センターステージの床からウサギの仮面をつけた詩羽が登場し、詩羽体制はじまりの楽曲「アリス」でスタート

水曜日のカンパネラのボーカルがコムアイから詩羽へ引き継がれたのが、2021年9月のこと。そこからわずか2年半にして、新体制の水曜日のカンパネラが日本武道館のステージに立つとは誰が予想しただろう。少なくとも、水曜日のカンパネラのメンバーである3人――詩羽、サウンドプロデューサーのケンモチヒデフミ、何でも屋のDir.Fはこの日を信じていたに違いない。

日本武道館はミュージシャンにとって特別な会場だ。それは水曜日のカンパネラにおいても例外ではない。初代歌唱のコムアイは武道館公演を機に、よりディープでアートな方向へと進んでいった。詩羽は、この日をどのような想いで迎えたのだろう。事前のインタビューで彼女は「本当に良い意味で皆さんも軽い気持ちで来てよ、くらいの感じで今の段階では考えています」と発言していた。いざ本番当日、果たしてどのような公演になるのか。

春のように暖かく晴れた土曜日。会場には水曜日のカンパネラの記念すべき1日を見届けようと、老若男女多くのファンたちが詰めかけた。会場が暗転し客席から大きな歓声が湧き起こると、徐々にスピードアップしていくビート音に合わせてセンターステージから天井に向けて光が放たれた。

4人のウサギの仮面を被ったダンサーたちが花道をゆっくりと渡っていきビート音が鳴り止むと、センターステージの床からウサギの仮面をつけた詩羽が登場。湧き上がる声援の中、詩羽体制はじまりの楽曲「アリス」を歌い始めた。途中で曲が鳴り止み、詩羽が仮面をとって素顔を見せると、「水曜日のカンパネラです! 今日は最高に楽しんでいきましょう!」と笑顔で叫び、さらに大きな歓声と手拍子が起こった。再びアリスの続きをパフォーマンスすると、続けて同じく詩羽体制の初楽曲「バッキンガム」を強いアタックのビートに乗せて歌った。そのままコムアイ時代に誕生した楽曲「シャクシャイン」に繋げると、「ラー」「アラジン」と初期水カン時代の楽曲をノンストップメドレーでパフォーマンス。「アラジン」では、ほうきでステージを履くお茶目なパフォーマンスも見せた。

詩羽が「やっほー!」とセンターステージを歩き回りながら、お客さんたちに手を振り挨拶すると「かわいー!!」とレスポンスが起こった。衣装は、ビックラブを表現した装飾を3Dプリンターで作成し胸元につけた詩羽らしいデザインだ。「最高!」「いつも通りのライブをこの大きい会場で最高に楽しんでいけたらと思うんですけど、盛り上がる準備はできてますか?」と語り、初代カンパネラから歌い継がれてきた「ディアブロ」へ。お風呂について歌ったユニークな楽曲で、「いい湯だね♪」という歌詞に合わせて起こるコール&レスポンスがお馴染みの楽曲だ。振り付けの練習をお客さんたちとすると、一緒に声出し振りをして一体感を生み出した。

続けて、高速道路にまつわる単語と忍者の世界観を掛け合わせた「シャドウ」を披露。「聖徳太子」のイントロが流れると、銀の服を着た同じ髪型のダンサー6人が登場。ステージの詩羽と合流すると、「ハンズアップ!」という詩羽の掛け声をきっかけに観客たちも手を左右に振り盛り上がりは加速していった。ステージ中央から詩羽が消えると、「オードリー」のダンサブルなインストトラックと観客の手拍子に合わせて6人のダンサーたちが踊って観客たちを魅了した。

ダンサーたちがステージを後にすると、モニターにはオオカミの独占インタビューが映し出される。これまでライブで「赤ずきん」を披露する際に登場して一緒にダンスをするなど、ファンにはお馴染みのキャラクターだ。画面には「独占取材に成功」という文字とともに、オオカミのインタビューが映し出されていく。「なぜ騙すのか?」という問いに、意気揚々と気持ちよさそうに語り出すオオカミ。オオカミは「詩羽はビジネスパートナー」と語りながら、武道館公演への意気込みを調子に乗って語っていく。

映像が終わると、ステージ中央に置かれたコタツにうつぶせて寝ているフリをしたオオカミに向い、衣装チェンジした詩羽が「赤ずきん」を歌いながら歩いて近づいていく。このまま騙されてオオカミに食べられてしまうのか?と思いきや、「さすがにバレてるぞ!」という歌詞と連動して、オオカミは慌てて動き始めた。サビになると、詩羽と背中合わせにステージの端に立ちダンスをする。見た目に反して、オオカミによるダンスの動きはしなやかだ。楽曲の途中でコタツに頭から顔を突っ込み隠れたオオカミ。キラキラのジャケットを身に纏い「祝武道館」と書かれたコタツ布団とともにステージを後にした。