自分にも内に秘めているものがあったのかもしれない
――映画『ぼくらのふしだら』のオファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。
田野優花(以下、田野) 原作を読ませていただいて大胆な作品だなと思いましたが、その前に「愛の掛け惨」というネット配信のショートドラマで初めて過激なベッドシーンに挑戦して。すぐに今回のお話をいただいたので、そういうタイミングなのかなと覚悟を決めて引き受けさせていただきました。
――「ぼくらのふしだら」は2015年に『月刊ヤングキングアワーズ・GH』で連載された作品ですが、普段から青年誌を読むことはありますか?
田野 ほぼないです。だから「ぼくらのふしだら」を読んだときに、思春期の男の子が水着の女性が表紙やグラビアを飾る雑誌を初めて読んでしまったみたいな、ちょっと恥ずかしい感覚がありました(笑)。
――事前に小林大介監督とは、どういう話し合いをしましたか。
田野 生々しいエロ映画にはしたくない、人間が落ちぶれていく様を見せたいと仰っていて。非日常的なストーリーの中にも、ちゃんと人間味を感じられるようなお芝居をしたいなと思いましたし、原作の世界観を大切にしつつ、どう映像で表現していくかを小林監督・スタッフさんと話し合うことができて、風通しの良い状態でやることができました。
――田野さんが演じた美菜実ですが、かなり見た目を原作に寄せた印象でした。
田野 当初、「眼鏡はかけなくてもいいんじゃない?」というお話だったんですが、私から「眼鏡をかけたいです」と言いました。キャラクター的に私とは正反対ですし、美菜実のような経験をしたこともないので、見た目で近づけるのも大切なことなのかなと。ただ演じているうちに、美菜実を理解できる部分があって。完成した作品を観たときも、こういう感情になるんだ、こういう目つきするんだと改めて気づけた部分もあって、自分にも内に秘めているものがあったのかもしれません。
――自慰行為をするシーンもありましたが何か参考にされましたか?
田野 ネットで検索をして、そういう映像を観て参考にもしましたが、そのまま真似をするのは絶対に違うなと思って。エッセンスとしては取り込むけど、ちゃんと自分のやりたい、見せたい方向に持っていけるように意識しました。
――肌の露出も大胆でした。
田野 オファーを受けている時点で「これはちょっと……」みたいなことは言ってられないので、本当に腹を括って、作品のためになって、自分が納得いくなら何でもやるというスタンスで臨んでいました。
――小林監督の演出はいかがでしたか。
田野 フランクな方なので、現場全体が堅苦しい雰囲気もなく、やりやすかったですね。一方でシリアスなシーンではしっかりと引き締めてくれるので集中できました。小林監督はテンションが上がってくると、「こういうことをやってみたい!」というのが強く出るタイプなので、それに少しでも応えられるように頑張りました。ただ無理強いするのではなく、ちゃんと話し合いもしてくださるので安心して委ねることができました。
――美菜実に時間を止める能力を授け、その代償として抑えきれない性欲をも与えるササヤキを演じたかれしちゃんの印象はいかがでしたか?
田野 まずスタイルがめちゃくちゃいいなというのが第一印象で、良い意味で「こういう子だろうな」と想像がつかないところがササヤキっぽいなと。それって私には絶対出せない雰囲気だから役にピッタリだなと思いました。実際に話してみるとフレンドリーだし、かわいらしいし。それでササヤキの雰囲気を出せるのはすごいことです。
――かれしちゃんとはキスシーンもあります。
田野 大変だったと思います。
――他人事みたいな(笑)。
田野 いやいや(笑)。私自身、女性とキスシーンをやるのは初めてだったから、自分の心配というよりは、相手のことが気になったんです。しかもササヤキが美菜実を巻き込んでリードしなければいけないので、私よりもかれしちゃんのほうが大変だっただろうなと。
――実際、かれしちゃんから緊張感は伝わりましたか?
田野 伝わりました。小林監督も「もっと行け!」とギアを上げていたので、それに全力で応えている姿がけなげで、心の中で「大変だけど一緒に頑張ろうね!」と念じていました。
――美菜実の幼なじみ・真一を演じた植村颯太さんの印象はいかがでしたか?
田野 普段は天然というか、ぽわぽわしていて(笑)。まっすぐで何も染まっていない雰囲気が素敵だなと。でもスイッチが入ると真一になり切って、いい感じに目が死ぬんですよ。役への入り込みがすごかったですね。