やりたいことは全部やってみようという気持ち

――俳優を始めた経緯も教えていただけますか?

イシヅカ 高校時代から服が好きだったんですが、そうすると自然と昔の映画が好きになるんですよね。そのきっかけの一つになった映画が、ちょうどリバイバル上映していたジャック・ドゥミ監督の『ロシュフォールの恋人たち』(67)で、そこから60年代のカルチャーにハマったんです。さらにフリーターをやっていた二十歳ぐらいのモラトリアムな時期に、近くにあった図書館で古い映画のVHSやDVDを無料で借りることができて。和洋問わず、たくさんの作品を観て、中でも若尾文子さんに惹かれました。

――ちなみに若尾文子さんのどういうところに惹かれたのでしょうか。

イシヅカ 全てが素敵なんですが、一つ挙げるとすれば、どんな役をやっていても、自立した女性に見えるんです。たとえば『女は二度生まれる』(61)で演じた小えんは「不見転芸者」と言われる、芸がないから体を売っている芸者なんです。彼女は流されて生きているんですが、それでも芯があるように見える。自立した現代の女性を意図的に演じていることもあれば、そうじゃない女性も演じているんですが、ちゃんと心が通っていて、かっこいいんですよね。

――いろいろな映画を観ていく中で、お芝居に興味を持ったのでしょうか。

イシヅカ 自分自身が演じることは考えていなかったんですが、映画の演出に興味はありました。2017年に『蹄』という映画にヒロイン役で出演するんですが、監督は私のモデルのお仕事を見てオファーしてくださったんです。モデルのお仕事はその日に集まって、その日に解散してということが多いんですが、その映画は大阪で撮影をして、約一カ月間みんなで過ごして。そういうお仕事の仕方が初めてで、みんなで何かを作っていく濃さが、モデルの仕事とベクトルが違っていて面白かったんですよね。

――なるほど。

イシヅカ 2021年公開の映画『片袖の魚』では初めて主演をやらせていただいたんですが、そのときも同じ面白さを感じました。

――過去のインタビューで「軸にあるのはモデル」とお話ししていましたが、それは今も変わらないですか?

イシヅカ 変わらないですね。ただ考え方は変わりました。以前は自分をモデルとして定義するみたいなことを意図的にやっていたんです。他にいろんなことをやっていても、肩書きとして「私はモデルです」と、ちゃんと言うようにしていました。今も肩書きとしては分かりやすいから、聞かれたときは「モデル・俳優」と人に伝えているんですが、自分の中ではあ、モデルが軸だというのは十分出来上がっているのかなと。むしろ一つのカテゴライズから逸脱するほうが人生は楽しいかなと思っています。やりたいことは全部やってみようという気持ちですね。

――最後に改めて『Colors Under the Streetlights』の見どころをお聞かせください。

イシヅカ 私が演じたユリカを始め、登場人物それぞれに違うバックグラウンドがあって。でも、たまたま一つのところに居合わせて、その中でコミュニケーションが始まります。先ほど仰っていただきましたが、言葉を使わないアイコンタクトなどのシーンも印象的で。そういうところから生まれる関係性に注目していただけるとうれしいです。

Information

『Colors Under the Streetlights』
12月 13日(金)よりテアトル新宿にて劇場公開

監督・脚本・編集:定谷美海
出演:イシヅカユウ、大森亜璃紗、千國めぐみ、斉藤陽一郎、マギー、関口アナン、林亮介

ガールズバーのキャストたちを乗せ、夜の街を走るドライバーのユリカ(イシヅカユウ)。バーカウンターに立つミチル(大森亜璃紗)は、今夜も上手く客をあしらっている。カオル(千國めぐみ)は、デート相手の男の車を降り、家に帰る振りをして店に出勤する。スタッフルームに身を潜めるユリカは、そんな二人を光るカーテンの向こうがわから見つめていた。その夜、仕事あがりのミチルと路肩で言葉を交わしていると、巡回していた警察官が二人を見つけ、事情を聞き始めるが……。

公式サイト
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イシズカユウ

1991年7月4日生まれ。静岡県浜松市出身。ファッションモデル・俳優として、ファッションショー、CM、映画、ドラマなど様々な分野で活動。映画主演作に『片袖の魚』(21)、『LOUD』(22)。

PHOTOGRAPHER:YU TOMONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI