菅田将暉さんとは洋服の話題で盛り上がった
――佐野は運転も力強いですが、初心者には難しくなかったですか。
奥平 もちろんスタッフさんが安全面の配慮はしてくださっていたんですが、めちゃくちゃ怖かったです。免許を取って、そんなに経っていなかったですし、同乗者もいなくて一人でしたからね。しかも僕がクランクインした日が車の運転シーンだったんです。佐野のキャラクターとしては堂々とスピーディーに運転しなきゃいけなかったので、怯んではいけないですし、スタッフの方と密にお話ししながら撮影しました。
――ネタバレになるので細かいことは書けませんが、吉井と佐野が車内でやり取りするシーンも異世界のような、異様な雰囲気を醸し出していました。
奥平 僕にとっては撮影3日目のシーンで、お芝居で菅田さんと喋る初めての日だったんです。どういう風に菅田さんが来るのか分からなかったんですが、あえて構えずに、頼るところは頼ろうと思って、菅田さんに委ねました。
――現場の雰囲気はいかがでしたか。
奥平 とても和やかでした。菅田さんは今回が初めましてだったんですが、何度かお会いしたことがあって、とてもフレンドリーな方です。菅田さんは洋服好きで、僕も大好きなので、空き時間によく洋服の話をしていました。吉井の恋人・秋子を演じた古川琴音さんも優しい方なので、お二人とはリラックスして過ごすことができました。窪田さんは事務所の先輩なんですが、気さくな方なので、一緒にいると落ち着いていられました。
――共演経験のあるキャストの方はいましたか?
奥平 荒川良々さんとは、この映画の前に撮影していたドラマ「最高の教師 1年後、私は生徒に■された」(日本テレビ系)で共演していたんです。僕が生徒役、荒川さんが教頭先生役だったんですが、かわいらしい教頭先生を演じられていたんです。ところが『Cloud クラウド』では、かなり狂った役を演じていらっしゃるので、ギャップがすごかったです(笑)。
――最後に映画の見どころをお聞かせください。
奥平 何が起きているのか理解できないと思う方もいると思うんですが、ワクワクするし、狂気も感じるし、現代の問題も描かれています。誰もがイメージするようなエンタメではないかもしれませんが、妙な沼り方をする作品で、どんどんその世界観にハマっていくので、黒沢清作品ならではの映画体験を楽しんでほしいです。
Information
『Cloud クラウド』
絶賛公開中!
菅田将暉
古川琴音 奥平大兼 岡山天音 荒川良々 窪田正孝
赤堀雅秋 吉岡睦雄 三河悠冴 山田真歩 矢柴俊博 森下能幸 千葉哲也 / 松重豊
監督・脚本:黒沢清
音楽:渡邊琢磨
世間から忌み嫌われる“転売ヤー”として真面目に働く主人公・吉井(菅田将暉)。彼が知らず知らずのうちにバラまいた憎悪の粒はネット社会の闇を吸って成長し、どす黒い“集団狂気”へとエスカレートしてゆく。誹謗中傷、フェイクニュース――悪意のスパイラルによって拡がった憎悪は、実体をもった不特定多数の集団へと姿を変え、暴走をはじめる。やがて彼らがはじめた“狩りゲーム”の標的となった吉井の「日常」は、急速に破壊されていく……。
奥平大兼
2003年9月20日生まれ。東京都出身。映画『MOTHER マザー』(20)で演技未経験ながらメインキャストの周平役に大抜擢され俳優デビュー。この作品で第44 回日本アカデミー賞新人俳優賞、第94 回キネマ旬報ベスト・テン新人男優賞、第63 回ブルーリボン賞新人賞、第30 回日本映画批評家大賞新人男優賞を受賞し、一躍脚光を浴びる。その他の映画出演作に第 72 回ベルリン国際映画祭でアムネスティ国際映画賞を授与した『マイスモールランド』(22)、『あつい胸さわぎ』(23)、『映画ネメシス 黄金螺旋の謎』(23)、『ヴィレッジ』(23)、『君は放課後インソムニア』(23)、『PLAY!〜勝つとか負けるとかは、どーでもよくて〜』(24)、『赤羽骨子のボディガード』(24)など。
PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI