EPにはTHE ALFEEの坂崎幸之助も参加

――続いては、2曲目の「I was born to love you」。こちらは、ストレートなラブソングですね?

矢作 これはもうまさにラブソングで、ライブでもカップルを見つけたら「いっぱい聴いてね」、「別れても聴いてね」とか言っています(笑)。歳をとってもずっと一緒だよ、という思いを込めて、映画『タイタニック』で老夫婦が抱き合って亡くなってしまう、あのシーンを思い浮かべたりしながら作りました。

――この曲はどのような流れで作っていったのでしょうか?

矢作 ピアノで何となく弾きながら、「I was born to love you」というフレーズが先に出てきて、そこに色付けして作っていった感じです。「I was born to love you」だと、フレディ・マーキュリーさんと一緒になってしまうので悩んだんですけど、背中を追って私もこれでいこう!と思って(笑)、このタイトルに決めました。

――そして、3曲目は「わたしごっこ」。これは矢作さんの日常を描いているのかな?とも感じましたが、いかがでしょうか?

矢作 本当に私の毎日というか、日常を描いています。色々なところからインスパイアを受けて、女の子っぽいことをやろうと思って生活しているんですけど、本当にそれでいいのか?というテーマも裏に込めています。「騙し騙される」とか「馬鹿なふりする」という歌詞には、みんなが求めている私でいてあげているんだよ…というちょっとダークな意味も込められています。

――この曲は先行配信されていましたが、反響や反応はいかがでしたか?

矢作 今までの矢作萌夏ファンじゃない方からの反響もたくさんあって、それこそ、サブスクのプレイリストにもたくさん選んでいただけて嬉しかったです。あとは、ベースが休日課長さんで、ドラムが柏倉隆史さんなので、お2人のバチバチな感じが音楽オタクの人にも刺さったみたいです。本当にセッションみたいな感じでレコーディングしているので、演奏への感想も多かったですね。最近この曲にハマっていますと言ってくれる方もいたりして、嬉しかったですし、私の新しい一面を見せることができた1曲になったなと思っています。宗本さんと一緒にそういった目的で作った曲でもあったので、成功して良かったです。

――たびたびお名前が出ていますプロデューサーの宗本さんは、矢作さんにとってどのような存在ですか?

矢作 いつもレコーディングの時は、宗本さん一押しのミュージシャンの方を連れてきてくださるので、本当にありがたいなと思っています。私の意見も尊重してくれますし、素敵なアイデアもいっぱい出してくれますし、悩んだ時に助けてくれる師匠のような存在です。

――そして、4曲目の「18歳のわたしへ」。この曲は、まさに18歳の自分に宛てた曲なのでしょうか?

矢作 そうですね。思っていた以上に良い曲ができたなと自分でも思っています(笑)。曲を書き始めた時にはこんなにも素敵な曲になるとは思っていなかったので、もう早く皆さんの前で歌いたいです。

――しかも、THE ALFEEの坂崎幸之助さんがギターで参加されています。これは、宗本さんの繋がりですよね?

矢作 宗本さんを通じて、最初に「しおこうじ玉井詩織✕坂崎幸之助のももいろフォーク村NEXT」という番組で共演させていただきました。そこからは趣味が同じということで、カメラをいただいたり、ギターのレッスンをしていただいたり、一緒に爬虫類を買いに行ったり…、定期的に連絡を取らせていただいています。もともと、この曲はスリーフィンガーでのギター弾き語りというイメージがあったんですけど、「スリーフィンガーだったら坂崎さんに弾いてもらおうか」と宗本さんがポロっと言って…。いやいや、流石に無理でしょうと思っていたら、坂崎さんが快諾してくださって実現しました。レコーディングでは、本当にプロの仕事を目の当たりにしたと言いますか、なんて優しい音色なんだろうと感動してしまいました。レコーディング自体は40分くらいで終わってしまって、あとは、トカゲの話をしたり、ギターレッスンをしていただいたりして、2時間ぐらいずっとお話していました(笑)。

――そして、最後の曲が「死に花に、⽣命を」。先ほど18歳の頃に作った曲だと言っていましたが、このタイミングでEPに入れようと思った理由は何かあったのでしょうか?

矢作 SNSでたくさん再生されたこともあって、今回のEPに入れるかとても悩んだ末に、リード曲として入れさせていただきました。でも、制作はとても大変でした。去年7月のライブで弾き語りで歌った動画がたくさん再生されて、色んな意見や感想を寄せていただいたんですけど、どんなアレンジにするかとても悩みました。ピアノ1本にするとか、アカペラを取り入れるとか、色んな案が飛び交ったんですけど、より多くの人の心に響くようにと、オーソドックスなJ-POPバラードを目指して壮大なアレンジにしていただきました。

――改めて、曲が生まれた経緯などもお聞きしてもいいでしょうか?

矢作 テーマというか、謳い文句にしているようにも見えて嫌なんですけど、身内が自死した時に書いた曲で、そのことを昨年7月のライブの時にも話して歌いました。身近な人との別れという経験が初めてだったこともあり、すごく考えさせられることが多かったので、そんな選択をしなくても生きているだけで喜ぶ人はたくさんいるし、生きていればそれだけでいいんだよということをただただ伝えたくて書いた曲です。何かに思い悩んでいる人達に聴いていただいて、少しでも救いになればいいなと思っています。