今年5月に舞台で共演して感じたお互いの印象

――お二人はこれまで共演されたことはあるんですか。

北村 今年5月に舞台『文豪とアルケミスト 紡グ者ノ序曲』でご一緒しました。

松井 2、3年くらい前にも一緒の舞台に出ているよね?

北村 そうですね。ただ、その時は絡みがほとんどなかった。

松井 舞台上でセリフを交わすシーンがなかったからね。

――お互いの印象をお聞かせください。

北村 勇歩くんは何事に対しても器用に対応できるんですが、こなすだけではないのがすごいところで。「文豪とアルケミスト」では銃を使う役だったんですが、銃の撃ち方や反動の表現、体の使い方にこだわりを感じて、いい役者さんだなと思いました。そういう細部にこそ、役者としてのプライドや表現したいエゴ、伝えたいものが乗るんですよね。

――銃を扱うにあたって、研究されたんですか。

松井 小さい銃ではなくて、ショットガンに近い大きめの銃だったので、なかなかイメージが湧きづらくて。銃を撃っている海外の動画などを観て研究しました。

――松井さんから見て、北村さんはいかがですか。

松井 本当にかっこいい二枚目。クラスで言うと、窓際で小説を読んでいるような佇まいが様になる、僕が憧れたタイプのイケメンです。一見物静かで、穏やかな雰囲気をまとっているイメージなんですが、お芝居になった瞬間にめちゃくちゃ熱いものがあるんです。「文豪とアルケミスト」では殺陣があって、健人は扱うのが難しいムチを使っていて、稽古の休憩中も、稽古が終わった後も黙々と一人で、自分が納得いくまでやり続けていましたし、ムチさばきは格段に上達していました。それを見えないところでやっている漫画のような努力家で、絶対に妥協しない熱いものを持っているところがリスペクトできる部分です。健人自身、人に対してリスペクトを持っているので、自ずとこちら側もリスペクトに応えないといけないと奮い立つ。そうやって人を惹きつけるものを持っている役者さんですね。

――実際、北村さんは妥協を許せない性格なのでしょうか。

北村 お芝居においては、絞り出した一滴が一番いいと思っているので、すぐ手が届くものでアプローチするというよりは、悩んで悩んで身を削ったものを出していきたいというのが、自分のプライドとしてあります。

――演出の松崎史也さんの印象はいかがですか。

北村 僕は誰よりもご一緒している演出家さんで、出会いは14年前、まだ史也さんが役者として舞台に立っていた頃です。演出家としては10本前後ご一緒しています。いろいろなところで言われていることだと思うんですが、非の打ちどころがない方ですね。お芝居や演出の作り方もそうですし、一人ひとりとの向き合い方もそう。すごく風通しのいい稽古場で、誰も傷つけない。そして、お客さんから面白いという満足感を引き出せる、完璧な演出家だと思います。

――稽古中はどんなスタンスなのでしょうか。

北村 ご自身が役者だったというのもあると思いますが、演出家と役者というスタンスではなくて、役者が迷った時には同じ目線で一緒に考えてくださるんです。だから史也さんから頼られた時は、一つでも多く答えたいという気持ちになりますし、新しいボールを投げて驚かせてみたいとも思います。

――松井さんは松崎さんとお仕事されたことはありますか。

松井 2022年に『演劇ドラフトグランプリ』という武道館でお芝居をするイベントの時にご一緒しましたが、20分間のお芝居だったので、本格的にご一緒するのは今回が初めてです。

――その時の印象はいかがでしたか。

松井 健人が言っていたように、役者側に寄り添ってくれるんですよね。その役者が何を持っているのか、何を考えているのかを、ちゃんと言語化させてくれる。「これはこうだ」ではなく、「ここどう思う?」と一緒に考えてくださる素敵な方です。ご一緒する前から、史也さんの話を周りの役者たちから聞くことが多くて。みんなが口を揃えて、「素晴らしい演出家さんで、またご一緒したい」と言うんです。それを20分という短いお芝居でしたがご一緒させてもらって、「なるほどな」と思う瞬間が多々ありました。それから3年間、しっかりとした尺の作品を一緒にやりたいと思い続けていたので、今回の舞台で叶って本当にありがたいです。