読み解きをしています。あと難しい言葉がたくさん出てくるので、歴史も含めてネットなどで調べて、どう言葉にすればいいのかなどの参考にしています。たとえば「尊答拝謝し奉る」という言葉があるんですが、どうして京極先生は、このキャラクターに言わせたのか疑問に思って調べていたら、永平寺の動画に行き着いたんです。その中でお坊さんが、「尊答拝謝し奉る」と言う瞬間があって。それが『鉄鼠の檻』の物語にリンクしていたので、僕もお坊さんのように言いたいなと思って、真似をしました。そんなことを稽古が終わって帰宅したときに延々とやっているんですが、1ページに幾つも知らない言葉が出てくるので、それを調べるのが楽しいんですよね。

――Wキャストで探偵の榎木津礼二郎を演じるお二人の印象をお聞かせください。北村諒さんとは前作に引き続いての共演になります。

小西 きたむ(北村諒)は『魍魎の匣』で完成までの難しい道のりを一緒に歩いたパートナーなので、ビジュアル撮影で久しぶりに会ったときは、「また一緒に戦えるね」という気持ちでうれしくて抱きつきそうになりました(笑)。それほど一緒に出演するシーンはないんですが、稽古を見ていると、前作で榎木津というキャラクターを掴んでいるから、さすがだなと思いましたし、立ち姿も頼もしいです。板垣さんと喋っているときと同じように、きたむとは休憩時間に、この作品をどうやって成立させるかをずっと話し合っています。同じ目線で会話ができる貴重な存在です。

――横田龍儀さんとの共演は初めてですか?

小西 初めてです。きたむがみんなより稽古に入る期間が遅かったので、その分、龍儀と接する時間も長かったんですが、演劇大好き人間だなと感じました。「もっともっと!」という姿勢がお芝居から伝わってくるんですよね。本人のキャラクターも面白いし、きたむとは全く違うタイプなので、それぞれどういう榎木津礼二郎を作り上げるのか楽しみです。

――作曲・音楽監督を手掛ける和田俊輔さんの曲はいかがですか。

小西 素晴らしいですね。音楽愛の強さを感じさせる壮大な曲ばかりです。先ほどお話しした禅についてとか、難しいセリフが出てきたりすると地味になりがちで、お客さんに楽しんでもらえる振り幅も狭くなってしまうんですが、そこを和田さんの音楽が助けてくれるんです。音楽だけでもどんどん色が変わって楽しめるはずです。

――改めて『鉄鼠の檻』の意気込みをお聞かせください

小西 みんなが熱量高く、前のめりに稽古しています。壁が高いほうが燃えるというのが役者・クリエイターの性質です。現時点では、タイトル通り何重もの檻に閉じ込められているような状態ですが、自分たちで壁を低くせずに、乗り越えていこうと思います。

――最後に舞台から離れて、この夏、連休を取れたらやってみたいことは何ですか。

小西 久しぶりに旅行に行ってみたいですね。仕事で地方に行く機会が多いので、さんざん国内を旅行している感覚なんですが、逆にプライベートでは行かなくなっちゃうんですよね。だから自分で好きな場所を選んで旅行したいです。あとコロナ禍をきっかけに、夏になると絶対にやることがあって、ホタルを見に行くんです。

――どうして始めたんですか。

小西 ホタルの曲を作る機会があって、そのために大人になって初めてホタルを見に行ったら感動して。それからは毎夏、ホタルを見に行くのを楽しみにしています。今年は知り合いが秋田でホタルを見ながら音楽を聴くイベントを開催するので、時間が合えば駆け付けたいですね。

Information

イッツフォーリーズ公演 ミュージカル『鉄鼠の檻』

【東京公演】
日程:2024年6月14日(金)〜24日(月)
会場:紀伊國屋サザンシアター TAKASHIMAYA

【大阪公演】
日程:2024年6月28日(金)〜29日(土)
会場:サンケイホールブリーゼ

原作:京極夏彦「文庫版 鉄鼠の檻」(講談社文庫)
上演台本・作詞・演出:板垣恭一
作曲・音楽監督:和田俊輔

出演:小西遼生 北村諒(Wキャスト) 横田龍儀(Wキャスト) 神澤直也 上田堪大
高本学 小波津亜廉 大川永 宮田佳奈 伊﨑右典
森隆二 吉田雄 近藤萌音 小原悠輝 藍実成 岡田翔大郎 山下真人
身内ソラ 光由 志賀遼馬 宮村大輔
松原剛志 福本伸一 内田紳一郎/畠中洋 ほか

主催・企画・制作:オールスタッフ / ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ

舞台は昭和28年初春。古物商を営む今川雅澄は、明慧寺の僧侶、小坂了稔から〈世に出ることはあるまじき神品〉を買い取って欲しい、との依頼を受け、箱根山中の「仙石楼」に投宿する。食客として逗留していた老医師、久遠寺嘉親と碁を打つ日々を送りつつ、了稔からの続報を待つ今川。しかし、そんな彼の前に突如現れたのは、座禅を組んだような姿勢のまま死んでいる、小坂了稔の遺体であった。周りに足跡はなく、不可解な現場に旅館は騒然となる。一方、時を同じくして箱根を訪れていた憑物落としの古本屋、「京極堂」こと中禅寺秋彦と、その幼馴染で陰気な作家、関口巽も事件に巻き込まれてしまう。更に、神奈川県警の横暴な捜査に業を煮やした久遠寺が、探偵の榎木津礼二郎を呼んでしまったことにより、榎木津も事件に関わることに。やがて一行は、仏弟子たちが次々と無惨に殺される謎の巨刹・明慧寺を舞台にした「箱根山連続僧侶殺害事件」の只中に飛び込んでいくこととなるのだった。

公式サイト
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<ミュージカル「鉄鼠の檻」 ライブ配信決定!!>
【対象公演】 6月22日(土)13:00公演(全景映像)/18:00公演(スイッチング映像)
6月23日(日)13:00公演(全景映像)/18:00公演(スイッチング映像)
【料金】 4,400円
【販売期間】 6月14日(金)18:00~7月15日(月)20:00
【アーカイブ】 各公演終了後~7月15日(月)23:59
チケットぴあ

小西遼生

1982年2月20日生まれ。東京都出身。2003年、「盲導犬クイールの一生」でドラマ初出演。2004年、「紀雄の部屋」で映画デビュー。2005年に主人公・冴島鋼牙を務めたドラマ「牙狼〈GARO〉」が話題を呼びシリーズ化する。映画、ドラマ、舞台と数多くの作品に出演する一方で、音楽活動も精力的に行っている。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:TAKAKO MOTEYAMA,STYLIST:KEITA OGO