演出するときは役者と線引きをして、厳しく現場を見るようにしている

――舞台でターニングポイントになった出来事を教えてください。

三好 劇団Patchの総合演出も務めた演出家の末満健一さんに、デビュー当時から大変お世話になっているんですが、俳優を一切褒めない鬼教官として有名なんです(笑)。日本でもトップ3に入るぐらい厳しい演出家さんなんですけど、ある作品をやったときに、毎日、死ぬ思いで稽古場に通っていたんですが、とにかく「駄目だ」しか言われなくて、何が駄目かも教えてくれない。何をやっても「下手くそ」と言われ続けたんです。稽古期間中も公演中も、自分の全てを注ぎ込んだんですが、千秋楽が終わった後に、末満さんから一言だけ「割と良い芝居をしてたよ」と褒めていただいて。当時の僕は何のスキルもなかったので、とにかくがむしゃらに、役に没頭して無我夢中にやった瞬間を、末満さんが客席から観てハッとしてくれたのかなと。

――それはうれしいですね。

三好 ここまでやらないといけないという教訓になったというか、それが24歳のときだったんですが、ちょうど『日本のいちばん長い日』のタイミングと重なって、お芝居に熱を入れようと思ったんです。その後、朝ドラにも出させていただきましたし、どんどん大きい作品が決まって。その二つのターニングポイントがなかったら、そのまま腐ってしまって、おそらく俳優を続けていなかったと思います。

――現在は、俳優に加えて、脚本、演出、音楽制作など多岐な活動をされています。

三好 俳優だけをやりたいというこだわりはなくて、もともと音楽家を目指していたのもあって、今後もいろいろなことをやっていきたいです。もちろん軸にはお芝居がありますけどね。

――いろいろな活動をしているからこその良さもありますか。

三好 たとえば演出をやるときに役者の気持ちが分かるのはアドバンテージですし、逆に役者として関わっているときに演出家さんの意図も掴みやすいのかなと。僕自身、いろいろやっているほうが性に合っているんですよね。

――演出は自分からやりたいと思ったんですか。

三好 もともとはオファーです。関西時代から、暇があるときに脚本を書いたり、演出の手伝いをさせてもらったりしていて。三十代を迎えてから、そういった場に呼んでいただく機会も増えました。

――役者の気持ちが分かるからこそ、厳しくするのは難しくありませんか。

三好 めっちゃ難しいです。だから『ペテン狂想曲』の副島みたいに、あえて嫌われ役として臨みます。馴れ合いになっては駄目なので、ある程度は線引きをして、厳しく現場を見るようにしています。

Information

『ペテン狂想曲』
池袋HUMAXシネマズほか全国ロードショー中

林光哲 武本悠佑
松田将希 山縣悠己 大滝紗緒⾥ 三好大貴 蔵田尚樹 石川鈴菜
本間優人 阿部冬夜 ひと:みちゃん 石田優奈 大野泰広

監督・脚本:松本了
🄫2024「ペテン狂騒曲」製作委員会/ユーフォリア

ハイエナと呼ばれた弁護士・坂木誠人(林光哲)と、裁判に勝つためには手段を選ばない検事・我妻泰史(武本悠佑)。二人が真っ向から対決した殺人事件裁判は無罪判決で坂木の勝利に終わった。時の人となり栄光を掴み取った坂木弁護士。一方、エリートキャリア組から脱落し地方へ左遷された我妻検事。『驕れる者久しからず』。数年後、経営失敗により破産し、弁護士資格を失った坂木は借金取りから逃げ回る日々を送っていたが、かつて坂木が弁護した殺人事件の被疑者・内田光流(山縣悠己)の甘い誘いにより、マルチ詐欺に参加する。そんな坂木を、左遷から戻った我妻が虎視眈々と狙っていた。

公式サイト
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三好大貴

1992年7月27日生まれ。大阪府出身。2012年、「第1回Patchメンバーオーディション」に合格、劇団Patchの第一期メンバーとして同年に舞台デビュー。劇団員として活躍する一方で、脚本・演出・音楽制作など制作にも携わっている。主なドラマ出演に「まんぷく」(18)、「おちょやん」(21)、舞台「『刀剣乱舞』維伝 朧の志士たち」、shared TRUMP シリーズ 音楽朗読劇『黑世界 〜リリーの永遠記憶探訪記、或いは、終わりなき繭期にまつわる寥々たる考察について〜』「日和の章」など。8月16日に初演を迎える舞台「GORIZO STAGE Vol.8『天才的脱兎 再演』」に出演。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI