演技が大嫌いだったからこそ続けられている

――キャリアについてお伺いします。この世界に入る前に、お芝居の経験はあったんですか。

林 高校の文化祭で演劇をやったんですが、それが初めてのお芝居でした。シェイクスピアの作品で、セリフ回しや歌が仰々しくて、思春期というのもあって恥ずかしかったんです。それでお芝居が大嫌いになってしまい、一生やりたくないと思っていました。ただ大学生になっても、これといってやりたいことがなくて。でも、ちやほやされたいという気持ちが強くて、漠然と芸能界に入りたいと思ったんです。

――周りで芸能界に興味のある人はいましたか。

林 歌の上手い従兄弟がいて、結構年齢は離れているんですが、かつては歌手を目指していたんです。でも勇気が出なくて、夢を諦めたそうで、「俺は後悔しているから、お前を応援する」と背中を押してくれて、知人の紹介で今の事務所に入ることになりました。

――俳優志望で所属した訳ではなく?

林 そうですね。ただ社長に薦められて演技のレッスンに参加して、先生から俳優や演技について教わったときに、緻密に掘り下げて演技について考えるのが面白かったんですよね。そこから演技にのめり込んでいきました。ただ“好き”とは違うんですよね。むしろ演技が大嫌いだったからこそ続けられているんだろうなと。大好きで続けていると、イメージと違ったときに耐えられないと思うんです。そもそも、この世界に期待をしていなかったので、何かギャップがあっても「そういうもんだよな」って思えるというか。決して大好きではない世界だからこそ、きつくても耐えられたんだと思います。

――初めて撮影現場に行ったときは、どんな印象でしたか。

林 最初は映像の現場だったんですが、すごく地味だなと思いました。ミュージシャンや芸人さん、舞台俳優さんなどはステージという華やかな場所でパフォーマンスをします。ところが映画やドラマは作品になると映像では華やかに見えますが、実際の撮影は地味なんです。ただ幻想もなかったから、がっかりもしなかったんですよね。

――初舞台はいつぐらいだったんですか。

林 事務所に入って1年ぐらいで初舞台を経験して、すぐに2本目の舞台が決まりました。ただ、その後は1年位期間が空いて。この世界に入って10年以上経ちますが、5年ぐらい舞台に出なかった時期もありました。

――なぜ、そこまで空いてしまったのでしょうか。

林 映像に力を入れていこうと考えていたのもあるんですが、舞台はチケットを売るのが大変なんですよね。舞台が入ると一か月間はバイトに出られないので生活費も稼げなくなりますから、舞台を中心に活動するのは大変だったんです。