3トラック目「GIVE ME SHELTER」が軸にある「第0章」であり「第1章」のEP
――全6曲収録の最新EP『Strange,Dance,Rock』をリリースしました。
凪渡 初心に戻りつつ、サウンドでは今までにない新しさを出せました。ずっと、音楽に対して「素直な気持ちをそのまま出していいのか。それは、果たして許されるのか」と迷い続けていて、自身を失っていたんです。でも、今回のEPで3トラック目の「GIVE ME SHELTER」で奥底の言葉を形にしたら、ちゃんと人に届く感覚を取り戻せました。音楽で「嘘をつかなくていい」「正直であればいい」という原点に立ち返れて、ようやく人に素直な音楽を届けられる準備が整ったEPで、僕にとっての「第0章」であり「第1章」だと思っています。
イクミン 凪渡がもがいていたのは、気がついていたんです。曲づくりでは「どんな曲を作ればいいんやろ」と悩んでいたし、今回のEP以前の曲は、悩んでいる歌詞ばかりでした。
凪渡 それがけっして、悪いわけではなかったんだよね。でも、悩んでいるときって無理やりポジティブな言葉を並べがちになるし、嘘っぽかった。
イクミン 共感できる。だから、今回のEPはとにかく“リアル”なんです。自分たちの思いをそのまま詰め込んでいるし、僕らを「応援したい」と言ってくれる人たちが増えてきた今、ようやくひとつになったメンバー全員の気持ちが凪渡の作ってくれた歌詞だけではなく、トラックやサウンドにも自然と宿っています。
凪渡 ここ2年で、曲づくりも変わったよね。僕が作詞して、僕とギターのちゅーそんが作曲を手がけるのは基本変わらないんですけど、アルバム『Scramble』(2023年4月19日リリース)までは、自分が他のメンバーを引っ張っている感覚だったんです。でも、無力さを味わってからは、孤独を恐れるようになって。僕の自宅にメンバー全員で集まって、話し合って、曲を作るのが増えました。
イクミン (2019年4月の)結成当時を思い出したんだけど、凪渡はズバズバ言ってくるタイプで、ちょっと怖かった(笑)。でも、最近「すごく悩むし、弱さを持ってる人間なんやな」って気がつく場面も増えました。たがいによくしゃべるようになったし、ドラムとして、凪渡の歌詞を「もっと伝えられるように」と強く思っています。
凪渡 イクミンが僕をリスペクトしてくれるのは伝わってくるし、ダメな部分や弱さを受け入れてくれるようになったのはうれしい。でも、メンバー内では一番、優しさが不器用(笑)。
イクミン ハハハ(笑)。凪渡と出会って人として成長できたし、リアルな言葉でまとめてくれる歌詞が自分とも重なるので、リスナーとしても刺さるんです。こんなタイプの人、僕の人生でいなかったです。
凪渡 5人全員、ライブで見れば「何かを伝えられる力」を持っているんです。今回のEPのタイトル「Strange,Dance,Rock」には「奇妙」「ダンス」「ロック」の意味があるんですけど、昨年のメンバー脱退を経た、僕らの覚悟を込めました。「ダンス」と「ロック」は音楽性を表す要素で、「奇妙」はジャンルを問わない僕らに対する「Ochunismって何?」への答えとして。いろんなものが混ざっているし、僕らの考える正解だけで突っ走っている姿勢を表すために「Strange」と付けました。