音楽に影響を受けた時代を経たアーティスト像「自分というプラットフォームに組み込まれたAI」
――Bimiさんの音楽歴も伺いたくて。過去に当サイトで俳優・廣野凌大としてインタビューに応じてくださったときに「小学6年生の終わりぐらいからギターばかり弾いていました」と語ってくださって、はじめた理由として「最初は“モテたい”が大きかったです(笑)」と明かしていましたよね。
Bimi たしかに「モテたい」が原動力でした(笑)。そもそも、漁師町で育った幼少期から親の運転する車の中では、MDで流れてくる色んな曲を聴いていたんです。ケツメイシさんとか湘南乃風さんとか、波乗り系の音楽が多かった気がします。パンクやレゲエ、ヒップホップ寄りの音楽が流れていて、グリーン・デイやセックス・ピストルズのようなギターサウンドにもなじみがありました。その影響もあったのか、小学生で「モテたい」を原動力にギターをはじめて、中学でバンドサウンドにも興味が広がったんです。初めて、自分の意思で地元にあったTSUTAYAでCDを借りたのも中学時代で、最初に借りたのはブラック・サバスがオジー・オズボーンの脱退後に初めてリリースしたアルバム『ヘヴン&ヘル』でした。天使がタバコを吸っているジャケットがめちゃくちゃカッコよくて、80年代の作品でしたけど、現代のバンドと比べても遜色ないぐらいにカッコよくて「何だ、これは!?」と衝撃を受けました。それ以来「衝撃を受けるかは、ちゃんと聴いてみないと分からない」と思い、食わず嫌いをやめて、松田聖子さんや村下孝蔵さんのような昭和歌謡も聴くようになったんです。
――好きなアーティストやジャンルにハマると、一気に傾倒してしまう人もいますよね。ただ、Bimiさんはそうではなかったと。
Bimi 人によっては、好きなアーティストばかり聴いてしまうこともありますよね。でも、俺の場合は違って、そうなると宗教みたいになっちゃうんですよ。音楽もある意味では宗教に近いし、偏らないために色んな音楽を聴きたくなったんです。多くの人に愛される曲が「なぜ、これほど心を惹きつけるんだろう?」という疑問も子どもながらにあったし、色々と聴けばその答えが分かるかもしれないと思って、通っていたTSUTAYAではジャケットを見て、クレジットもチェックして、曲のタイトルが面白そうだったら「このアーティストは、他にどんな音楽をやっているのか」と調べながら掘り下げていく。他の曲を聴くと「違う曲も歌ってるじゃん!」と発見があるのも、楽しいです。
――今、日常的に聴くプレイリストもジャンルを問わず、様々なアーティストが集っているのでしょうか?
Bimi グッチャグチャですね(笑)。冬でも、サザンオールスターズさんの『真夏の果実』を聴いたり、季節も時代も問わず、気の向くままに何でもプレイリストに詰め込んでいます。アーティストがちゃんと関わっていてしっかり作り込まれている音楽が中心で「こういう音の使い方をするのか」と、勉強もしています。
――あらゆる音楽に影響を受けながら、過去のインタビューでは「中学3年生の終わりぐらいからバンドでライブハウスのステージに立つようになって」とも明かしていました。
Bimi フロアは友人ばかりでしたけど、ワンオク(ONE OK ROCK)さんとかKEYTALKさんのように、流行っていたバンドの曲をコピーしていました。当時、曲も作っていたんです。ただ遊び程度で、本格的ではなくギターのカポを動かしながら適当にコードを弾き、思い浮かんだ歌詞を乗せて、最初に作ったの曲のタイトルは『ダメ人間』でした(笑)。高校時代まで続けた友人とのバンドではギター兼ボーカルをやったり、ベースをやったり、学生ノリでとにかく好きなようにやっていたんです。当時、強く影響を受けたのはマキシマム ザ ホルモンさんで、曲の途中でバラードになったり、英語に聞こえるような空耳っぽい歌詞があったり、レッド・ホット・チリ・ペッパーズのようなスラップ・ベースが入っていたり、メタルとも言われる強さがありつつ、万人受けする余地を残すバランス感覚に刺激を受けて。日本の音楽で一番、影響を受けた人たちかもしれないです。
――そして、高校3年生で芸能界入りのために上京したんですね。
Bimi 俳優として舞台のオーディションに受かって、上京しました。17歳で高校を中退して、気が付いたら東京に染まっていました。「音楽をやりたい」と思いながらも、俳優としての仕事がはじまって、楽しさはあったし、クリエイティブ面での面白さも感じていましたけど、いつのまにか「俳優で稼がなければいけない」となってしまった葛藤もありました。
――事務所に所属したときに「音楽をやりたい」と言ったら「どんなにいい曲を出したとしても、ポッと出じゃ売れないから、こういう道もあるけどどう?」と俳優の道を勧められたとも、過去のインタビューで語っていました。そこで、食い下がる選択肢もあったとは思うんですが、そうしなかったんですか?
