転機となった「東京パラリンピックの閉会式」はかつてないプレッシャーの中で
――ご自身にとってターニングポイントとなった仕事はありますか?
RAM RIDER 初めてトータルプロデュースを任されたアーティストのSAWAさんですかね?当時のソニーのディレクターから「作詞作曲だけではなく、プロデューサーとしてお願いします」と言われて関わることになりました。そこから、同じソニーのHALCALIに楽曲を書いたり、フィーチャリングアーティストとしてスチャダラパーのBoseさんと出会うことになり、「プロデュースという仕事をすることで自分がこれまで聴いていたアーティストと仕事ができるんだ」と広がりを感じました。
――新たなプロデュースにチャレンジされる際には不安もありましたか?
RAM RIDER デビュー後はアーティストとしてライブをしたり、DJとしてイベントに参加する本数が劇的に増えたので「アーティスト1本でやっていくんだろう」となんとなく思っていたんです。一方で、もともと裏方として活動していた自分が、大型フェスなどの大きなステージで観客を盛り上げていくことに戸惑いもありました。音楽プロデュースに携われたことで「そもそも音楽をつくること自体に楽しさを見出していた」のを思い出して、しっかり音楽と向き合っていこうと考えるようになりました。なので自分がデビューする不安に比べたら自然と仕事として受け止めることができましたね。
――音楽プロデュースのジャンルも、現在では多種多様ですね。パラリンピックの閉会式にも参加されています。
RAM RIDER 当初はJ-POPのアーティストが多かったんですけど、キャリアを重ねるにつれてゲーム、アイドル、声優、CM…と、次第にジャンルが広がっていきました。その積み重ねが2021年に開催された東京パラリンピックの閉会式の仕事に繋がったと思いますし、パラリンピックは自分にとっても転機の一つになっています。正直、人生でいちばん苦しかった経験で、仕事の性質上、本番まで自分が関わっていることを言えないので、誰にも相談ができませんでした。当時はまだコロナ禍だったので開催自体についても様々な意見がありましたし、様々な報道が取り沙汰されていたこともあって。そういった意味でも不安が大きかったです。
――世界的なスポーツイベントですし、そのプレッシャーは想像すら及ばないですが、乗り越えてみての変化もあったんですか?
RAM RIDER そうですね。純粋に達成感を味わえたのはもちろんですが、「規模の大小に関わらず仕事を完遂する人」として、僕の経歴を見てくださる方が増えたのかなと思っています。デビュー当時は「いいクラブミュージックを作るぞ」と意気込んでいた自分が、パラリンピックのような大舞台まで関われるようになったのは驚きで。今後も「お願いしてよかった」と思ってもらえる仕事をやっていきたいと強く思うようになりました。並行して、アーティスト活動では自分のやりたい音楽を定期的に世に出しながら、協力してくれるチームのスタッフのためにも、他の活動とのバランスをみながら続けていきたいです。
――音楽活動に限らず、1人の人間“RAM RIDER”としての将来像もありますか?
RAM RIDER もう46歳なので、「将来何をしたいか」を漠然とイメージするわけですが、考えれば考えるほど「いやもう今がその将来なんじゃない?」と感じるようになって。あらゆる物事について「いつかやりたい」とか言ってる場合じゃないなと。なので仕事やプライベートのバランスについても少しづつ移行したり、実践することを増やしてます。「移住したい」と言っているLIVEのメンバーにも「早く行動した方がいい」と伝えてますね。正直いなくなられたら困るんですが、それでもやりたいことがあればすぐやる、やめたいことがあればすぐやめる、と割り切るべき年齢にさしかかってきたなと思っています。まずは目の前のツーマンライブですね。遊びにきてください!
Information
RAM RIDER & HONDALADY “DOUBLE BOOKING”
2025年7月19日(土)開場 16:30/開演 17:00
GRIT at Shibuya
公式サイト
RAM RIDER
90年代より活動を開始、自主レーベルからリリースしたアナログレコードが一部で話題となり、それをきっかけに数多くのトップアーティスト達の楽曲を手がける。2000年以降は楽曲提供や作詞、編曲、それらを総合したプロデュースへの道を進み、2004年に自らもヴォーカルをとる形でデビュー。クラブを中心にライブハウス、国内外のフェスなど数多くのステージに出演。DJでは様々なジャンルのアンセムをマッシュアップするスタイルでクラブ初心者からヘビーリスナーまで幅広い支持を得る。2024年11月、デビュー20周年を記念した4thアルバム「REPLAY THE MAGIC」をリリース。現在はレーベル401でのリリースと並行し数多くのアーティスト、アイドル、声優のプロデュースや、TVドラマ、映画、舞台への楽曲提供、またコラムの執筆など、活動の幅を広げている。
INTERVIEWER:SYUHEI KANEKO