自分に素直に生きているMicroさんが素敵だった

――2021年版に引き続き、2024年版の『IN THE HEIGHTS イン・ザ・ハイツ』(以下、『イン・ザ・ハイツ』)に出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。

平間壮一(以下、平間) 本当にうれしかったです。前回、「同じキャストで集まりたいね!」と言ってサヨナラした思い出が蘇りました。ただキャストが大幅に変わったので、「みんな悲しがっているかな……」という思いにもなりました(笑)。

――前回の公演後、歌詞を担当したKREVAさんと偶然お会いしたそうですね。

平間 たまたま大阪から東京に戻る新幹線でお会いしたんですが、その前にKREVAさんがラジオで『イン・ザ・ハイツ』についてお話ししていたのを聴いていて。「役者さんがやるラップにしては上手かったけど、ラッパーとしての思いを言うと、リズムを崩さず、音楽としてラップをしっかりやってもらいたかったよね」みたいなことを仰っていたので、すごく悔しかったんです。もちろんKREVAさんの言っていることも分かりました。お芝居重視で、「言葉を伝えなきゃ」と思いながらラップをしていると、遅れているなという自覚があったんですよね。だからKREVAさんにお会いしたときに、「『イン・ザ・ハイツ』に出演した平間です。先日のラジオ聴きました。遅れているところがあったので次は頑張ります」と言ったら、「次は頼むよ」とアドバイスもいただいたので、次の機会があったらやるしかないとリベンジの気持ちもありました。

――もともとヒップホップダンスをやっていたそうですが、ヒップホップは音楽も好きだったんですか。

平間 小さい頃からヒップホップやラップを聴いて育ってきました。普段はミュージカルをやらせていただく機会が多いですが、自分の体にしっくりくるのはヒップホップです。KICK THE CAN CREWもリアルタイムで聴いていたので、KREVAさんは憧れの存在でした。

――ラップに挑戦したのは『イン・ザ・ハイツ』が初めてですか。

平間 中学生のときにライブ活動をやっていて、自分で書いたリリックでラップをする機会はあったんですが、ちゃんと舞台上でラップをして、皆様に見てもらうのは『イン・ザ・ハイツ』が初めてでした。

――ラップの経験があったんですね!

平間 その頃はラップってかっこいいなというだけで、何となく韻を踏んでいればいいんでしょう、みたいな。でも大人になって、『イン・ザ・ハイツ』でラップをしてみて、これは僕がやっていたものとは別物だなと。しかもKREVAさんの歌詞は次元が違っていて、もともとリン=マニュエル・ミランダが書いた英語詞があって、その流れやストーリーは崩さず、日本語にハメながらラップを作るという、KREVAさんじゃないとできない素晴らしい歌詞でした。

――ラップした感覚はいかがでしたか。

平間 上手く言葉では表現できないんですが、言葉のハメ方やリズムの取り方にKREVAさんらしさがあって。聴いていても、自分でラップしても心地いいんです。そこがハマるポイントかなと。もちろんミランダが作詞・作曲した音楽が素晴らしいのが大前提ですが。

――前回の公演で、初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

平間 移民の問題などを扱っているので、テーマは重厚なんですが、脚本を読んだ印象はそこまで重く捉えていないというか。身近な問題として扱っているので、押し付けにならないところが、この作品のいいところだなと思いました。その中でどう生きていくのか、人の痛みを知っているからこその強さや優しさなどが描かれているなと。

――平間さん演じるウスナビは、マンハッタン北西部にある移民が多く住む町ワシントンハイツで暮らすドミニカ系移民で、両親の遺した商品雑貨店を守りながらドミニカで暮らす日を夢見ています。

平間 ウスナビは前に出るタイプではないし、男らしさを前面に出すこともありません。正直、脚本を読んだときは、もっとかっこいい役をやりたいと思いました(笑)。それまでは自分が前に出なきゃとか、誰よりも目立たないといけないんだみたいに思っていましたからね。でもウスナビのように自分の中で「絶対にこれは曲げない」という確固たる答えを持っていれば、焦る必要はないんだと。ウスナビから学んだことはたくさんありましたし、ウスナビを演じたことで、自分自身の考え方も変わりました。

――WキャストのMicroさんの印象はいかがでしたか。

平間 Microさんはお芝居の面で僕から「盗めるものは盗みたい」と言ってくれましたし、僕自身も音楽的な面で勉強になることばかりで。二人で話し合いながら、お互いの良いところを抽出してウスナビを作り上げていきました。そんな作業の中で、僕とMicroさんは似ているところがあるなと感じていて。僕は、役の情報は必要最小限にして、自分自身をメインに役作りをしていくんです。Microさんも、それに近いところがあって、自分に嘘をついているなと思った瞬間、歌詞にしても、セリフにしても、言葉が詰まっちゃうんですよ。役者は嘘を本当のように表現していくところがあるので、どこかで嘘つきな職業じゃないですか。でもMicroさんは嘘をつけない。ここまで素直に生きるって素敵だなと思いました。だから自分に嘘をつかずに、サーっと言葉が出ているMicroさんを目の当たりにすると、自分には敵わないと思いますし、すごく感動しました。普段から人柄が良くて、素敵な方で、それがお芝居にも出ていますね。