アイドルとプロレスの両立にあった厳しい声も「悔しい」「認めさせてやる」の原動力に
――アイドルとプロレスの両立が本格的にはじまったのは、2021年5月。ドラフト1期生としてSKE48に加入してから、約7年6ヶ月後でした。AKB48グループのメンバーが出演したドラマ『豆腐プロレス』での経験もありながら、当初は相応の苦労もあったかと思います。
荒井 高木三四郎さんが「スターにするからやらないか」と事務所に声をかけてくださって、夢のようなお誘いで「やってみたい」と即決したんです。でも当時、事務所の方からはアイドルとの両立もあるので「いったん考えて」と言われました(笑)。『豆腐プロレス』でも似たトレーニングをしていたので「できるかな」と思っていたんですけど、私はどうやら甘えていたようで、受け身の基礎ができていなかったんです。東京女子プロレスへの所属直後は、朝の9時からトレーニングの時間を設けてくださって、名古屋で5時に起きて、道場まで通っていました。
――異例の両立でなかには、アイドルとプロレスの両面から反発の声もあったのでは…?
荒井 ありましたし、今もいるとは思います。直接言われるわけではないし、少数の声ではあるんですけど、大きく聞こえてしまうので、どれも本気なのに「認めてもらえない」という寂しさはありました。でも、東京女子プロレスに入った当時はすでに、アイドルとしても色々と乗り越えた“強い荒井”だったので「悔しい」とか「認めさせてやる」とか、原動力になっていたんです。最近は、プロレスファンの方も増えて、間口がより広くなった気もします。
――ステージで視線を浴びるアイドル、リングで視線を浴びるプロレスの共通点もありますか?
荒井 環境は一緒だと思います。周囲が仲間だけどライバルで、プロレスは戦うので分かりやすいんですけど、アイドルも選抜メンバーに入れるかどうかとか、少なからず競争がある環境で、ファンのみなさんと一喜一憂を共有できるのも変わらないんです。卒業したSKE48と東京女子プロレスは仲間の温かさも似ていて、居心地のよさも感じています。
――新たに、プロレス1本となって。今、描いている目標は?
荒井 アメリカで見たような、街中に対戦カードが飾られていて、私のシャツを着た人がたくさんいる景色を見てみたいとは思っています。東京女子プロレスでめざしたいのは東京ドームというのも、揺るがないです。
荒井優希
1998年5月7日生まれ、京都府出身。東京女子プロレスに所属。2013年11月、「AKB48グループドラフト会議」にて指名を受け、SKE48 TeamKIIに所属しデビュー。2021年5月からSKE48と並行してプロレスに本格参入。1年を通してプロレスに真摯に取り組む姿勢が評価され、東京スポーツ新聞社制定「2021年度プロレス大賞」と、週刊プロレス制定「プロレスグランプリ2021」の各新人賞をダブル受賞。2022年7月、大田区総合体育館大会で赤井沙希とタッグを組み、坂崎ユカ&瑞希組に勝利、プリンセスタッグ第10代王者に。2024年1月、後楽園ホールでマックス・ジ・インペイラーからインターナショナル・プリンセス王座を奪取し、シングルでは初のベルト獲得。同年11月には6度目の防衛に成功し、IP第12代王者として王座防衛最多記録を更新した。2025年3月末にSKE48を卒業し、4月よりプロレスラー1本で活動開始。
INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO,PHOTO:KOICHI NOGIHARA