撮影現場で見た大泉洋さんの役作りは勉強になった
――映画『かくかくしかじか』の出演が決まった際の心境から教えてください。
鈴木仁(以下、鈴木) もともと原作のマンガが大好きだったんです。メンノン(MEN’S NON-NO)のモデル同士でマンガの話をしているときに勧められたので、買って読んでみたらハマって、自分の中で大好きな作品でした。だから出演が決まったときに、「どの役だろう」と聞いたら、今ちゃんという誰からも愛されるキャラクターを演じさせてもらえるということでワクワク感がありました。大好きな作品だからこそ、原作ファンの方にも納得してもらえるようにという緊張感もありましたね。
――初めて原作を読んだときは、どんな印象を受けましたか?
鈴木 かわいらしい絵にコミカルな部分と、訴えかけるような人生模様のバランスが抜群で、普段はマンガを読まない人が手に取っても受け入れやすい作品だなと思いました。特に後半はグッとくるものがあって、冷静に読んでいられませんでした。
――自分の学生時代と重ね合わせる部分もありましたか?
鈴木 東村アキコ先生(※作品では明子)にとっての日高先生のような恩師で言えば、中学生のときに入っていたサッカーのクラブチームの監督がそうかもしれません。この仕事をやっていく中で、ビビりだったり、緊張しいだったりという面もあったんですが、その監督からメンタルについて教わったことが役立っていると感じます。つらいことがあっても耐え抜く内側の部分というか。
――今でも連絡は取り合っているんですか?
鈴木 頻繁ではないんですが、たまに今でも連絡があります。年頭に初蹴りがあるのですが、3年ぶりぐらいに電話があって、「おい、仁。今、お前のことを応援している子が、うちのスクールにいるんだよ。代わるから喋ってあげて」と言われて、「お前も初蹴りに来いよ」と(笑)。すごく口うるさい監督でしたが、今となっては感謝していて。そこは作品と重なる部分でした。
――今ちゃんというキャラクターは、どのように捉えましたか。
鈴木 見た目からヤンキーという印象が強いんですけど、絵と出会うことでガラッと変わって、人間性も含めて成長していくので、一番分かりやすくステップアップしている役柄だなと感じます。
――衣装と髪型については、どんな印象でしたか。
鈴木 衣装合わせのときにアキコ先生もいらっしゃったんですが、リーゼントは初めての経験で、ヘアメイクさんに髪を上げてもらって、「こうやってやるんだ。オモロー」と普通に楽しんでいました。「これで今ちゃんになれているのかな」という不安もあったんですが、衣装を着たらアキコ先生が「今ちゃんだ!」と言ってくれて、最高にうれしい言葉でしたし、より撮影が楽しみになりました。今回が初共演の見上(愛)は前から友達なんですが、僕が今ちゃんになった姿を見て、めっちゃ笑っていました。
――役作りで大変だったことは?
鈴木 僕に限らずですが、絵が得意ではない人たちが揃っていたと思うので、それぞれ絵を描くシーンには迷いがあったと思います。だから監督やアキコ先生に何度も聞いていました。あとは宮崎弁が難しくて、方言指導の方のお手本を録音して、繰り返し聞いて覚えました。
――日高先生を演じた大泉洋さんと鈴木さんとの掛け合いが最高で、初っ端からバトルするシーンが面白かったです。
鈴木 僕が最初に撮影したのが、そのシーンで、初日からゼロ距離で大泉さんとメンチを切り合うので、そこで緊張も解けたというか、勢いで今ちゃんを楽しむしかないと思いました。その様子を目の当たりにする永野さん演じる明子先生のリアクションも絶妙で、この3人ならではのリズムを上手く表現できたんじゃないかなと思います。あと印象に残っているのは、クライマックスのシーンを演じるにあたって、プロデューサーの方が本物の今ちゃんにオンラインで繋げてくれたんです。大泉さんは「実際の日高先生はどうだった?」と聞いていたんですが、僕も今ちゃんの格好でご本人とお話をさせていただきました。現在の今ちゃんも、リーゼント風に髪を上げていたのが印象的でしたね(笑)。今ちゃんから聞いたことを実際に反映させて、すぐに取り入れる大泉さんの役作りは勉強になりました。