堤幸彦監督との出会いがターニングポイント
――最初から長くお芝居を続ける気持ちはあったのでしょうか。
野添 上京前はお芝居のことを知らなかったのもあって甘く考えていました。親にも「3年やって駄目だったら大阪に帰ってくるわ」と言っていましたからね。でも3年ぐらいではお芝居が入団当時と何も変わらなくて。そのまま続けていくうちに30歳になって、それでも自分では進歩しているように思えない。コツコツ続けて、実力をつけていかないと駄目なんだと肌身で感じたぐらいで覚悟が決まったというか。10年ぐらい続けているうちに、ちょこちょこお仕事ももらえるようになりました。
――それまで辞めようと思ったことはなかったんですか。
野添 何度も壁にぶち当たって、辞めて大阪に帰ろうと思ったことは何度もあります。仕事もない、劇団の中でもなかなか良い役をもらえない。それが毎年毎年繰り返されて、生活のためのアルバイトも続けて。何しに東京に出てきたんだろうと悩みました。でも帰っちゃったら、それまでの10年間が無駄になってしまう。それってどうなんだろうという思いで、そのまま続けていました。辞める勇気もなかったのかもしれませんけどね。
――ただSET自体はどんどん大きくなっているわけですよね。
野添 いろんな劇団がある中で、SETと出会って、オーディションに合格して、僕が入った途端に三宅さんが売れ出して、劇団もメジャーになるというのは運が良かったなと思います。青山劇場で単独公演するというのも当時はなかなかなかったので、改めてすごいところに入ったなと思います。
――野添さんの仕事が増えたきっかけは何だったのでしょうか。
野添 昔は外の舞台を経験させてもらえなくて、それよりも先に劇団の中のことを全部覚えろと。それが30歳を過ぎたぐらいから、ちょこちょこ外の舞台にも出させてもらえるようになって。いろいろやっているうちに周りから「面白い」みたいなこと言われ出したんですよね。
――映像のお仕事が増えたのは、いつ頃からですか?
野添 劇団関係で映画の台本を書く作家の方がいらっしゃって、良くしていただいていたんです。そしたら、あるときに堤幸彦監督が緒形拳さん主演で『さよならニッポン! 南の島の独立宣言』(95)という映画を撮ることになって、その方が僕を推薦してくださったんです。それが堤監督との最初の出会いなんですが、役としては南の島の、ちっちゃな村の役場の人間という端役。セリフがない役だったんですが、堤監督が気に入ってくださって、それから現在に至るまで30年以上お付き合いをさせてもらっています。
――野添さんのどういうところに、堤監督は惹かれたと思いますか?
野添 自分では分からないですが、頭のはげ具合が良かったのかな(笑)。どういうわけか気に入ってくださって、それから『ケイゾク』や『TRICK』など、堤監督が手がけるドラマや映画にしょっちゅう呼んでいただいて。
――ちょうど堤監督がヒットメーカーとして、立て続けに人気作を世に出す時期と重なっていたんですね。
野添 上手いこと便乗しています(笑)。堤監督と出会ったのは、この世界に入って一つのターニングポイントですね。
――最後に今回のSETの舞台『ニッポン狂騒時代 〜令和 JAPAN はビックリギョーテン有頂天〜 』の意気込みをお聞かせください。
野添 去年の本公演は出られなかったので、2年ぶりに出られるのがすごく楽しみですし、今回は若い役なので、昔のようなアクションもできるのかなと楽しみにしています。今も劇団でアクションの振り付けはやっているんですが、自分自身が舞台上でアクションすることが最近なくなっているんです。ちょっと引っかかっているのが、僕の役が途中でぎっくり腰になるということなんですけどね(笑)。
Information
劇団スーパー・エキセントリック・シアター
創立45周年 第62回本公演
『ニッポン狂騒時代 〜令和 JAPAN はビックリギョーテン有頂天〜 』
作:𠮷井三奈子
演出:三宅裕司
出演:三宅裕司 小倉久寛 劇団スーパー・エキセントリック・シアター
東京公演:2024年10月17日(木)-27日(日) サンシャイン劇場
神戸公演:2024年11月8日(金)-10日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe
神戸公演のみスペシャルゲスト:浅野ゆう子
安保闘争に揺れる1960年代の日本を舞台に、アメリカンポップスの魅力に取り憑かれた若者と、学生運動に明け暮れる若者たちの恋と挫折の青春ストーリー。昭和の喧騒を生き抜いた方々にも、今後のニッポンを担う令和の若者たちにも刺さる、創立45周年に相応しいミュージカル・アクション・コメディー。
お問い合わせ
東京公演:チケットスペース03-3234-9999
神戸公演:キョードーインフォメーション0570-200-888
PHOTOGRAPHER:YASUKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI