プロデュースする側として、若い才能を多くの人に伝えたかった
――2023年にStray Cityシリーズ第1弾となる「Club キャッテリア」で、企画・プロデュースを務めた経緯からお聞かせください。
荒牧慶彦(以下、荒牧) そもそも「Club キャッテリア」は、「ろくにんよれば町内会」(日本テレビ)というバラエティ番組の企画の一つだったんです。その中で、荒牧慶彦プロデュースで舞台を作ってみようというのが発端です。
――本シリーズは金と欲望が渦巻く街「カブキマチ」を舞台に、ホストクラブ・Club キャッテリアと、ライバル店・Club ドーシャが争うストーリーです。ホストは猫という設定で、それぞれのキャラクター名も猫にちなんでいますが、どのように設定が生まれたのでしょうか。
荒牧 僕がホストはどうですか?と提案して脚本を書いてくれたかが屋さんが猫要素を入れたらどうかと提案してくださって、だったらくっつけてみようというシンプルな理由です。
――なぜホストの題材を提案されたのですか?
荒牧 僕がプロデュースするからには、役者とお客さんが一体となって楽しめる舞台を作りたくて、コール&レスポンスもやりたいなと。そのときにホストのシャンパンコールって面白いなというアイディアが思いついたんです。
――過去にかが屋さんとの繋がりはあったんですか?
荒牧 以前、Huluで『恋、ランドリー。』(20)というドラマを一緒にやらせていただいたことがあって、その縁でStray Cityシリーズの脚本をお願いしました。かが屋さんとはお互いにアイディアを出し合って、僕からもシャンパンコールがやりたい、舞台の終わりにライブパートがほしいなどの意向を伝えて、物語のプロット部分は会議を経てお任せしました。
――前回の脚本を初めて読んだときに、どんな印象を受けましたか。
荒牧 かが屋さんはコント師なので、セリフの一つひとつや掛け合いが、めちゃくちゃ面白いんですよね。そういうお笑いの旨味も残しつつ、舞台ならではの物語に作り上げてくださって、さすがだなと思いました。
――前回の舞台を観させていただきましたが、荒牧さんの“間”は、お笑い芸人さんながらの絶妙さでした。
荒牧 普段からお笑い番組を観ていますし、『カミシモ(あいつが上手で下手が僕で)』(日本テレビ)という舞台にもなったドラマシリーズで漫才コンビのボケを担当しているので、そこでお笑いの間を勉強させていただきました。その経験が活かされているのかもしれません。
――なぜ荒牧さん自身が「Club キャッテリア」の主人公を演じなかったのでしょうか。
荒牧 最初はそういう案もあったんですが、企画・プロデュースで真ん中までやってしまうと、自分のための舞台になってしまうので、それは違うなと。他の役者が真ん中に立つべきだと考えました。僕が演じたClub キャッテリアの支配人・ラグドールはお店全体を俯瞰して見て、若い子たちを育てていくポジション。それは舞台をプロデュースする僕自身に共通しているなと思ったんですよね。
――ラグドールを演じる上で意識したことは何でしょうか。
荒牧 ラグドールはキャッテリアのことも、ライバルのドーシャのことも、ひいてはホスト界のことも俯瞰して見ています。だから常に堂々としていて、かっこつけて立つことを意識しましたし、仕草には猫要素を入れました。
――演出の末原拓馬さんはどのように決まったのでしょうか。
荒牧 若手の役者が集まる舞台なので、演出も新進気鋭の方にしたいなと考えたときに、周りから末原さんがいいんじゃないかという案をいただきました。前回初めてお会いしたのですが、明確にやりたいことを伝えてくださる方で、論理的に説明をしてくださるので分かりやすかったです。末原さん自身がプレーヤーでもいらっしゃるので、役者の悩みも分かってくれるなと感じました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか。
荒牧 いろんな現場で一緒にやってきた役者が集結したので、みんな仲が良くて、雰囲気も良かったです。クリエイティブ面でも(福澤)侑が振り付けで、(廣野)凌大が主題歌を書いてと、二人の才能を間近に浴びることができたので刺激になりましたし、みんなで作っていこうという意識も強かったです。プロデュースする側としては、若い才能を多くの人に伝えたいなという思いもありました。
――今回の「Club ドーシャ」に先駆け、今年4月には「ドラマ『Clubキャッテリア』~ラグとラガ~」(日本テレビ)が前後編と2週に分けて放映されました。
荒牧 映像から舞台はありますけど、舞台からドラマは珍しいから、やりたかったんですよね。それに舞台を中心に活動する役者たちが多いので、地上波ドラマの経験ができるのは貴重だろうという思いもありました。
――ドラマはタイトル通り、ドーシャの支配人・ラガマフィンを演じる立花裕大さんと荒牧さんのW主演でした。
荒牧 舞台「Clubキャッテリア」で、ラグとラガの間にはいろいろあって、それを経て仲良くなったという過去を仄めかせていたのもあって、二人の関係値を見てみたいという声が多かったんです。だったら二人をメインに描こうと思いました。ドラマもかが屋さんが脚本を書いてくれたので、良い意味で舞台と変わらない雰囲気を出すことができました。