原作の中で生きている中見丸太(なかみ・がんた)を無下にしたくなかった
――『君は放課後インソムニア』の原作は読まれましたか?
奥平大兼(以下、奥平) 今回のお話をいただいてから読ませていただきました。今まで読んできた青春漫画に比べると、時の流れがゆっくりと感じられて、自分の過ごす日常の時間と並行しているような感覚がありました。一つひとつの描写をじっくりと感じることができましたし、作品の空気感がすごく伝わってきて面白かったです。
――漫画が原作の場合、役作りに影響はありますか。
奥平 今回、僕の演じた丸太は原作の中で生きています。その丸太を無下にしたくなかったので、自分なりに解釈したつもりです。ただお芝居をするのは生身の人間なので、自然と僕の感じ方になりますし、そこは自分の感覚に忠実にいようと思いました。一緒にお芝居する方々も生きている人たちなので何が起きるか分かりませんし、丸太の気持ちを大切にしつつ、その上に自分の気持ちも乗せて演じようと意識しました。
――ちょうどアニメも放映中ですが、人気作品の実写化というプレッシャーはなかったですか。
奥平 どうしても実写映画って、原作とのギャップは付き物ですよね。ただ原作のどこに重きを置くかは人によって違うでしょうし、それぞれに意見があると思います。今回、七尾市の方々がロケーションに協力してくださって、そこの再現度は高いと思います。ただ原作とは少し違ったストーリー部分もありますし、違うリアクションもあったかもしれないですけど、生身の人間が生きているからこその反応というか、その瞬間で生きてる人たちの感覚で物語が進んでいくと、こうなるんだなということに対して、僕たちは嘘をつきたくなかったですし、それが実写化作品のいいところでもあると思います。
――丸太は不眠症で、それを家族にも友達にも打ち明けられず、どこにも居場所がない日々を送っていましたが、共感する部分はありましたか?
奥平 最初は丸太の気持ちが全然分からなかったです。僕は不眠症ではないですし、理解できるところが少なかったんです。でも丸太を演じるには、彼を理解する必要もあるなと思いました。ただ、簡単に理解したつもりになるのは好きじゃないので、ちゃんと丸太の考え方を理解して、しっかり自分なりのアプローチを考えてやりました。
――事前に池田千尋監督から、こういう風に丸太を演じてほしいみたいなリクエストはあったのでしょうか。
奥平 ご自身で脚本も書いているので(脚本は、髙橋泉さんと池田監督のふたりが担当)、監督の中でこういうふうにしたいというイメージはあったと思うんですけど、とりあえずやってみて、やりながら考えようという現場だったんですよね。やってみないとどうなるか分からないから、とりあえずやろうぜみたいな。段取りをやってみて、意外とこうだったから、もうちょっと変えようかという流れから、変わった部分もあります。そういう撮り方がベースにあったので、もちろん台本で決まっていることはあるんですけど、僕や森七菜さんがやったことに沿って、他のキャストさんやスタッフの方々も柔軟に対応してくれて、だからこそ登場人物たちが生きているなと感じました。