THE WILL RABBITSではディレクターの立ち位置

――THE WILL RABBITSを結成して、音楽制作面でどんな変化がありましたか。

Novel Core  圧倒的に曲作りが楽になりました。それまでは、自分の頭の中でしか鳴っていなかったギターのフレーズやリフ、ドラムのフィルなどを、いかに抽象的な言葉で分かりやすく専門家の人に伝えるかの作業が必要でした。バンド結成以降は、僕の頭の中にあるものを、そのまんま各メンバーが書き出してくれる状態になっているので、その上でアイディアもくれるし、「ここだったらこっちのラインのほうがかっこいいと思うけど」と提案もしてくれます。すごくやり取りがしやすくなって、抽象的なものを具体化するカロリーがかからなくなりました。

――バンドで曲作りをするときの過程を教えていただけますか。

Novel Core  僕から、「こういう曲を作りたい」というテーマとBPM感、コード感みたいなものを指定させてもらって、バンドマスターでギターのクマさん(Yuya Kumagai)が主体でコードとリフのフレーズを決めて、そこに他のメンバーの音を被せていきます。メンバー全員がDTMを使えるので、それぞれがデータを持って、ダミーで音を入れたりしてやり取りをしながら詰めていきます。

――最初にCore さんがデモを作ることもあるんですか?

Novel Core  稀にそういうパターンもあるんですが、基本的に僕からメンバーにお題を出すみたいな感じです。作曲家としてはクマさんが前に出てくれるので、僕はどちらかというとディレクターの立ち位置ですね。原型ができたら、そこに何を入れたいとか、こういうトップラインを歌うから、後ろにこういう音が入ったほうがいいとか、それをシンセでやったほうがいいのか、ギターでやったほうがいいのか、はたまたSEを仕込んだほうがいいのかみたいなことは、僕がディレクションします。なのでクマさんから大まかなファーストデモを受け取った段階で、僕がDTMで仕込みます。たとえばドラムなら、自分でパターンを叩いたものを響さん(Hibiki Sato)に投げて、こういうものをやりたいけどどうだろうと音色なども相談して、それに対して響さんから返りがあって、それが曲になっていくみたいなパターンが多いです。

――バンドはセッションしながら曲を作り上げていくようなイメージありますけど、データでやり取りをしているんですね。

Novel Core そういう場合もありますし、ジャムセッションから生まれる曲もあります。たとえば「HERO TOUR 2024」最終公演のアンコールで、「当日の朝に出来上がったばかりの曲」と言って、デモ曲の「ずっと」を初披露させてもらったんですが、この曲はツアー中にキーボードのうっちー(Yuki Uchimura)と、「1曲作ろう」って話をしてできた曲です。リハーサル中にコードを弾いてもらって、僕がその場でメロディーを作って、ボイスメモに録ったものを2、3日で曲にしました。

――メンバーの対応力もすごいですね。

Novel Core セッション育ちの人たちが多いですからね。ジャムセッションのホストをやっていたり、下北沢の「music bar rpm」で鍛錬をしていたり、僕のように路上ライブをやっていたり。そういう仲間たちなので、どんなときでも臨機応変に行けるというのはあります。めっちゃ分かりやすいところで言うと、何かトラブルが起きて曲が止まったときの対応力も迅速です。バンド初期の頃は、あんまり意識せずに音を出してほしかったので、譜面も立てていなかったんです。ライブでは自由にフレーズを弾いてもらうパートも多いんですが、それも全員の対応力が高いからこそできることですし、それがライブごとに違うアレンジを生み出しているんです。

――最近は譜面を共有しているんですか?

Novel Core そうですね。クマさんがマスター譜を書いてくれるんですが、一番の理由はフェスの出演も増えてきたので、万が一、誰かが体調不良で穴が開いちゃったときに、マスター譜がないと代役を立てられないなと。曲数も増えてきたし、さすがに必要だよねってことで用意するようになりました。演奏を完璧にこなすために譜面を立てている訳ではありません。バンドでスタジオに入るときも、用意した譜面通りにやるのではなく、セッションする回数で空気感を掴むことが大事だと思っています。

――今はバンド、ソロそれぞれ並行してレコーディングを行っているんですか。

Novel Core そうですね。最近もクマさんとやり取りをして、ちょくちょく新曲を作っています。ただメジャー以降の制作スキームは、リリースを決めてから動くことがほとんどなので、たとえばソロで作っているものと並行して、裏でバンドを動かすのは難しいんです。なのでバンドのプロジェクトに関しては、形ができてからスタッフさんたちに「こういうのを今作っているんですけど、どう思います?」と共有して。それで「出そう!」となったらレコーディングをするみたいな流れにしたいなと考えています。無理して急ぐよりも、全員が自信を持てるタイミングで作りたいんですよね。

――曲を書くときはソロ、バンドで分けているんですか。

Novel Core  分けていないです。制作方式が違うだけで、自分の作りたいものを作るために、どの表現方法が一番正しいのかを曲によって考えます。そもそも僕は楽曲の振り幅が広いので、曲調に合わせて、これはバンドで作ったほうがいいなとか、これはこのプロデューサーさんとやったほうがいいなとか、これは自分でデモを作ったほうがいいなとか選択するんです。

――選択肢が多いと逆に大変じゃないですか?

Novel Core  いえいえ、めっちゃ楽しいです(笑)。

過去の連載記事はこちら
https://strmweb.jp/tag/novelcore_regular/

Novel Core

東京都出身、23歳。ラッパー、シンガーソングライター。 SKY-HI主宰のマネジメント / レーベル “BMSG” に第一弾アーティストとして所属。 高いラップスキルと繊細な歌唱技術を保有する一方で、決してジャンルに縛られることのない特有のスタイルがファンを集め、アルバム作品が各チャートで日本1位を獲得するなど、メジャーデビュー後の短期間で爆発的にその規模を拡大。 Zeppを中心とした大型のライブハウスを周遊する全国ツアーや、日本武道館での単独公演を完全ソールドアウトで成功させ、来年2月には自身初のアリーナ単独公演が決定するなど、飛ぶ鳥を落とす勢いで躍進を続ける新世代アーティスト。 ミュージシャンとしての存在感を確かなものにする一方で、FERRAGAMOやETROなど、トップメゾンのモデルに起用されるなど、ファッション業界からも注目を集めている。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI