若い役者のリアルを生々しく切り取った映画『モダンかアナーキー』

――7月1日より主演された映画『モダンかアナーキー』が公開されます。コロナ禍前の2019年夏に撮影を終えてから3年経って、ようやく公開にこぎつけたそうですが、どういう経緯で参加されたのでしょうか。

金子 役者友達から「知り合いの監督が映画を撮るから、ぜひ大地にも出てほしい。監督に一回会ってくれないか」と言われて、杉本大地監督と会ったんです。そのときに、ものすごい熱意を感じましたし、人としても素敵な監督だなと思いました。完全に自主制作なんですけど、若者が集まって、若者だけで映画を撮るという機会があまりなかったので、そのエネルギーと勢いでやったら面白いものになるんじゃないかと思って引き受けました。

――これまで自主映画に出演した経験はあるんですか。

金子 何度かあるんですけど、ここまで小規模で、若者だけでというのはないです。監督がカメラを回して、全ての撮影をしていますからね。

――オファーがあったときに脚本は完成していたんですか。

金子 プロットはあったんですけど、誰がその役をやるかは決まってなかったので、僕も最初は違う役でした。主役も誰になるか分からない。まあ群像劇なので、みんなが主役なんですけど、ギリギリまで配役が決まらなくて。若者同士、みんな絶対に負けたくない!みたいな気持ちがあったと思うので、それも新鮮で楽しかったです。

――セリフを明瞭にではなくボソボソと話すのがリアルで、アドリブ的な要素もあるのかなと感じました。

金子 「これってドキュメンタリー?」っていうぐらい温度の低い芝居でしたね。監督が求めているお芝居があって、そのために独特な演出をされていて、それにみんなが合わせていくというか。一応、脚本通りにやってますけど、役者から出てきたものを切り取る人で、アドリブに見えるような撮り方でした。

――金子さんの演じるコウは、どこか捉えどころのないキャラクターでした。

金子 バスケ部の中でスタメンじゃないシックスマンで悶々としてるというか。親友が死んで、その死を目撃したのではないかと匂わせるようなところもあって。何かを抱えていて、思春期ならではの苛立ちみたいなものを表現するのは面白かったです。

――みなさんプロの役者さんですか?

金子 そうですね。ほとんどの役者が当時20代前半。役者経験が浅い人もいれば、長い人もいたんですけど、キャリアに関係なく、「やってやろう!」っていう気持ちが強い人たちが集まったチームだったので、熱量がすごかったです。

――バスケ部の先生の怒り方が生々しかったんですけど、あの人もプロの役者さんですか。

金子 実は衣装さんなんですよ。急遽、やってくれないかと頼まれていて(笑)。あの怒り方ってお芝居じゃできないし、めちゃめちゃ怖いですよね。

――完成した作品を観て、どんな印象を受けましたか。

金子 あのときにしか撮れない自分たちみたいなものが、それぞれあったと思うので、粗削りではありますけど、その瞬間をちゃんと切り取った、リアルで生々しくて尖った作品だなと思いました。僕は大好きですね。個人的には全てを知ろうとしなくてもいい映画なのかなと。それぞれの中で何か感じるものがあったり、いいなと思う瞬間があれば、僕としてはうれしいですし、何かを感じてほしい映画です。