高木ひとみ〇さんが、僕の面白さも引き出してくれた

――映画『威風堂々~奨学金って言い方やめてもらっていいですか?~』(以下、『威風堂々』)の出演が決まったときのお気持ちはいかがでしたか。

簡秀吉(以下、簡) 同じ事務所の池田朱那さんと初共演できる喜びがありましたし、奨学金という昨今社会問題になっているテーマの作品に出演できることは率直にうれしかったです。

――初めて脚本を読んだときの印象は?

簡 ソラちゃんという等身大の主人公を中心にストーリーが進んでいきますが、とてもリアルに今の大学生が描かれている作品だなと感じました。僕が演じる拓人はコメディの部分も担っているので、映画に良いスパイスを加えられるように、拓人の良さを存分に出していけたらいいなと思いました。

――奨学金の問題についてはご存知でしたか。

簡 聞いたことはあったんですが、いまいち詳細が分かっていなかったので、調べることから始めました。

――ご自身と拓人で共通している部分はありましたか。

簡 池田さんは「真っ直ぐなところが似ている」と仰ってくれたんですが、自分では似てないと感じていて。特にコミカルなノリは普段の自分と違うとは思うんですが……。

――役作りで意識したことは?

簡 ソラちゃんにフラストレーションを与えているんですが、拓人自身はそれに気付いていなくて。いかにソラちゃんを困らせられるか、駄目な男だけど、沼っちゃうようなところを意識して役作りをしました。

――拓人は簡さんより幼い印象ですよね。

簡 確かにそうですね。元気にわんぱく感を出していきました(笑)。

――途中で拓人はYouTuberになりますが、そのノリがリアルでした。

簡 ああいったYouTubeは、ほとんど観たことがないんですが、相方を演じてくれた高木ひとみ〇さんが、僕の面白さも引き出してくれたのかなと思います。本番以外でも、たくさんお話しさせていただいたんですが、明るくて元気な方なので楽しかったです。存在自体が面白い方で、今も鮮明に記憶が残っているぐらい楽しい思い出です。なかなかお笑い芸人さんと共演する機会もないので、貴重な経験でした。

――現場の雰囲気はいかがでしたか。

簡 和気あいあいとした現場ですごく楽しかったですし、居心地が良かったです。ソラちゃんを演じた池田さんとの共演シーンが多かったんですが、とてもパワフルな女性で、いろんな魅力があって、上手く引っ張っていただきました。

――ソラと同棲する部屋は本物のアパートですか。

簡 そうです。年季が入ったアパートで、畳が沈んでいて、実際に住むには覚悟が必要です(笑)。

――部屋探しをしているときに拓人が梁に頭をぶつけるシーンは脚本にあったんですか。

簡 脚本にはなくて、段取りのときにやってみたら当たるなってことで、なるせ監督と話し合って入れさせていただきました。

――なるせ監督の演出はいかがでしたか。

簡 本読みの段階で僕が考えている拓人、なるせ監督が考えている拓人でディスカッションさせていただいたんですが、僕たち俳優から出たものを大切にしてくださる方で、自由気ままにお芝居をさせていただきました。

――特に印象的なシーンは?

簡 YouTuberとして成功した拓人の家に、久しぶりにソラちゃんが押し掛けたシーンです。お互いの気持ちが交錯し合う瞬間が印象的で。簡秀吉個人の気持ちとしては、それまでの二人の過程もありますし、ソラちゃんはつらくて寂しいんだろうなと。でも拓人は鈍感で、歯がゆい気持ちになりました。大変だったのはYouTubeのためにとあるものを食べるシーンです。見た目の先入観もあって口に入れるのも嫌でした(笑)。