登場人物のエゴイスティックな部分に今の日本に通じるものを感じた

――『星の降る時』の出演が決まったときのお気持ちからお聞かせください

山崎大輝(以下、山崎) 2023年にイギリスで上演されて高い評価を受けて、初めて日本で上演される作品に素敵なキャストの皆さんと一緒に携われることは光栄であり、貴重な機会だと感じました。再び演出の栗山民也さんと作品を作らせていただくことができるのもうれしい反面、少し怖さも感じています。

――「怖さ」と言うと?

山崎 脚本を読んだときに、登場人物が自由に動き出すのが伝わってきて、理解したような気になったのですが、栗山さんの演出は予想外の方向に行くことが多々あるので、分かったつもりでいるのは怖いというか、恥ずかしいというか(笑)。変に作らずに、自分をさらけ出して楽しんでいこうと思っています。また、共演者がの皆さんが実力派な方々ばかりなので、そういった意味でも怖さを感じています。

――栗山さんの演出についての印象はいかがですか?

山崎 2021年と2023年に『スリル・ミー』というミュージカルでご一緒したんですが、栗山さんの演出は自分が考えていなかったような部分に自然とフォーカスが当たるようにしてくださるんですよね。ディスカッションさせていただくこともありますし、僕たちから自然とにじみ出るものを栗山さんが活かしてくれることもあるのですが、自分では意識していないのに、「そういう見え方もできるんだ」という新しい気づきをたくさん与えてくれるんです。

――『スリル・ミー』のときに印象に残っている栗山さんの言葉はありますか。

山崎 二人芝居で100分間、他のキャストは介入しない作品だったのですが、「ショーケースの中で二人だけの関係性でいいんだ」と仰っていて。要は観客のことは気にしないで相手の役者さんと向き合えと。例えば、自分を良く見せたい人がいるとします。人前に立ったり、カメラの前に立ったりすると、無意識のうちに斜に構えてしまい、自分の内側をさらけ出せず、取り繕ってしまうんですよね。そうならないように栗山さんは、「二人の中で分かればそれでいい」と仰ってくれたんです。僕は栗山さんと出会うまでは、無意識のうちに表現することを抑制していたんだなと気づかされる瞬間でしたし、それと同時に俳優という仕事の面白さに改めて気づかせてもらえました。

――『スリル・ミー』の経験は山崎さんにとって大きなものだったんですね。

山崎 当時の自分にとって、あのような舞台に立たせていただけるのはうれしいことでしたが、身の丈に合っていないのではという不安もありました。そんな中で公演をやりきって、大きな糧になりました。