メジャーデビューシングルのレコーディングで日髙さんに学んだこと
――2020年4月1日にリリースした1stアルバム『WCMTW』のときは、レコーディングの理解度も深まっていたのでしょうか。
Novel Core ある程度、自分の中にメソッドがありました。自主制作だったので、プロデューサーの選定から曲のコード感、細かい音色だったりを僕からリファレンスさせてもらって、キャッチボールして、トップラインやリリックも全部自分で作っていました。
――今とはレコーディングへの臨み方は違いましたか?
Novel Core 1stのときは宅録することにハマっていたので、レコーディングをする前に家のブースでエディットして、1回形を作っていました。ハモとかも全部自分で決めたラインを歌って、それを聴いてみて、全体像ができている状態で、録りに行くみたいなことが多かったんです。今はスタジオに行ってから全体像が見えることがほとんどで、当日に出た素直なボーカルを、いかにかっこよく突き詰めるかみたいなことをテーマにしています。
――2020年10月にBMSGに所属することになって、また意識は変わりましたか。
Novel Core 今まで自分が正しいと思ってやってきたことが、意外と間違っているかもしれないと、自分を見直すきっかけになりました。メジャーデビューシングルの「SOBER ROCK」(2020年10月16日リリース)のレコーディングに、日髙(光啓)さんがボーカルディレクションで一緒にブースに入ってくださったんです。そのときに「子音と母音の発音のどちらかがおざなりになる瞬間がある。その結果どうなるかと言うと、発音がしっかりとできていないから、ボーカルが走りがちになったり、歌詞が聴き取りづらくなったりする」と。たとえば「K」と発音しているのは、子音が聴こえるから分かるけど、母音が「a」なのか「i」なのか「u」なのかが分からないから、「け」なのか「き」なのか「く」なのか、いまいち分からないパートがあると指摘されたんです。それを意識しながら歌うようになりましたし、BMSGはボイストレーニングを受けている仲間が大半だったので、そういうところからもメソッドを盗むようなって、自分のボーカルと向き合う時間が増えました。歌詞の書き方もメジャーデビュー以降に出会ったプロデューサーさんたちとのやり取りの中で、ここを削ったほうがいいんだとか、もっと分かりやすい歌詞にしたほうがいいんだとか学びが多くて、その学びは未だに続いています。
――BMSG所属以降は多彩なプロデューサーを起用されています。
Novel Core インディーズのときに自分で1stアルバムを作ったのもあって、何となく自分の楽曲性や、合う・合わないが見えるようになっていたんですよね。メジャーデビュー以降は自分に一任してもらえている部分が多いですし、メジャーデビュー以前には、なかなかお声がけできなかった方々にもお声がけできる環境があるので、果敢にいろんなプロデューサーさんとセッションして、感触を確かめながら作っています。
――合う・合わないとは、どういう部分なのでしょうか。
Novel Core たとえば僕の抽象的な言葉を汲んでくれる方です。一発目に作ってこられたデモの段階で、伝えたかったイメージに近かったりすると、セッションはスムーズに進みます。もちろん相性もあるとは思うんですが、通ってきた音楽ルーツが近い場合は合うなと感じることが多いですね。たとえばRyosuke “Dr.R” Sakaiさんとは、たくさんの曲を一緒にやらせてもらっていますが、元々のルーツにロックがあって、クラシックも通っている一方で、ヒップホップミュージックが大好きで、グローバルスタンダードな音楽もやっている。僕のルーツと繋がるところがたくさんあるので、「このぐらいの年代の、こういうテンション感をドラムに入れたいんです」と言っただけで、バチッとハマるんです。
――細かく説明しなくてもニュアンスが伝わるんですね。
Novel Core 相性の良いプロデューサーさんとのやり取りでは、リファレンスとして他のアーティストの楽曲を聴いてもらう必要がほぼなくて、言葉で雰囲気、テーマ、BPM、コード感、音色、世界観などをざっくり伝えた時点で、お互いに見えている絵は近くなります。
――プロデューサーを選定するのは曲ができてからですか?
Novel Core その前の段階です。こういう曲を作りたいという何となくのスケッチが頭の中にある状態で、この曲をやるんだったら誰とやるのが合いそうかなと考えます。逆に普段はこういう曲を作られているイメージがないけど、あえてお願いしたら面白い曲になりそうだなという選び方でお声掛けさせてもらうこともあります。
――あえて違うイメージのプロデューサーを起用した例で言うと、どなたでしょうか。
Novel Core Chaki Zuluさんです。今もスタジオにお邪魔させてもらって、今後リリースする曲も含めて、よくご一緒させてもらっていますが、電子音楽にルーツがあって、ポップスも作られる方ですが、一般的にヒップホップチューンのヒット曲が多いイメージがあると思うんです。僕自身もそうだったんですが、「Novel Core & THE WILL RABBITS」の1stシングル『BYE BYE』を作るときに、あえてバンドの楽曲イメージがなかったChakiさんにお願いしたんです。「生で録るのは久々」と仰っていたんですが引き受けてくださって。ジャンルで言えばエモパンクやポップロックを中心にポップスも、アーティストだとアヴリル・ラヴィーンやジャスティン・ティンバーレイクを例に出して、バンドマターで作ってほしいとお伝えしました。「今まであまりやってこなかったことだから苦戦するかも」と仰っていたんですが、結果的に素晴らしい化学反応が起きて。バンドだけで作っていたら絶対にできなかった作品ができたし、今でも『BYE BYE』に収録した3曲は、ライブでの定番曲ですごく盛り上がります。