演劇やクイズに意欲的に取り組んだ学生時代
――キャリアについてお伺いします。青柳さんが小説を書き始めたのはいつ頃からでしょうか?
青柳 創作文のようなものを書いたのは中学3年生のときです。当時、僕は生徒会長をやっていて、卒業式で代表の答辞を任されることになったんです。だけど、なんて書けばいいのか分からない。先生からは、前年の答辞を参考にしてください、と言われたけれど、同じようなことはあまり書きたくない。そう思ったときに、「僕」という架空の中学生を作って1年生からの思い出を書くことを考えつきました。SFの要素のある内容で、「あの同級生はどこへ行ってしまったのでしょうか?」なんていう一文があったりする。その創作文が、初めて書いた小説といえば小説です。
――小説を読むことはお好きだったんですか?
青柳 小説家になってこの業界に入ると、千冊以上読んでいるような方がたくさんいて、おいそれと小説が好きだとは言えなくなりました。僕はそこまでのスケールではないけれど、中学生の頃から小説が好きで、書いてみたいとも思っていました。
――どんなものを読まれていたのか気になります。
青柳 夏目漱石や太宰治、井伏鱒二など純文学作品が多かったです。
――青柳さんといえばミステリのイメージが強いので意外です!
青柳 当時は、ミステリは怖いと思っていました。人が切り刻まれるなど、物騒なシーンがたくさんある。例えば横溝正史の『犬神家の一族』がよくできた話だと分かるようになったのは作家になってからです。自分が書くようになって初めて、構成力の高さに驚きました。
――中学での答辞をきっかけに小説を書くようになったんですか?
青柳 小説ではないのですが、高校生になってからは、演劇部に入って脚本を書いていました。校内公演で上演するためのものや演劇大会に出すためのものなど、上演時間1時間半くらいの脚本を何本か書きました。
――脚本はどういうジャンルを書かれていたんですか?
青柳 コメディを書いていました。高校演劇は、人の生き死にやいじめを題材にしたシリアスな内容をやりたがる人が多かったんですけど、僕は面白い話が好きなんです。たとえ書いたギャグが滑ろうが、明るく楽しいものを、と。
――上演して周りからの反応はいかがでしたか?
青柳 はっきり二分していました。特に女子からの反応は厳しかったです(笑)
――大学時代はクイズ研究会というサークルに入っていらしたそうですね。
青柳 当時はクイズに夢中で、小説を読む量も減っていました。
――クイズ研究会は普段どんなことをするんですか?
青柳 集まって早押しクイズをするのがメインです。どんな問題傾向なのかを検討したり、過去に出題された問題を覚えたり、クイズの問題を作ったりもします。僕たちの時代は週に二日、教室を借りて、バラエティー番組でやるようなクイズ企画を持ち寄りでやっていました。サークルの活動自体は、飲み会やイベントもあって和気藹々と楽しんでいましたが、全国大会を目指す「ガチ勢」は別の日にも集まって真剣にクイズをやりました。僕もその一人でした。
――クイズの問題作りはどういうところから始めるのでしょう?
青柳 クイズ大会が開催されると、終わった後に記録集というものが売り出されるんです。問題文に併せて、誰がどの部分でボタンを押して正解したのか、細かく記録されている議事録みたいなものです。その記録集を読んで、流行りの問題傾向やジャンルを研究して、「それなら、全く出されていないジャンルで作ろうか」と考えたりします。
――クイズ研究会で培った問題づくりが、現在の執筆活動に活きることはありますか?
青柳 物語を作ることとクイズの問題を作ることは違いますが、物語の中で、こういう面白いものがあるんだよ、と知識を出すときに役立っているかもしれません。それこそ、賞に応募してみようと思って最初に書いた小説は、高校生のクイズ研究会を題材にしたものでした。