お芝居は自分にできないものだと思っていた

――『悪鬼のウイルス』は村重さんにとって映画初出演にして初主演となります。オファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。

村重杏奈(以下、村重) 信じられなかったです。HKT48を卒業してから、基本的にバラエティー1本でやってきて、たまにモデル業をさせてもらっていますが、演技とは無縁な人生だったので、「本当に村重でいいんですか?」と。今までは「村重が一番売れてます!」みたいなノリだったんですが、初めて日和ったというか、「大丈夫かな……」と思ったのが正直なところでした。

――もともとお芝居をやりたい気持ちはあったんですか。

村重 それが全くなくて……。今まで誰かになりきるなんてやったことがなかったですし、アイドル時代も特にキャラを作ることなく、自分自身だったので、お芝居をやってみたいと思ったこともなければ、自分にはできないものだと思っていました。

――初めて脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。

村重 最初に読んだときは、ホラー作品独特の描写が文字になっているので、どうやって演じたらいいのか分からずパニックでした。何回か読んでいくうちに、ちょっとずつ余裕が出てきて、私の演じる日名子はどういう子なのかと自分なりに考えられるようになって、ちょっとずつ楽しくなりました。

――日名子はどんなキャラクターでしょうか。

村重 一見すると「ザ・女子大生」という明るい女の子なんですが意外と腹黒くて、どんなにぴりついた状況でも恋愛感情を持ってくる。とにかく智樹(太田将熙)が好き過ぎて、一途ではあるんですが、周りが見えなくなって、悪いことにも足を突っ込んじゃうタイプです。

――ご自身と共通する部分はありましたか。

村重 それが一切なくて。日名子は実家が太いお嬢様なので、監督から「品が欲しい」ですと言われたんですが、そのときの村重は品がなかった時代なので余計に真逆のタイプでした。

――品のある・ない時代があるんですね(笑)。

村重 日名子と村重を重ねたときに似ている部分が一つもなさすぎて、逆に振り切れたところはあったかもしれないです。ただテンション感は、「いつもの村重さんらしい明るさでいいです」と事前に聞いていたので、そこは似ているのかもしれません。

――村重さんは霊や祟りなどは信じるほうですか?

村重 信じているんですけど、信じないようにしています。というのもお仕事で心霊ロケに行くことが多くて、そのときに自分が体験したことを考えると、絶対にいるなって思う瞬間があるんです。ビビリだし、怖がりなので、プライベートでそれを考えちゃうと何も手につかなくなるんですよね。だから、いないって考えるようにしていますが、いると思います。

――だから恐怖のお芝居にリアリティがあったんですね。

村重 撮影現場自体が怖かったですからね。役者さんとはいえ、悪鬼が普通にいる状態で撮影しているので、休憩時間も気が抜けないというか、目も合わせなかったですし、なるべく悪鬼とは離れた場所にいました。それぐらい怖い現場でしたね。