挑戦より自由を“27歳”の節目にリリースのメジャー1stアルバムで「俺の人生はいったん終わる」
――2025年4月9日リリースのメジャー1stアルバム『R』のタイトルは、芸名かつ本名である「Ryota」の頭文字が由来となっていて。さらに、同じく「R」を頭文字とする「Reborn」「Restart」「Reply」などの意味も含まれているそうですね。
Bimi 最初に思いついたのは「Reborn」ですね。「Re」という言葉は「再び〜する」といった意味を持ちますけど、俺は(2025年4月28日に迎える)27歳の誕生日が人生の節目だと思っていたんです。音楽に本腰を入れはじめた16、17歳の頃に「27歳で俺の人生はいったん終わる」と勝手に決めて、27歳で亡くなってしまったカート・コバーン、ジミ・ヘンドリックス、尾崎豊のような偉大なアーティストが名を連ねる「27クラブ」への憧れもあって、今作に取り組みました。
――収録曲ではヒップホップやロック、R&B、演歌など、幅広いジャンルの音楽に挑戦しています。
Bimi 自分の音楽の幅をさらに広げられたと思います。これまでも色んなジャンルの曲を作ってきたんですけど、今作は「挑戦」というより「もっと自由に作った」という感覚ですね。まるで、学生時代に聴いていたプレイリストのように、純粋に好きな曲を聴き込んでいたあの頃に戻った感覚です。
――タイトル『R』が描かれたジャケットでは、花とお金が燃えています。これには、特別な意味があるのでしょうか?
Bimi 先にも言った「27歳で俺の人生はいったん終わる」の象徴として、自分への送り火をモチーフとしました。27歳までの自分を供養しないと「次に進めない」と思って、これまでの自分を捨てる意味を込めています。27歳への理想もあったけど、描いていた自分にはなれなかった悔しさもあるし、現実とのギャップを埋める「弔い」をジャケットのデザインに込めました。
――今作では「feat.」と付く、様々なアーティストとのコラボレーション楽曲が6曲あります。それぞれ、制作された経緯を伺いたいです。まず、アーティストを“妖怪”と比喩したジャージークラブビートのナンバー「百⻤夜行 feat. Whoopee Bomb」は、Z世代を代表するラッパー・Whoopee Bombさんとのコラボレーションです。
Bimi Whoopeeくんは、同じレコード会社の繋がりで紹介してもらいました。俺のライブへ遊びに来てくれたときに話す機会があって、おたがいのプロデューサーを通じて知り合ったんです。「じゃあ、一緒にやってみるか」となり、俺がビートを作って、タイトルもバースもフックも決めて「どうですか?」と送ったら、Whoopeeくんがドンピシャのものを乗せてくれた。それで、「じゃあやりましょう」っていう流れになりました。
――ネットやSNSにおける“意気がり”や邪魔なノイズを一蹴するリリックが特徴の「無敵 feat.呂布カルマ 」では、日本のラップ界をリードする呂布カルマさんとタッグを組みました。
Bimi おたがい、炎上する同士ですから(笑)。今回、お声がけしたタイミングも、呂布さんがちょうど炎上したタイミングだったんです。似た者同士なので「面白い曲が作れそうなんですけど、どうですか?」と提案して、叩き文化が目立つネットカルチャーへのメッセージとして、俺らを叩く人たちに対して「お前らは土俵にすら立ってない。だから、何を言われても響かない」というテーマをぶつけました。
――洗練された 鍵盤のリフと重厚感あるビートに乗せて、ダイヤの原石である自分が傷付け、傷つきながら研磨されるさまを歌い上げた「Bright feat.YUKI(from MADKID) 」では、ダンス&ボーカルグループ・MADKIDのYUKIさんと組んでいます。
Bimi YUKIくんとはあるイベントで一緒になって、話すうちに彼もずっとくすぶっているんだと感じたんです。俳優とアーティストを両立する共通点があって、俺自身、最初は音楽を聴いてもらうための手段として俳優の世界に飛び込んだし、原動力にあるものが似ていると感じたんです。共鳴した2人で曲を作ってみたら、めちゃくちゃいいものができて「じゃあ、たがいにアーティストの土俵でちゃんと作ろう」となったのが、今回、改めてお声がけしたきっかけでした。俺らなりに「汚いしダーティだけど、光り輝くダイヤモンドのような曲を書こう」と決めて、泥臭い曲に仕上がりました。
――インディーズ時代の曲をリミックスする「味変」シリーズの「軽トラで轢く-味変- feat.椎名佐千子」は、演歌歌手の椎名佐千子さんを招いています。
Bimi メジャーデビューしてからは作品ごとに1~2曲はリミックス曲を入れているんですけど、「演歌歌手の方にリミックスしていただいたら、面白いんじゃない?」と冗談まじりに提案したら、スタッフさんが実現してくれました。しかも、椎名さんは地元の高校の先輩だったんです。千葉の田舎なんですけど、ここに来て高校の先輩と巡り会うとは思っていなかったし、そんな偶然も、再起を図る「R」のテーマに繋がっていました。自分を形作ってくれた土地、そこにいた人たちとの縁で、巡り巡って作品になったなと思います。
――メロコアパンクサウンドを基調に、今作ではもっとも“Mixture”要素が強くなったという「All the things feat.Sit(from COUNTRY YARD, mokuyouvi) 」は、ロックバンド・COUNTRY YARDやmokuyouviのメンバーであるSit さんと力を合わせました。
Bimi 共通の知り合いがいて、たがいのライブを見に行くようになったんです。Sitさんはずっと「一緒にやりたい」と言ってくれていたんですけど、俺の方が「ちゃんと応えられる環境になってからやりたいから、ちょっと待ってほしい」とお願いしていて、メジャー1stアルバムのタイミングでようやく「お願いします!」と胸を張って言えました。