原作にはないオリジナルストーリーによる、待望の映画化

――今回の映画化は、アニメファンの間でも大きな反響がありました。お二人は最初にお話を聞いた時、どのように感じましたか?

梶原岳人(以下、梶原) 僕はこれまで、自分の演じた作品を劇場で観たことがなかったんですよ。だから、大きな夢であり目標の一つだったんです。良い音響の中、大きなスクリーンで出演作品を観ることが。なので、映画になるって話を聞いた時はすごくうれしかったですね。「ようやく自分も体験できるんだ!」ってワクワクしました。

――しかも『ブラッククローバー』は、梶原さんにとって初主演作でもあります。

梶原 それも大きいです、やっぱり。アスタとして3年半にわたって自分なりに主演を務めてきて、それを映画で観られるっていうのは……いやー、沸きました(笑)。

――島﨑さんはいかがでしょうか?

島﨑信長(以下、島﨑) テレビシリーズをあれだけ長く放送して、ひとまずの区切りを迎えた時は、やっぱりすごく寂しい思いがあったんですよね。だけど今回は劇場版ということもあって、本当にうれしかったです。「またユノとしてこの作品に関われるんだ!」って。ただ、最初の段階ではどんなストーリーになるかわからなかったんですよ。なので、そんなことはないと思うけど、場合によってはユノが出てこない可能性もあるのか……?って(笑)。

梶原 うん、あり得なくはない。

島﨑 ほぼアスタと黒の暴牛(※九つの騎士団から編成された魔法騎士団のうちの一つ)の話で、ユノは出ない可能性もゼロではなかったんで(笑)。いやいやいや、そんなことはないと。きっとユノも活躍するはずだと。そう信じて待っていたんですが、ちゃんと活躍できて良かったです(笑)。

――実際は、原作にもないオリジナルストーリーになりました。台本を読んだ時の感想はいかがでしたか?

梶原 本来の『ブラッククローバー』らしさもありながら、キャラクターの数やテーマの壮大さなど、よりスケールが大きくなっていて、すごく演じがいがありました。アスタの夢であり最も目指していた魔法帝という存在が、倒すべき相手になってしまったという心の葛藤とか、お互いにとっての正義のぶつかり合いとかっていう部分も含めて、映画で描くのにふさわしい物語になっていると思います。

島﨑 作者である田畠裕基先生監修のオリジナルストーリーということで、原作ならかなりの長編ができそうな重厚な物語を劇場用に用意していただいて。アスタとユノが目指し続けてきた魔法帝が4人も出てくるんですけど、相手が強ければ強いほど挑む側も輝きますし、こちらが必死になれば、魔法帝の強さもまた引き立つっていう。そうやってお互いに高め合えるようなお芝居ができたらなって、台本を読んだ時は思いましたね。それに、魔法帝を演じるキャストの皆さんもすごく豪華でしたし、いろんな意味で贅沢だなって思いました。

――その4人の魔法帝について、それぞれの印象を教えてください。

梶原 僕は主に第27代目魔法帝のコンラート・レトと戦っていたんですが、コンラートはバトルもそうですが、それ以上に気持ち的な部分ですごくぶつかったという印象ですね。アスタが持っている信念というか、目指したい世界っていうのは、根本的にコンラートと同じものなんですよ。だけど、そこに向かう道筋や手段が違うからぶつかってしまうし、お互いの気持ちがわかるからこそ許せない気持ちが出てきてしまう。単に敵対するのではなく、心と心の対話っていう意味で、コンラートとのシーンはすごく印象に残っています。

島﨑 僕は第16代目魔法帝のジェスター・ガランドロスと絡むことが多かったんですけど、彼はすごく軽やかで余裕ありげで、どこか斜に構えているように見えるんですけど、その内面には真面目さと真摯さを持ってる人なんですよね。それは第20代目魔法帝のエドワード・アバーラシェや第11代目魔法帝のプリンシア・ファニーバニーにも共通するんですが、表面上で見せている態度は違えど、それぞれがそれぞれの信念や背負っているものがあるんだなっていうのはすごく伝わってきましたね。

――収録はどのように行ったのでしょうか?

梶原 僕はコンラート役の関(俊彦)さんとずっと一緒でした。

島﨑 2人っきりで収録したんでしょ?最初から最後まで。良い経験になったね。

梶原 しかも、ほぼ1対1みたいなシーンだったんですよ。助けを求める人も他にいないし、完全にアスタの状況と自分を重ねながら頑張りました。

――敵役として関さんのお名前を聞いた時はどう思われましたか?

梶原 それまで一度もお会いしたことがなくて、作品の印象しかなかったんですけど、これは魔法帝にピッタリだなって思いました。今回は対話が重要というか、言葉と言葉でぶつかり合う感じだったので、関さんの言葉をちゃんと聞いて、しっかり受けてまた返してっていう、その場での掛け合いだからこそ生み出されるスピード感や臨場感を、できるだけ出そうと思って頑張っていましたね。