二人が映画にハマったきっかけは『ヒミズ』
――お二人が学生時代にハマっていたことは何ですか。
藤江 なぜか高校2年生のときに、音楽、映画、洋服、あとBMXと同時にハマったんですよ。
――音楽はヒップホップで目覚めたと仰っていましたよね。
藤江 きっかけはRIP SLYMEで、その後はビースティ・ボーイズにドハマりして、当時はラップもやっていました。
――BMXはどこで練習していたんですか?
藤江 駒沢公園です。今はやってないんですけど、その代わりにスケボーにハマっていて、毎週、駒沢公園に行ってます(笑)。
――映画はどういう作品が好きだったんですか?
藤江 最初は『ヒミズ』を観て衝撃を受けて、園子温監督作品を一気に観て、それから映画にハマって。哲学も好きだったのでフランス映画も観るようになって、特にレオス・カラックスが好きでした。
小川 偶然なんですけど、私も15歳のときに『ヒミズ』を観て邦画に興味を持って、海外の作品を見始めたときは、レオス・カラックスも大好きでした。他にハマっていたのはサッカーと音楽です。
――サッカーは観戦するのが好きだったんですか?
小川 両方です。小学生の頃からサッカーをやっていて、今もフットサルをやっていますし、観るのだとプレミアリーグやブンデスリーガなど海外サッカーが好きです。
――サッカーを始めたきっかけは?
小川 両親には女の子らしく育ってほしいからとバレエやピアノなどの習い事を勧められたんですが、私は小さい頃から反抗心が強かったので、柔道をやったり、泥だらけになって木登りをしたりが好きだったんです。その流れでサッカーを始めました。
――映画は他にどんな作品を観たんですか?
小川 『ヒミズ』をきっかけに相米慎二さん、市川準さん、そこから遡って成瀬巳喜男などにのめりこんで、次に洋画に行って、アッバス・キアロスタミ、ルキノ・ヴィスコンティなど、いろんな国の作品を観るようになりました。今は日本未公開の映画を発掘して紹介したり、映画評等を執筆するお仕事もしているので、そういう作品を観ることが多いです。最近だとタジキスタンのバフティヤル・フドイナザーロフ監督の特集上映が面白かったです。
――最後に改めて『PLASTIC』の見どころをお聞かせください。
藤江 先ほどジュンは理想の現実の狭間にいるというお話をしましたが、人生の選択において、それが運命なのか、自分の選択だったのか、どちらを選ぶのかは人それぞれで、そんな狭間の葛藤を一つの視点として観るのも面白いかなと思います。
小川 『PLASTIC』は音楽が重要なポイントで、音楽が映画のリズムも作り出している部分が大きいですけど、テンポ良くわくわくしながら観ていると思いきや、いつの間にか宮崎さんの演出と脚本によって映画的な方向へと導かれていく。そういう感覚を楽しんでいただきたいです。
Information
『PLASTIC』
ヒューマントラストシネマ渋⾕ほか、絶賛公開中!
⼩川あん 藤江琢磨
中原ナナ 辻野 花 ・ 佃典彦
尾野真千⼦ とよた真帆 鈴⽊慶⼀ ⼩泉今⽇⼦
監督・脚本:宮崎⼤祐
製作:名古屋学芸⼤学
プロデューサー:仙頭武則、樋⼝泰⼈ ⾳楽:PLASTIC KEDY BAND
撮影:中島美緒 照明:加藤⼤輝 ⾳響:⻩永昌 美術:林チナ 編集:平⽥⻯⾺
配給:boid、コピアポア・フィルム
©2023 Nagoya University of Arts and Sciences
2018年の夏の終わり。東京から名古屋に引っ越してきたジュン(藤江琢磨)は、ミュージシャンになることを夢見ていた。ギターを抱えて街に飛び出したジュンは、憧れている幻のミュージシャン、エクスネ・ケディの曲を弾き始める。ちょうどその頃、地元の高校生、イブキ(⼩川あん)は大好きなエクスネ・ケディの曲をイヤフォンで聴きながら自転車をこいでいた。そこに聞こえてきた、もうひとつのエクスネ・ケディ。目の前にギターを弾いてシャウトするジュンがいた。運命的な出会いをした2人はエクスネ・ケディの話で意気投合。気がつけば喫茶店で何時間も話し込んでいた。イブキの高校に転校して来たジュンは、イブキが所属する天文部の部室に使われないアンプやスピーカーが放置してあることを発見。早速ギターを弾き始める。最初は迷惑がっていたイブキの友達も、初めてエクスネ・ケディのレコードを聴いて夢中になった。そんな日々のなかでイブキとジュンは惹かれ合うようになり、ある夜、2人は初めてキスをした
小川あん
1998年、東京都出身。2012年、スカウトをきっかけに芸能活動を始め、2014年内藤瑛亮監督『パズル』で映画初出演。以来、映画・ドラマ・CMと幅広く活躍する。主な出演作に濱口竜介監督『天国はまだ遠い』(16)、坂下裕一郎監督『ピンカートンに会いにいく』(18)など。2019年に柴田啓佑監督『あいが、そいで、こい』で主演を務めた後、学業への専念のため芸能活動を休止し、2021年に俳優として活動を再開。中村祐太郎監督『スウィート・ビター・キャンディ』(21)、太田達成監督『石がある』(22)と立て続けに主演作が公開となり、今後も公開待機作を多数控えている。近年では執筆活動も精力的に行なっており、雑誌「DVD&動画配信でーた」の連載、週刊文春CINEMA!、劇場パンフレットへの寄稿なども手掛けている。
PHOTOGRAPHER:YUTA KONO,INTERVIEWER:TAKAHIRO IGUCHI