クランクイン前に映画のオリジナルスコアを担当した井手健介のライブに行った
――映画『PLASTIC』はミュージシャン井手健介さんが発表したアルバム『Contact From Exne Kedy And The Poltergeists(エクスネ・ケディと騒がしい幽霊からのコンタクト)』(2020)と、エクスネ・ケディが 74 年に行ったという設定のライヴ盤『Strolling Planet‘74』(2021)からインスパイアを受けた作品で、映画全編にエクスネ・ケディのロックンロール・ナンバーを使用。オリジナルスコアも井手さんが映画用に結成したPLASTIC KEDY BAND が担当しています。初めて『PLASTIC』の脚本を読んだときの印象はいかがでしたか。
藤江琢磨(以下、藤江) このオファーがあって、まず井出さんのアルバムを聴いたんですがドハマリして、毎日ひたすら聴いていました。脚本を読んだときは、冒頭からエクスネ・ケディの曲でスタートするので、わくわくが止まらなかったです。
小川あん(以下、小川) 私は宮崎(大祐)さんの初期作品から気になっていて。宮崎さんのテイストや作家性を楽しみに脚本を読みました。「青春映画を宮崎さんが撮るんだ!」ということに、まず驚きました。読み進めていくと、宮崎さんの作家性が随所に見えるというか、ボーイ・ミーツ・ガールだけに収まらない不穏な空気感、普通の青春映画よりも速いテンポ感が、エクスネ・ケディのサイケな音楽と調和しているなと感じました。
――エクスネ・ケディは70年代のグラムロックを彷彿とさせる音楽性ですが、お二人は70年代の音楽は聴きますか?
藤江 大好きですね。グラムロックは今回の企画をいただいてから意識的に聴き始めたんですけど、もともとデヴィッド・ボウイは大好きでした。
――藤江さんは劇中でギターも演奏していますが、昔からロックが好きだったんですか?
藤江 最初に音楽にハマったのはヒップホップだったんですけど、曲を掘るうちにロックに移行して、一時期は昭和歌謡にも凝っていました。そうやって過去の音楽を辿っていくうちに、海外の音楽も幅広く聴くようになってという流れで、年代問わずいろいろ聴いています。
小川 私は両親が映画好きなので、ポリスとかシンディ・ローパー、デヴィッド・ボウイなど映画の劇中に流れる80年代の音楽を聴いたのをきっかけに、基本的にずっと洋楽が好きで。そこから遡ってトーキング・ヘッズやトム・ウェイツなど70年代から活躍するアーティストも聴くようになって、最近は60年代にデビューして今も現役のヴァン・モリソンをリピートしています。
――小川さんも井出さんの音楽は、この映画をきっかけに聴いたんですか?
小川 私は前から井手さんのファンで、先ほどお話に出たアルバムもリリース直後に速攻チェックして、毎日聴いていたぐらいエクスネ・ケディのアルバムが好きです。コンセプトからしてアイディアに溢れていて、いろんなイメージを飛び越えてくる素晴らしいアルバムだなって思います。
――お二人は今回が初共演だったんですよね。
藤江 共演自体は初めてでしたが、共通の知り合いが結構いるんですよ。
小川 そこまで深くしゃべったことはなかったけど、同じ場所に居合わせたこともあるので、藤江くんの存在は知っていました。今回の出演が決まって、ちょうど井出さんのライブがあったから藤江くんを誘ったんですけど、役作りとはいえ、全く知らない人に「ライブ行きませんか?」って誘いにくいじゃないですか。もともと知り合いだからこそ誘えたというか、藤江くんは、そういうのも受け止めてくれるだろうなと勝手に思っていたので、一緒に行かせていただきました。
藤江 ただライブ当日は直前までプライベートで山梨に行ってたので、僕が行けたのは終盤ギリギリで。そのときに井出さんが「アローン・アゲイン」(※ギルバート・オサリバンの曲)の歌詞を独自に翻訳した歌を歌われていて、素敵だなと感じました。でも、その1曲しかまともに聴けなくて……。
小川 めっちゃ遅れて来たよね(笑)。でも、わざわざ来てくれてうれしかった!
――共演した印象はいかがでしたか。
小川 動物的な方で、何をしていても自分の中に狂いがないし、衝動で動いているから全てが魅力的。一度見つめると、目を離せなくなる存在ですね。
藤江 そんなに褒められると……、僕はどうすればいいのかな(笑)。
小川 いやいや(笑)。褒めるという次元を超えた存在です!
藤江 小川さんは強くて優しい方です。
小川 無理に褒めなくていいから(笑)。
藤江 本当に!撮影中も自分の中に溜められるだけ溜めていくというか、包容力があって、器の大きさを感じました。ただ、たくさん抱え込むから、傍から見ると心配になっちゃうこともありましたけど。
小川 キャパオーバーみたいなことだよね。
藤江 まあ……(笑)。
小川 実際にキャパオーバーになることは、よくあります(笑)。