こんにちは。キャ・ノンです。先週、写真撮るの楽しい!とか書いたばかりなのに、KiSS KiSSのFriday Twilight June Brideでも、ギャンパレのツアー横浜でも、カメラを忘れるという失態をおかしてしまいました。朝起きたところまでは覚えていたんですけどね、不思議です(ごめんなさい)。マネージャーさんにカメラをお借りして撮ってはみたんですけど、使えそうなものが少なかったので、今日はちょっといつもと違う、自分のことを書いていこうかと思います。今週末のライブは、忘れないように気をつけます・・・。

 

なにか載せられそうないい写真ないかなと探したんですけど、幼少期のダンスを習っていた時の写真と、なぜか白黒の学芸会の時の写真を見つけたのでこれにしました。今日はこの頃の話もしていこうかなと思います。

 

 

『だけどね 君が努力しちゃったら 二度とね 僕じゃ届かなくなっちゃいそうだし』(大森靖子/『非国民的ヒーロー』より引用)

 

わたしはこの歌詞が大好きだ。どうしようもなく落ち込んだときに(どうしようもなく落ち込むことは日課なのでほぼ毎日)、神聖かまってちゃんの『非国民的アイドル』と合わせて聴くことがわたしの救いだ。いつだってこんな気持ちで生きている自分が惨めで、でもきらいじゃないと思える。自分のことを歌ってくれる歌は気持ちがいい。

 

わたしには才能がない。それに気がついたのも遅かった。何をするにも、すべてにおいて人よりスタートラインが後ろに設定されている。甘えと言われてしまえばそれまでだ。しかし、新しく人に出会えば出会うほど、自分の乏しさと真正面から向き合わされる。人は人を写す鏡だ。嫌というほど、自分にはないものだけが見える。最近はもう、それに絶望することも少なくなった。きっと、アイドルになんてならなければ気付かなかったこともたくさんある。

 

わたしは幼稚園の頃から、地元のダンススクールに通っていた。幼稚園の同じ組の女の子たちと一緒に始めたが、わたしだけちっとも上手くならなかった。もちろん、自分が下手くそだということにも気付いていない。立ち位置はいつも端っこで、上手な子はわたしより多くのナンバーで踊っていた。そしてわたしは、なぜか一人だけ、自分より小さい子たちと一緒に踊っていた。幼稚園の頃から、周りの子と比べて背の高かったわたしは、横一列の中で頭ひとつ分飛び出していた。ダンスは何年やっても楽しくなかったし、発表会を親に見られて、どうして出来ないんだと責められることも苦痛だった。上手くならないわたしを見かねて、母はバレエも習わせてくれた。ダンスは週に二回、バレエは週に一回とコンスタントに通ったが、楽しいことはそこで会う友達と話したり、お菓子を食べたりすることだけだった。

 

小学生後半になると、次は字の汚さを指摘されるようになった。ある日突然、書道教室の体験レッスンに連れて行かれたのだ。先生は四十代くらいで、いつも三つ編みをしていて、黒いワンピースを着て、魔女みたいな見た目をしていた。体験レッスンは、左手から右手に鉛筆を持ち直されて、一時間まるまる正座をして、ジャポニカ学習帳にひたすら自分の名前を書いた。これもまた何ひとつ楽しくなかった。でもわたしの字は壊滅的に汚かったので、その日からこの書道教室にも通うことになった。

 

毎週木曜日の十七時。わたしはこの時間が人生で一番嫌いだったし、今でも絶対に小学五年生には戻りたくない。体験レッスンでは優しかった先生は、こちらが何かミスをすると、今では考えられないようなやり方で怒られた。何度言われても直せなかったり、発言を間違えるともう終わりだ。さっきまで機嫌のよかった魔女は、突然鬼の形相で手を伸ばす。それは自分より小さな女の子にも、大学生くらいの男の人にも、誰彼構わず、自分の生徒であれば叱っていた。一番辛かったのは、はじめて毛筆を習ったときだ。先生とマンツーマンで、三時間みっちり教わる。いつもだったら誰かしら他の生徒がいて、叱られている人がいれば「大丈夫ですか・・・」「そちらも大変でしたね・・・」と、テレパシーを互いに送り合えたが、今回は二人きりだ。当たり前のように、しかも三時間分しっかりと、叱られ続けた。すべてが終わり、一人で帰路に着く。涙は枯れ果てて、泣きすぎて喉まで痛かった。わたしは中学生になるまで、本当に自我がなかった。やりたいこともなければ、やりたくないことも特になかった気がするが、この書道教室に関しては本当に辛かった。おかげで、学校で金賞を取れるくらいには上手くなったし、目も当てられないほど終わっていた字もマシになったので、通わせてくれた親には感謝している。

 

中学生になってアイドルを始めた。というより気付いたらアイドルになっていた、というのが正しいかもしれない。最初は、所属していた事務所のダンスレッスンと聞いていたのに、気付いたらステージに立つ日程が決まっていて、あれよあれよとアイドルの聖地秋葉原でライブデビューした。アイドルは楽しかった。それにびっくりした。自分のことを応援してくれる人間に、人生で初めて出会った。知らない人だし、おかしな人たちだと思った。メンバーとも友達みたいで、レッスンが終わってもスタジオでだらだらと遊んだり、ずっと喋ったりしていた。こんな楽しい仕事があるんだと、知ることができて嬉しかった。

 

それから、ダンスレッスンやボイストレーニングが始まった。自分でも気付けていなかったが、わたしは歌もひどく下手だった。先生にはいつも怒られていたけど、最初の頃は自分が下手なことさえ自覚できていなかった。挙げ句の果てには、「お前がいると周りの子が可哀想だ、お前なんかいない方がいい」と言われ、目の前が見えないほど、泣きながら帰ったこともある。消えてしまいたかった。それでも、どうしてできないのかわからなかった。

 

しかしどれもこれも、才能のある人間には関係のないお話だ。最初からセンスがあって、さらっと踊れて、書道なんて習わなくても字が綺麗で、どんな人がいるカラオケでも可愛く自信満々に歌えてしまう。わたしだって努力する。でも君にはもう、努力しないでほしいって思ってしまうんだ。

過去の連載記事はこちら
https://strmweb.jp/tag/ca_non_regular/

キャ・ノン

「みんなの遊び場」をコンセプトに活動する13人組アイドルグループGANG PARADEのメンバー。また、「KiSSをあなたにお届けchu!♡」をキャッチコピーに活動するWACK初の王道6人組アイドルグループ『KiSS KiSS』のメンバーの一人でもある。ライブ好きで、苦手なことや、できないことは出来るようになればいいというタフでロックな精神の持ち主。2024年5月31日より自分自身のライブレポートなどを綴った『アイドルリアル備忘録』をSTREAMにて連載中。