『育休刑事』の撮影が終わって、赤ちゃんとお別れするのが本当に寂しかった
――6月20日に主演を務めた『育休刑事』が最終回を迎えます。そもそもオファーがあったときは、どんなお気持ちでしたか。
金子大地(以下、金子) まず原作を読んで、育児の厳しさ、子育てしている人の大変さがリアルに、しっかりと描かれていたので、やりがいがある作品だなと思いました。赤ちゃんのかわいさや尊さ、人間は一人では生きていけなくて、誰かの支えがあって大きくなっていくというテーマなどを、しっかり表現できたらすごく良いドラマになるんじゃないかなと思って引き受けさせていただきました。
――赤ちゃんと接する不安はなかったですか。
金子 めちゃくちゃ不安でした。共演する赤ちゃんが生後5、6か月でクランクインしたんですけど、もちろん僕は育児経験がないので、どうやって抱けばいいのか、抱くことすら緊張するような状態でした。だからインする前に赤ちゃんの抱き方、おむつの替え方、ミルクのあげかたなどを学びました。ただ僕の演じる秋月春風もパパとして成長していくから、そこまで準備しなくてもいいかなという気持もあって。作品を通して、赤ちゃんと共にパパとしても成長していけたらいいなというのがあったので、フラットに臨めました。
――1話から赤ちゃんを抱いた状態で、いろんな事件に巻き込まれるなど、斬新な展開でした。
金子 ここまで赤ちゃんをメインに撮っている作品ってなかなかないですよね。そこに、こだわって最後までやったことが、このドラマの強みだなと思っていて。やっぱり赤ちゃんが泣いて撮影が止まることもあって、大半が赤ちゃん合わせだったんですけど、それを最後の最後まで突き通したからこそ、あれだけかわいい赤ちゃんの絵が、ちゃんと切り取られていて、赤ちゃんの成長も記録として残っている。本当にやって良かったなと思いましたし、赤ちゃんに感謝です。
――ドラマでは絶妙なタイミングで赤ちゃんが泣いたり、笑ったりしますが、現場は大変だったと思います。
金子 赤ちゃんは何をやってもそれでいいですし、全てが正解なんです。台本上、「ここで泣く」みたいなのがあっても、基本そんなのはどうなるか分からないですからね。でも最初は泣きましたけど、後半はほぼ一発OKみたいな感じになって、むしろ僕の方がNGを出していました(笑)。本当に赤ちゃんには助けられっぱなしでしたね。
――どのように赤ちゃんの表情を引き出していたんですか。
金子 「そろそろおなが空く頃だから、泣いたりぐずったりするだろう」と計算して、そういうシーンを先に撮っておくんです。笑ってご機嫌のときはご飯タイムにしようとか、極力、赤ちゃんに合わせてストレスがないように撮影を行っていました。最初は時間もかかったんですけど、だんだんスタッフさんも赤ちゃんのタイミングを掴みだしたので、中盤からは撮影もスムーズでした。
――姉の涼子を演じた前田敦子さんは、お子さんがいるだけあって、赤ちゃんの扱い方が上手でした。
金子 素晴らしいですよね。演技面でもすごく助けられました。本来は主役の僕が支えなきゃいけないのに、いろいろ支えてもらって、本当のお姉ちゃんができたような気持になって、すごく楽しかったです。
――1話目で前田敦子さんが古畑任三郎のオマージュ的なお芝居を披露しますが、台本に書いてあったんですか?
金子 あれは前田さんのアイデアです。やりたい放題やってくれたおかげで、もともと前田さんが持ってるかわいさ、フラットさ、ポップさみたいなものがいいスパイスになって、作品に鮮やかな色を付けてくれました。
――春風の上司・石蕗を演じた鶴見辰吾さんもいい味を出しています。
金子 鶴見さんとはずっと共演したかったんですけど、その夢が叶ってうれしかったですね。とにかく優しくて、素敵な方で、あんな上司だったら最高だなと思いました。鶴見さんも鶴見さんですごく楽しそうに演じてらっしゃるのが印象的でした。
――春風の妻で捜査一課長の沙樹を演じた北乃きいさんの印象はいかがでしたか?
金子 きいさんも現場を明るくしてくださる方で、明るい家庭にはもってこいの奥さんを体現してくださったなと思いますし、それでいて課長なんだっていう二面性もあって。警察官としての顔と、母としての顔を、しっかりと演じてくださって頼りになりました。
――春風を演じる上で意識したことはなんでしょうか。
金子 周りのキャラが濃いので、できるだけ自分は抑えて、常にフラットでいようと思いました。基本受けの芝居ですけど、みなさん自由に楽しそうに演じてくれて、僕は受けとしてやりやすかったですね。
――ここまで受けに徹する芝居の経験はありましたかあ?
金子 ここまでフラットな役はなかったですね。だから本当に難しかったです。
――モノローグでツッコミするシーンも多いので、そこも大変だったかと思います。
金子 表情で見せなきゃいけなかったので大変でした。ただ、心の声が春風の本心だったり、春風の人間的な部分を垣間見せる見せ場だったりするので、楽しく演じていました。
――普段の金子さんはツッコミ気質ですか?
金子 いやあ、逆にツッコまれ気質です(笑)。だから、どういう間で言ったらいいんだろうかと悩みました。編集で上手くツッコミを入れているようにしていただきました。
――撮影が終わって、赤ちゃんとお別れする寂しさもあったのではないでしょうか。
金子 めちゃめちゃあります。今年2月から5月まで、歯が生えてないところから、歯が生えるまで一緒にいたので、本当に寂しくて……ずっと一緒にいたかったです。