Bimi 若くても身のほどは分かっていたし、実績もなく“ただ吠えるだけの存在”にはなりたくなかったので、つっぱねることはしなかったですね。でも、いつか自分で壊さなきゃいけないとは思っていました。そのスタンスは、リリックに乗せて気持ちを歌い上げる今と、変わっていないかもしれないです。キャンキャン吠えてるように見えても「実力が伴ってるからやっている」と、ちゃんと提示しようとは考えていて。口だけでは何も残らないし、突拍子もないことを吐き出したとしても「いったん叩いた大口に自分を間に合わせる」といったスタンスも忘れていませんし、何かを言ったら、形にしないと誰もついてこないのは、この世界に入った当時から意識していました。
――自分を貫き続けて手にしたプロアーティストとしての人生、Bimiとしての歴史は2021年6月のデジタルシングル「Tai」でのデビューから数えると約3年10ヶ月です。俳優・廣野凌大と並行しての活動では、何を糧にしていますか?
Bimi 日常でのインプットですね。音楽に限らず、日々の環境で感じる感覚とか空気とか、色とか匂いとか、五感で得たものをすべて「気持ちいい音」に変換するのが、アーティストとしての仕事だろうと思っています。最近、アーティストは「自分というプラットフォームに組み込まれたAI」みたいだとも感じて。自分が作った曲であっても、他の人が作った曲であっても、世にあるキーやコードはある程度決まっているし、似たような音になってしまうのは仕方がないと思うんです。ただ、過去に取り入れてきた音を感性でアレンジしていかにアウトプットできるか、アップデートし続けられるかが、アーティストとしての孤独な作業の楽しさでもあって。今の僕を形作ってくれたアーティストは、自分の道を切り開いてきた人たちばかりですし、僕も誰かがたどった道を歩くのは好きじゃないので、どこかで「よし、ここまでだな」と燃え尽きる日まで、柔軟に音楽の世界で生きていきたいです。
Information
<RELEASE>
Bimi Major 1st ALBUM『R』
2025年4月9日(水)リリース
2023年よりメジャーシーンで見据えてきた景色と、その先の可能性・覚悟の提示を主題に制作が進められているメジャー1st アルバム。 作品のタイトル『R』は、「Reborn」「Restart」「Reply」といった言葉の頭文字と、本名の英字「Ryota」の頭文字「R」を由来とし、Bimiの新章 突入を彷彿とさせるタイトルとなっている。 更に今作は、Bimiの音楽活動においてインディーズ時代より多くの影響を与え、自身のクリエイティブにもエッセンスとして取り込んできた“27th Club”の昇華をサブテーマとして掲げており、自身27歳の誕生日を迎える2025年4月リリースとすることで、“新たに生まれ変わるBimiの音楽”という側面も表現した重要な節目の作品に。
<LIVE>
Bimi Live Galley #04 -Dear 27th-
2025年4月28日(月) 東京・Spotify O-EAST open 17:00 / start 18:00
Bimi Release Party Tour 2025 -R-
2025年4月26日(土) 石川・EIGHT HALL open 16:15 / start 17:00
2025年4月27日(日) ⻑野・CLUB JUNK BOX open 16:00 / start 16:30
2025年5.10(土) 静岡・LIVE ROXY SHIZUOKA open 16:00 / start 16:30
2025年5.11(日) 愛知・NAGOYA ReNY limited open 15:45 / start 16:30
2025年5.17(土) 宮城・仙台darwin open 16:00 / start 16:30
2025年6.6(金) 大阪・BIGCAT open 18:00 / start 19:00
2025年6.8(日) 福岡・DRUM Be-1 open 15:30 / start 16:00
2025年6.14(土) 広島・CLUB QUATTRO open 16:00 / start 17:00
2025年6.15(日) 岡山・CRAZYMAMA KINGDOM open 15:45 / start 16:30
2025年7.6(日) 東京・Spotify O-EAST open 16:00 / start 17:00
Bimi
2021年6月にDigital Single「Tai」でアーティストデビュー。
その独特な世界観と楽曲の強度が話題を呼び、客演参加や楽曲提供なども担当。翌年2022年12月にフルアルバム「Chess」を発表し、2023年10月にキングレコード(EVIL LINE RECORDS)よりメジャーデビュー。パンク・ラウド・HIPHOP等を自身の音楽ルーツとしながら、POPS・和モノ・エレクトロ・R&Bなど幅広い音楽ジャンルを掛け合わせたミクスチャーなスタイルで活動中。観客を一気に惹き込む圧倒的な世界観とステージパフォーマンスが評判を呼び、2024年10月にはZepp Shinjuku(TOKYO)でのワンマンLIVEもSOLD OUTするなど精力的に活動を行っている。音楽アーティスト・俳優、そのどちらも最前線を疾走し、その類稀なる表現力・体現力が唯一無二のBimiの世界観を形成している。
PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO,HAIR&MAKE:SHIO TANAKA,STYLIST:TOMOHIRO IWATA , OTSUYU