人生はいろいろな選択の連続

――大学では、どんな学びがありましたか?

宇賀 正直なところ、大学ではあまり勉強してなかったんですよ(笑)。そもそも大学受験を自分なりに必死に頑張って、それが終わった時、私は机に向かって勉強するのが嫌いだって自覚したんです。だからもう、テスト前とかここぞの時に勉強するくらいでした。ただ、サークル活動やアルバイト、交友関係などは全てが勉強でしたね。特にアルバイトは、働く期間や時間を自分の都合で選びながら、いろんな経験ができたので、本当に貴重な時間でした。

――サークルも立ち上げたんですよね。

宇賀 最初の1年間はテニスをやっていたんですけど、ある程度テニスができるようになって、次は何をやろうかなと考えた時、特に入りたいサークルがなかったんです。だったら自分達で作ろうと。

――どういうサークルだったんですか?

宇賀 社会に出るための準備をしながら遊びもしっかりというサークルで。たとえばサッカーのワールドカップの観戦イベントや、大学生だけの運動会を企画して、場所をおさえて、協賛を募って、人を集めて。学生のマーケティングをしたい会社があったら、私たちがアンケートを取るとか。所詮学生のサークルでしたけど、それなりの人数の組織を自分たちで動かすという経験はすごく面白かったですね。

――もともとテレビを観るのは好きだったんですか?

宇賀 中学生ぐらいまではかじりつくように観ていましたけど、大学生になると学生生活が忙しくて、あんまり観なくなっていました。だから正直、就職活動の時は、どんな番組があるのかもあまり詳しくなかった。でも、やっぱりマスコミに憧れがあったので、テレビ局に行けたらいいなと思っていました。

――テレビ局のどこに魅力を感じたのでしょうか。

宇賀 大前提は「伝える」ことができること。そして、いろんな部署があることです。アナウンサーでも担当する番組によって仕事内容は全然違いますし、面接の時も、「制作も営業もやってみたいし、記者の仕事も憧れる。テレビ局だったら、どこに行っても前向きに働けると思います」と言いました。いろんなことに興味があるから、部署が変われば転職したみたいにやることが変わるのが魅力だなと思っていたんです。

――「羽鳥慎一モーニングショー」で宇賀さんが担当していたコーナー「継ぐ女神」が大好きだったんですけど、毎週、全国各地の老舗を切り盛りする女性を取材する内容で興味深かったです。

宇賀 私自身も実際に仕事を体験させていただいて、とても楽しい取材でした。家族経営の老舗がほとんどでしたが、江戸時代から続く商売のスタイルって、フリーランスと似てると思うんですよ。企画・製造・販売はもちろん、広報宣伝まで全部自分達でやって、そのスタイルを長年続けている。組織が大きくなり過ぎると、いろんなしがらみが生まれることもあると思うんですけど、変わらない信念を持ちつつ、常に時代に合わせて変わっていくって素敵だなと。だから何百年も続いているのだということを間近で見た時に、私も独立するならこれをやりたいと思ったんです。一人だったら柔軟に変わっていけるなと。

――最後に進路を検討しているティーンにアドバイスやメッセージをお願いします。

宇賀 自分は何が好きで何が嫌いなのか、何が得意で何が苦手なのか、常に考える癖をつけてほしいなと思います。たとえば赤と青だったらどちらが好きか、カレーとラーメンだったらどちらが食べたいかくらいの選択は日々していると思いますが、どうしてそちらを選んだのかを真剣に考えることはあまりない。人生ってそういう選択の連続なんですよね。どちらが正解とかじゃなくて、勉強や部活に関しても、友達関係にしても、どうして自分はそちらを選んだのかという答えを、しっかり考えておく。それだけで自分を知ることができます。たとえ好きなことを仕事にしなくても、どうしても苦手なことを避けるだけで、生きやすくなったりします。消去法でもいいです。未来は、全て一つひとつの選択の先にあるということを忘れずにいてほしいなと思います。

Information

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テレビ朝日の番組で活躍してきたアナウンサーの宇賀なつみ。どんなに忙しくても「旅に出て新しい世界と出会いたい」という彼女が、これまでの道のりを旅の記憶とともに綴った。大嫌いな自分に向き合うきっかけをくれた大泉での出会い、六本木でお天気アナになった日のこと、スポーツキャスターとして意識が変わった沖縄キャンプ、退社を決意したベトナム旅行……。社会人、女性、アナウンサーとして日々揺れ動く心を、旅を通して見つめていく。現在、マネージャー業務や経理業務などすべて1人でこなす「完全フリーランス」をしている理由についても明かす。人生を前向きに生きるヒントがたくさん詰まった1冊。撮りおろし“旅グラビア”も収録。

公式サイト

宇賀なつみ

1986年6月20日生まれ、東京都出身。2009年、立教大学社会学部を卒業し、テレビ朝日入社。入社当日に「報道ステーション」気象キャスターとしてデビューする。その後、同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」「池上彰のニュースそうだったのか」等、情報・バラエティ番組を幅広く担当。2019年に同局を退社しフリーランスとなる。

PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI,HAIR&MAKE:HITOMI AKIYAMA,STYLIST:WAKIKO KONDO