今年は今後のことを考える1年にしたい

――『じゆうがたび』にはプライベートなことも、かなり深く書いてあります。

宇賀 これまではアナウンサーという仕事柄、何かを紹介する、誰かを紹介することがメインで、自分自身の話をすることはあまり多くなかったんです。でも今回は、初めてのエッセイ本ですし、せっかくの機会ですから包み隠さず伝えようと思っていました。

――逡巡はなかったのでしょうか。

宇賀 なかったです。それが本の面白いところで、テレビやラジオで発言するのとはまた少し違うんですよね。この本は、興味を持って、お金を出して買ってくれた人だけが読んでくれる。だからこそ、届き方が違うと思うんです。実際この本を出してから、「この部分で救われた」「宇賀さんもこんなこと思ってたんですね」と、たくさんの方からお手紙をいただきました。やっぱりちゃんと書いたほうがいいんだなと。一言だけ切り取ったら勘違いされちゃう部分もあるかもしれないけど、しっかり最初から最後まで読んでくれた人には、分かってもらえるように書いたつもりです。

――先ほどお話しに出た通り、フリーランスになってからのことも書いてあるので、さらに内容に厚みが出ているなと感じました。

宇賀 今は転職する、独立するということも珍しく無くなってきました。この4年間は「どうして会社を辞めてフリーランスになったんですか?」「どうして事務所に入らず一人でやってるんですか?」とたくさん聞かれてきたんですけど、それにちゃんと答えられるものにしたかったんです。そのためにも実際にフリーランスでやってみた話がないとダメだなと。

――フリーランスになってからも、その年によってスタンスの変化があると綴られています。

宇賀 そうなんですよ。紆余曲折あって、ちょっとずつ変えています。特にコロナ禍では行動が制限されていたので、とにかく仕事を入れまくっていた時期もありました。でも今年の4月以降は、キャリア15年目でフリーランス5年目になるので、毎月3週間しっかり働いて、最終週は1週間休みにしてみようと思っています。実験的に、9月ぐらいまではそのペースで休んで、海外国内問わず旅をしようと。コロナ禍を経験して、初めて旅に行けない状況があるんだと分かりましたし、この先もいつどうなるか分からない。だからこそ、行けるときに行こうと思います。今のところはありがたいことにレギュラー番組も続いているんですけど、これもいつどうなるのか分からない。それで今年は今後のことを考える1年にしたいなと思っています。

――フリーランスになる時に、ここまで仕事の幅を広げることは想定していたんですか。

宇賀 してなかったですね。一回生活を落ち着けようと思っていたんですけど、まさかこんなにレギュラー番組をいただけるとは思っていなかったです。事務所にも入らずに、テレビのゲストに呼んでもらえるなんてうれしかったですし、公式ホームページに普通にオファーが来たのも最初は驚きでした。イベントの司会等もやらせていただくんですけど、大きい代理店さんが間に入っていると、個人には来ないのかなと思っていました。本当にありがたいです。

――事務作業や仕事の窓口なども全てご自身でやっているのも驚きました。

宇賀 テレ朝時代から、基本的に移動は一人でしたし、せっかく独立するなら一人でやるほうが面白いというか。できることが増えた方が、今後のためになると思いました。だから今も一人でやってますし、一人で仕事も決めています。

――では会社を大きくすることは考えてない?

宇賀 一切考えてないです。どんどん自由になっている旅の途中ですから。この本の発売イベントでもお話ししたんですが、小学生の時が一番不自由だったなと。時間割もランドセルも上履きも全て決まっていて、一人ではどこにも行けない。でも、中学・高校・大学とだんだん行動範囲が広がって、できることが増えて。社会人になって、また自由になって。さらに会社を辞めて、もっと自由になったところなので、人を雇うことは考えられません(笑)。

――フリーランスが向いていたんですね。

宇賀 そうなんですかね。今はできることを一つずつ増やしているところです。アナウンサーの仕事はすごく好きですけど、必要とされなくなったらできないじゃないですか。そういう状況になっても、やってみたいことがあれば挑戦してみたいですし、何があっても面白がっていきたいと思います。