理解されなくても訴え続けるのは、毒婦たちと通ずるものがある

――今回演じる高橋お伝という人物をどう捉えましたか。

仲 盗みをして、人を殺して、捕まって斬首刑になった悲惨な人生で、死後に伝説になった女性です。何か偉業を成し遂げたなら伝説になるのも分かりますが、死んだ後に毒婦として伝説になるというのは、本人はどう思っているんだろうとすごく考えます。死後の世界があるのかは知りませんが、ホルマリン漬けで展示されたり、脚色されて舞台や映画、本になったり、本人に「許せますか?」と聞いてみたいです。

――同性として共感する部分はありますか。

仲 自分と通ずるものはあると思います。犯罪行為を肯定しているわけではないのですが、この舞台に登場する女性たちは、様々な理由があって盗みや殺人を犯した後、「私にはこういう思いがあったからこうしたんだ」と訴え続けたんです。理解はされなかったけれど、めげなかった。それが自分とちょっと似ている部分があって。実はここ数年、個性というものがコンプレックスになってしまっていて。「個性的だね」「唯一無二だね」と評価されるんですが、それが扱いづらさにつながってしまうというか、主張が強いと見られてしまうんです。自分ではそんなつもりはないんですが、人から見たらそう見える。でも自分のやりたいことをやり続けて、理解されなくても訴え続けるのは、毒婦たちと通ずるものがあるなと思うんです。

――捉え方によっては、いいことなんですけどね。

仲 個性的と言われることをうれしいと思っていた時期もありましたが、ちょっと辛くなってきてしまって。でもそれを好いてくれている方たちは間違いなくいるし、そちらのほうが多いのは分かっています。だからこうしてプロデュース公演で、自分の好きなものをわがままにやらせてもらっているんです。コンプレックスと言えども、付き合い方によっては、いつか好きになるだろう、受け入れられるだろうとは思っています。

――以前、Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』出演時のインタビューでは、その個性こそがドラマに生きていると感じました。

仲 仰る通りで、自分の個性が受け入れられたという気持ちが大きかったです。『忍びの家』の後に思うようにいかないことがあって、弱気な部分が出てしまっているのかもしれません。そういえば母親に、個性的だからという理由でオーディションに落ちたという話をしたら、「宝の持ち腐れじゃん」と言われて少しほっとしたんです。

――仲さんの個性を宝と認めているからこその言葉ですもんね。

仲 もともと母はミュージカルダンサーとして活動していて、夢を叶えるために上京して、オーディションを受けていたんですが、自分の姉を身ごもって夢を叶えられなかったんです。その分、「あんたらダンスやりなさい」と小さい頃から自由にやらせてくれたんですが、だからこそ言葉に説得力があるんです。日頃から、母親としても先輩としても色々アドバイスをくれますし、よく自分のことを見てくれています。ただ舞台などを観に来ても、あまり褒めてくれないんですよ。肩をトントンと叩いて、「良かったよ」くらい(笑)。初めての舞台の時だけは、ミュージカルだったというのもあって、「よく頑張ったね」と泣いてくれましたけどね。今回の舞台は褒めてくれると思います!

――現在コンプレックスとはどう向き合っていますか。

仲 まだ戦っています。コンプレックスという影が目の前にある状態というか。これを抱きしめるのか突き放すのか、まだ決められていません。個性を消そうかとも考えましたが、無理でした。それだと自分でいる意味がないと思ったんです。小さい頃からダンスで培ってきたものや過去を全部無駄にするのかと考えると、やっぱり誇りに思っているので捨てられない。このコンプレックスは一生続くものだと思いますが、もどかしいですね。

――「女郎蜘蛛」が良いきっかけになればいいですね。

仲 個性というコンプレックスはずっと付きまとうと思いますが、この「女郎蜘蛛」でいいスタートを切れそうなので、強気に攻めていきたいなと思っています。その流れに乗っかっていきたいですね。

――最後に改めて「女郎蜘蛛」の見どころを教えてください。

仲 実在した女性たちの物語なので、「こういう人が本当にいたんだ」「なぜこの人はこういう思いだったんだろう」と考えてみると面白いと思います。本当に彼女たち自身が悪かったのか、悪くしたのは実は周りの人間なんじゃないかと、見えるものが全てではないということにも気づかせてくれます。それって今のSNS社会にも通じるものがあると思うんです。毒婦という言葉から怖いイメージを持たれるかもしれませんが、自分の中では怖いイコール美しいなんです。その美しさを見ていただきたいです。そしてもう一つ、「女性を侮るなよ」というメッセージを伝えたいですね(笑)。

Information

「女郎蜘蛛」
日時:2026年2月19日(木)~2月23日(月・祝)
場所:品川プリンスホテル クラブeX

仲 万美 蘭舞ゆう 太⽥夢莉 安川摩吏紗
⻄葉瑞希 なかねかな 岩佐美咲 永⽥紗茅
⼀篠思瑠 平井沙弥

プロデュース:仲 万美
脚本・演出:中屋敷法仁

ほどけない、ほどけない、ほどけない。暗く、冷たい牢の底。囚われているのは時代も身分も異なる8人の女たち。殺人、強盗、放火、毒殺、裏切り。それぞれに重い罪を背負いながらも、自分が何をしたのか、何故ここにいるのか、その記憶は霧のように曖昧だ。ここは裁かれる場所ではなく「見られるための地獄」。罪を犯した女たちは物語となり、時代を越えて何度も掘り起こされ、消費され続けてきた。恋に溺れ、欲に溺れ、世間から「悪女」と名づけられた女たちの生き様が、歌となり、踊りとなり、再び牢の闇に浮かび上がる。絡み合う因果の糸。縛られた名前と噂。終わらない物語の檻の中で、女たちは奪われた誇りを取り戻そうと抗い始める。
ここは地獄か、はたまた舞台か。それとも、彼女たち自身が張り巡らせた、「女郎蜘蛛」の巣なのか。

【チケット料金】
全席指定:8,500円(税込)
※未就学児入場不可

公式サイト
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仲 万美

1992年6月15日生まれ。熊本県出身。5歳からダンスをはじめ、20年以上のキャリアを誇る。加藤ミリヤ、BoA、椎名林檎などのアーティストをはじめ、2015年にはマドンナのバックダンサーとしてワールドツアーに同行。2016年リオデジャネイロ パラリンピックの閉会式における、日本のプレゼンテーション「SEE YOU IN TOKYO」にも参加。映画『チワワちゃん』(19)で俳優デビュー。その他、雑誌・広告・CM・MVに数多く起用されるなど、世界的にも活躍している。主な出演作に、Netflixシリーズ『忍びの家 House of Ninjas』(24)、映画『偽りのないhappy end』(19)、Rock Opera『R&J』(19)、Juliet aria『DustBunnySHOW』(21)などがある。

PHOTOGRAPHER:HIROKAZU NISHIMURA,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI