「役」と「自分」、それぞれと向き合いながら苦悩した日々
――お互いの印象について伺います。最初にお会いした頃から、ここが変わった、こんなところが成長した、と思う部分はありますか?
梶原 僕にとって信長さんは、常に変わらず追いかけ続けている存在なので、いつも刺激をもらっている感じですね。どんなに他の作品で経験を積んでも、信長さんと会うと初心を思い出すというか。しばらく現場で会えなくても、次に会った時は成長した姿を見せたいので、会うたびに「よし頑張ろう」って気持ちになれる人です。
島﨑 がっくん(梶原)とは定期的に会ってるけど、やっぱりブラッククローバーの現場が多いね。それでいうと、がっくんは今回、実はすごく苦戦したんじゃないかと思っていて。それは関さんが相手っていうのもあるけど、本当はがっくんって、アスタの思考とはちょっと遠いとこにある人なんじゃないかなって思うんだよ。
梶原 うん、うん。
島﨑 自分でもあんまり似てるって思わないでしょ?
梶原 はい、そうですね。
島﨑 初期の頃って、まだそこまで役者としての自我みたいなものが育っていなかったから、ある意味アスタっていう存在もニュートラルに演じることができてたと思うんだ。でも、だんだん役者としての自我が目覚めていって、視野も広がって……自分の中のいろんなものが育っていくにつれて、アスタと自分のズレみたいなものを少しずつ認識し始めたと思うんだよ。だから、この作品を通して自分と向き合いながら、声優としてどうしていけばいいのか必死に模索していたんじゃないのかなって。僕の勝手な考えだけど。
梶原 いや、それはめちゃくちゃありました。今回あらためてアスタを演じてみて、自分がこれまでやってきたことや今のやり方だと合わないぞって思うところがいっぱいあって……。そこをどうしたらいいんだろうってすごく考えましたね。
島﨑 でも、そんなふうに自分に負荷がかかる役って、頑張って向き合うことでめちゃくちゃ成長できるんだよね。たとえば20歳の時から40歳の役ずっと任されていた人って、実際に40歳になった時に無敵になったりするんですよ。何歳だろうが何でもござれ、みたいな。若いけど説得力バンバン出せます、みたいな。そういう話を聞いたことがあるんですけど、がっくんにとってこの作品は良い負荷というか、良いトレーニングになる作品だったんじゃないかな。
梶原 本当、そうですね。
島﨑 実際、「コンラートという強大な相手に、どうやってアスタを演じてやろう?」って気概をすごく感じた。「アスタの考えていることなんて、わかんないからいいや」って割り切るんじゃなくて、ちゃんと向き合って苦悩し続けたからこそ、すごく成長できているんじゃないかな。正直、テレビアニメの放送の頃にも気持ち良くアスタを演じていた時期と悩んでいた時期があったと思うけど、いろんな経験を積み重ねてきたがっくんが、今回あらためてアスタと向き合っていたというのは、素晴らしいことだと思いました。
梶原 本当にその通りだったなって思います。
島﨑 だって他の作品とか観ても、アスタが1番悩んでるなと思うもん。
梶原 マジでそうです。
島﨑 でしょ(笑)。