永江二朗監督の演出にホラー愛を感じた

――ホラー映画『リゾートバイト』で主人公の女子大生・内田桜を演じていますが、オファーがあったときのお気持ちはいかがでしたか。

伊原六花(以下、伊原) ついに来たなという感じでした。というのも、マネージャーさんに「ホラーは苦手です」と言っていたんです(笑)。ホラー映画を観たり、怖い本を読んだりするのは好きなんですが、リアルな心霊映像とか、お化け屋敷が苦手で。撮影とはいえ、何が起きるか分からないですよね。ただホラー映画をどう撮っているんだろうという興味はありました。

――初めて脚本を読んだ印象はいかがでしたか。

伊原 後半に向けて激しく展開が変わっていくストーリーだったので、やりがいがありそうだなと思って、すごく撮影が楽しみになる脚本でした。

――事前に永江二朗監督の過去作は観ましたか?

伊原 『真・鮫島事件』(20)と『きさらぎ駅』(22)を観させてもらいました。『真・鮫島事件』は一人で観るのが怖くて、お仕事の帰りにマネージャーさんと一緒に新幹線で観たんですが、それでも怖くて……。『きさらぎ駅』は怖さもありつつ、予想外の展開が面白かったです。

――永江監督の演出はいかがでしたか。

伊原 端々でホラー愛を感じました。たとえば後ろに気配を感じたとか、肩をポンと叩かれたときに、振り向く動作を一回やってみた後、「それよりも0.数秒速く」「もうちょっと遅く」と、永江監督の中で怖い間があるようで。それは演じているときの感覚と、実際に映った映像では全然違うので、監督を全信頼して演じさせてもらいました。

――秒単位でこだわるんですね。

伊原 寝ているときに、ある気配に気づいて起きるシーンがあるんですが、それもガバッと起きるのではなく、一度目を開けて、起き上がって2秒ぐらい待ってから、振り向いてください、みたいな指導があり、そのほうが観ている側もドキドキすると仰っていました。こういう撮り方がホラー的に怖くなるから、ここをこうして、後であの音を入れてみたいな明確なビジョンを持っていらっしゃるので、その判断力も早くて、すごくやりやすかったです。上手く演じられたときは、永江監督が「これはいいぞ」と仰ってくれるので、その言葉にパワーをもらいながら楽しく撮影できました。

――桜は今年、大学へ入学した女子大生ですが、引っ込み思案で学園生活に馴染めずにいるというキャラクターです。役作りはどんなことを意識しましたか。

伊原 ホラーですが、コメディ要素もあるので、どこまでエンターテイメントにするのかが分からなかったのですが、事前に永江監督とお話させてもらったときに、「いたって真面目で大丈夫です。コメディも面白くしてやろうとか、大げさにやろうというのではなくて、芝居に関してはド真面目にやっていただいたほうが怖いので」と言われました。

――ご自身と桜に共通する部分はありましたか。

伊原 私自身は「明るいよね」とか、「よく笑ってるよね」と言ってもらえることが多いので、イメージと違う役柄ではありますが、個人的にはそんなに遠くないなと思います。どちらかというと受け身で、誰かと話しているときも自分からどんどんしゃべるのではなく、じっくり考える感じが桜に似ている面があって、そこに合わせていけたので、無理せずに演じることができました。気弱ではあるんですけど、幼馴染のために怖いところに飛び込んでいくシーンがあって、そういうことができる強さにも共感しました。ネタバレになるので詳しくはお話できませんが、後半にいくに従って、いろんなお芝居にチャレンジしているので、そこにも注目してほしいです。