大切なことを教えてくれるというよりも、僕ら自身が何かを拾いに行く作品

――福井監督のディレクションで印象に残っていることは?

上村 揚羽に関しての資料をいただいた際、福井さんから「ヤマトは歴史ある作品でヘビーな印象もあるかもしれないけれど、上村さんに通じる部分がきっと出てくるから、気兼ねなく自由に演じてみてほしい」とメッセージをいただきました。その言葉が大きな支えになりましたね。

――実際に通じる部分はあったんですか。

上村 不器用なところですかね。特に他人への言葉のかけ方や距離の取り方について似ているところがありました。土門とギクシャクしたのも、揚羽なりの思いやりから声をかけたんですが、結果的に受け取り方が思っていたものと違ったんです。お互いが歩み寄ろうとした結果、上手くいかなくなって、歯車がかみ合わなくなってしまったんです。そういう経験が自分自身にあった訳ではないんですが、そういう人との接し方の不器用さは自分でも感じるところがありますし、揚羽を演じながら自分自身と向き合うことができました。

畠中 福井さんから事前に言われたのは、「土門が一番若いんだから、若い世代の代弁者として、前のめりな姿勢で挑んでほしい」ということでした。ディレクションでも「落ち着きすぎている」「もっと言っちゃっていい」というアドバイスが多かったですね。もどかしいものを、ちゃんと「もどかしい」と言えるのは土門だからこそで、揚羽の繊細さとは真逆。ただ揚羽に対する「どうしてだよ?」という疑問は視聴者も思うことでしょうし、そこに踏む込める無鉄砲さも含めて、視聴者目線に一番近いのは土門かもしれません。土門を見て、「気持ちが分かるな」と思う人もいれば、「まだまだ若い」と思う人もいるでしょうし、世代によって受け止め方も変わってくるのかなと。見る側に立つと、土門は自分を映す鏡になるんじゃないでしょうか。

――最後に『ヤマトよ永遠に REBEL3199 「第三章 群青のアステロイド」』の見どころをお聞かせください。

畠中 原作の『宇宙戦艦ヤマト』が放映された当時の日本は高度経済成長期が終わった直後で、まだまだ未来に向かう前向きな気持ちがありました。今は日本に限らず、世界的に迷っているなと感じていて、ヤマトも力強く突き進めなくなっている部分がある。それは古代艦長の一挙手一投足からも伝わってきますが、いろんなものが発達して繋がれるようになったけど、この繋がりはどこか希薄だったりするし、繋がっているようでそうではなかったりもする。本当に相手を信じられているのか分からない中で、「何を信じていくべきなのか」というテーマに立たされている気がします。ヤマトが進む先は遠い話じゃなくて、僕たちの日常生活の中にもあることだったり、自分たちにも関係していることだったりするので、そこに注目して見て欲しいですね。大切なことを教えてくれるというよりも、僕ら自身が何かを拾いに行く作品なのかもしれません。

上村 若い世代でも『宇宙戦艦ヤマト』というタイトルは知っていると思うんですが、難しそうという漠然としたイメージがあると思います。でも演じる側として作品に立たせていただいて、実際に映像も見ていく中で、本質は人間ドラマにあると感じます。未来をどう迎えていくかについて、いろんな立場の人がいて、いろんな考えがある。話し合ったり、戦ったりしないと解決できないこともある。そういった、いろんな角度から捉えられるような演出が全編に散りばめられています。僕の演じる揚羽は戦地で戦っていますが、残された人たちの視点もある。すべてが上手くいく訳ではないですが、衝突が一つなくなれば、また一歩先へ進める。ヤマトを通して、いろんな角度から隈なく見渡せる作品だと思います。それが今の多様な時代に合っていると思いますし、世代によってどう感じ方が違うのかも個人的には知りたい部分です。まずは気軽に見てもらいたいですね。

Information

『ヤマトよ永遠に REBEL3199 第三章 群青のアステロイド』
絶賛上映中!

◆メインスタッフ
原作:西﨑義展
総監督:福井晴敏
監督:ヤマトナオミチ
シリーズ構成・脚本:福井晴敏
脚本:岡秀樹
キャラクターデザイン:結城信輝
メカニカルデザイン:玉盛順一朗・石津泰志・明貴美加
CGプロデューサー:後藤浩幸
CGディレクター:上地正祐
音楽:宮川彬良・兼松衆/宮川泰
音響監督:吉田知弘
アニメーション制作:studio MOTHER
アニメーション制作協力:サテライト・YANCHESTER
配給:松竹ODS事業室
製作:宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

◆メインキャスト
古代進:小野大輔
森雪:桑島法子
サーシャ/真田澪:潘めぐみ
デスラー:山寺宏一
真田志郎:大塚芳忠
島大介:鈴村健一
土門竜介:畠中祐
揚羽武:上村祐翔
北野誠也:鳥海浩輔
南部康造:松本忍
藤堂信乃:塩田朋子
神崎恵:林原めぐみ
藤堂早紀:高垣彩陽
芹沢虎鉄:玄田哲章
藤堂平九郎:小島敏彦
アルフォン:古川慎
イジドール:堀江瞬
ランベル:江口拓也
サーダ:井上麻里奈
スカルダート:内田直哉

©西﨑義展/宇宙戦艦ヤマト3199製作委員会

宇宙戦艦ヤマトが不在となった地球では、デザリアムと共存する奇妙な日常が始まろうとしていた。あの加藤三郎の忘れ形見・翼が通う小学校にも、デザリアムの少女フルールが転入。彼らは次第に周囲に馴染み、人々はそれを受け入れていく。だが本当にデザリアムは、不幸な歴史を変えるために現れた善意の使者なのか。旧ヤマト艦隊クルーを中心とするパルチザンはその正体を世間に訴えるべく、大規模な反抗作戦を計画するのだが……。一方、宇宙戦艦ヤマトは透明戦艦グロデーズの追撃を振り切り、ガルマン星系に立ち入ろうとしていた。すべてを失った古代進は、再び立ち上がることができるのか。そしてさらわれたサーシャの運命はいかに!?

公式サイト
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上村祐翔

1993年10月23日生まれ、埼玉県出身。4歳で子役デビュー。2002年、劇場アニメ『ぼのぼの クモモの木のこと』で声優デビュー。俳優としても数多くの映画、ドラマ、舞台に出演。主なアニメ作品に「神々の悪戯(戸塚月人)」、「文豪ストレイドッグス(中島敦役)」、B-PROJECT シリーズ(増長和南)」など。

畠中 祐

1994年8月17日生まれ。神奈川県出身。舞台役者の両親のもとで生まれ、芝居や歌が身近な環境で育つ。2006年にディズニーの一般公募のオーディションで合格し『ナルニア国物語』のエドマンド役の吹き替えでデビュー。現在は声優以外にも、アーティスト活動なども行なっている。代表作は「ウルトラマンZ (ウルトラマンゼットの声)」「SK∞ エスケーエイト (喜屋武暦)」「甲鉄城のカバネリ(生駒)」など。

PHOTOGRAPHER:TOSHIMASA TAKEDA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI