思わず触手が動くような奇妙な話を書いていただいてうれしかった
――今回、WOWOWの完全オリジナル作品となる「災」のオファーがあったときのお気持ちからお聞かせください。
香川照之(以下、香川) 監督・脚本が映画『宮松と山下』(22)でご一緒した「5月(ごがつ)」(※東京藝術大学大学院の佐藤雅彦研究室から生まれた映画制作プロジェクト)のお二人で、とても信頼しているので、僕としてもやりやすいですし、思わず触手が動くような奇妙な話を書いていただいてうれしかったです。
――5月の監督たちの印象を教えてください。
香川 佐藤雅彦監督がいて成り立っている監督集団で、『宮松と山下』は3人が揃っていましたが、今回はいらっしゃらないということでポッカリ穴が開いたような感覚もありました。でも二人でも十分に楽しくやられていて、新しいものを見た感じがありました。関友太郎さんは元NHKの演出家で、非常にしっかりとした映像を撮られる方で、彼が機長。平瀬謙太朗さんがコパイ(副操縦士)で、佐藤監督は飛行機本体というイメージです。今回は飛行機本体がいなかったので、スケルトンの飛行機でしたけどね(笑)。コパイの平瀬さんがユニットにとって大きな存在で、ノーブルな顔立ちで、中世貴族みたいな不思議な人物という印象です。
――関監督と平瀬監督は、現場で意見がぶつかるということはないんですか。
香川 二人それぞれ意見を言いますが、それが正反対になることはなかったですね。僕は『宮松と山下』で3人との仕事を経験しているので、飛行機本体(佐藤監督)がいると、もっと複雑化して、それはそれで面白かったです。
――今回、香川さんは姿、口調、顔つき、性格、所作を変えて、まったくの別人となって6人の登場人物たちの前に現れますが、役作りについて、監督からリクエストはあったのでしょうか。
香川 監督たちは僕に任せてくれた部分が多かったと思います。職業ごとに大体のタイプに分けて脚本が書かれていたので、それを僕がどう演じるかということを楽しみにされていたのかもしれません。役者としては、演じ分けるといっても大きく変えることはできないので、早口で喋ったり、丁寧にしたり、低音で話したりといった、提示はしました。ほぼ順撮りという形だったのですが、皆さんが「昨日までの人と違いますね」と喜んでくれましたし、服装やメイクも含めて、スタッフの方々に助けられました。